2年前、シャボンディ諸島で壊滅的な打撃を受け、崩壊したはずの麦わら海賊団の完全復活のニュースが世界を駆け巡ったころ、 彼らは、新世界への入り口・魚人島を出港して間もない海域にいた。 「ゴムゴムのォ――！！」 入口とはいえ、新世界に足を踏み入れた海賊。 生半可な実力で、ここまでに至ったわけではない。 そんな海賊の一団を相手に、絶賛戦闘中。 サンジが叫んだ。 「気をつけろ！乗り込んで来るぞ！！」 「させるかァ！！」 ウソップが、ポップグリーンで巨大な網を発射する。 だが、その合間を縫った海賊が数人、サニー号の船首甲板に飛び込んできた。 明らかに頭目風な男が、サンジの目の前に降り立つ。 手に、こちらを向いた銃。 「！！」 「サンジくん！！」 ナミの叫びに、ゾロが目だけでサンジの方を見た。その瞬間、銃声がした。 「サンジ―――！！」 チョッパーが悲鳴を上げた。だが 「当たってねェよ！！」 弾かれた金の髪が、陽に光って舞い踊っている。 ゾロが息をついた時、ニヤリと笑った頭目が 「…7700万ベリー�犢�足�瓩世福�」 「！！」 「もらった！せいぜい足掻け！！」 叫んだ瞬間、サンジの肩を大きく叩いた。 「っ…！？」 「！？」 目の前の敵を斬り払い、ゾロが大きく跳躍した。 今、男がサンジに何かをした嫌な気配があった。 明らかな『覇気』の揺らぎにルフィも 「サンジ！？」 「コック！！」 次に、頭目は駆け込むルフィにも手を伸ばしかけていた (…だめだ…！させるな！) 直感だった。 ゾロは、腰を落とし 「黒縄……大竜巻！！」 炸裂した瞬間、サニー号が大きく傾いだ。 「ゾロォ！！このスーパーバカ野郎！！帆を張った状態でその技出すんじゃねェェェ！！」 フランキーの叫びが海原にこだまする。 同時に、敵の船は技の威力にマストを折られ、一部を薙ぎ払われた。 敵の海賊はほとんど海原に吹っ飛ばされ、残ったわずかな人数も、 足元の揺れが収まるや、仲間などお構いなしに我先にと逃げ出した。 なのに、敵の頭目は、床にうずくまったサンジを見下ろし、不敵に笑った。 「てめェェェェェ！！」 ゾロが跳ねた。 「何をしやがった――――！？」 サンジの様子がおかしい。 何より…。 「ウソップ！網だ！！あの野郎捕まえろ！！」 「え！？えええっ！？えええええ！？な、何！？どうした！？」 いきなりの事に、ウソップは狼狽えたがすぐにカブトを構えた、しかし、頭目はそのまま海に身を躍らせ、 すぐに波間に落ちた頭目に仲間が手を貸し、進む船の波涛に紛れて見えなくなった。 「ナミ！！あの船を追え！！」 「何…なんだっていうのよ！？逃げたんだから追わなくたって！！」 「いいから追え！！」 「…もう！！何よ偉そうに！」 だが、ルフィも 「追え！ナミ！！ゾロがあれだけ言ってんだ！追ってくれ！！」 「…わかったわ…！チョッパー！ブルック！！」 「了解！」 「ヨホホホホ！承知しましたァ！！」 と 「サンジ！サンジ！しっかりして！」 ロビンの声。 振り返ると、ロビンがサンジの背に手を添えて揺さぶっていた。 弾かれるように、ルフィが駆け寄る。 「サンジ！！」 「………。」 「サンジくん！？」 「サンジ――！！」 ナミも、ルフィも。 ルフィがサンジの傍らに膝をついた。反対側にゾロ。 互いに、顔を見合わせる。ゾロが言う。 「…気が付いたか？」 ルフィがうなずいた。 「…ああ…。」 ウソップが息を呑み 「な、なんだよ！？サンジ！？どうしたんだサンジ！？」 ルフィが言う。 「…覇気が消えた…。いきなり消えた。」 「え！？」 ナミが目を見開いた。 「…コック…意識はあるか？」 「………。」 サンジは、うずくまり背中を向けたまま、何も答えない。 「コック…？」 「………。」 「おい、サンジ！」 業を煮やし、ルフィはサンジの肩を掴んで引き上げ、自分に振り向かせた。 「！！？」 瞬間 サウザンド・サニー号船首甲板は凍りついた。 その時 「ナミさぁ〜〜〜〜〜ん！舵が思うように利きませ〜〜〜ん！！ 指示をくださぁぁ〜〜〜〜い！…って、オヤ？みなさんどうしました？？」 ブルックの声で、全員が我に返る。 「……！！」 「…サンジ…くん…！？」 「うわああああああああ！！！どゆこと！？どゆこと！？」 「……スーパーだな……。」 「…あの男…能力者だったのね…でもなんの…？」 「………。」 意外にも、ルフィがノーコメント。 しかし 「…ぶふっ！」 思わず吹き出したルフィに対し、 「…笑うなァ！このクソゴムァァァァ！！」 叫んだサンジは、自分の声に驚き思わず口を閉じた。 そして、サンジは目の前のゾロを払いのけ、そのまま風呂場へ駆け込んだ。 見送った仲間の耳に、サンジの悲鳴が轟いたのはわずか5秒後。 「………。」 「…ゾロ？大丈夫？」 ロビンが尋ねた。 ゾロは呆然と、サンジを見送ったまま微動だにしない。 「………。」 「…ゾロ？」 ナミ。 「…ゾロー…？」 ウソップ。 「ゾロさーん？」 ブルック。 「おい、ゾロ。」 フランキー。 ルフィが、息をつき 「気絶してんのか？」 「しとらんわ！！」 叫ぶや、なぜかゾロも風呂場へ飛んで行った。 「あ！おい、待てよゾロ！！」 ルフィもすっ飛んで行った。 「…止めねェのか？」 見送りフランキーが言った。 「止められるか？アレ。」 「止めても止まらないわね。」 ウソップとロビンが言うと、ナミもうなずく。 と 「来るんじゃねェ！ゴムーっ！！」 サンジの悲鳴が轟いた。 「なんだよ！こんなにおれが！船長として心配してんのに！！」 「心配！？ウソつけ！心配してますって顔か！それが！？ 口角上がってんぞ！！目が輝いてっぞ！！」 「心配してるって！！」 「………。」 「てめェのその憐みの目はなんだ！？マリモァ！！」 ゾロは、しばらく呆然としていたが、ポリ、と頭をひとつ掻き 「…ああ、やっぱてめェか。」 「誰だと思ってんだ！？」 「…そりゃ思うだろ？そんなナリになっちまやよ。」 「…う…！」 沈黙。 やがて、サンジは顔を覆い、風呂場のタイルの上にへなへなとへたり込んだ。 「…どうすりゃいいんだ…。」 「…さぁな。」 ピチョン 水道から水滴が落ちた。 のろのろとサンジは立ち上がり、もう一度、鏡の中の自分を見た。 ゾロが言う。 「…覇気も消える訳だな。」 「…図鑑で読んだことがある…。」 サンジが呟く様に言った。 「…悪魔の実…『ギャクギャクの実』の能力…。」 「『ギャグギャグ』？」 ルフィのボケに 「『ギャクギャク』！！触ったもの何でも真逆にしちまう能力だ！！」 「あいつがそうだったってのか。」 ゾロが言った。 「なるほど。」 「………。」 ルフィがゾロに 「…あいつが能力でサンジに何かしたって、よく気が付いたな、ゾロ。」 「…いやな気配があった。…まったく、てめェも覇気使いなら、敵の邪気ぐらい感じ取れ。自業自得だ。」 「――――っ！！」 反射的に、サンジの足が出た。 しかし、ゾロは避けもせず、その攻撃を腕一本、上げただけで止めた。 「！！」 「……真逆か。確かに、何の威力もキレもねェ。」 「…う…。」 「自覚しろ、今のてめェは、なんの力もねェただの…。」 「……言う…な…っ！」 ゾロは、フンと鼻を鳴らし 「ただの弱ェ�狃��瓩澄�」 鏡に映った自分を、サンジはもう一度振り返る。 あの時、あの頭目に肩を叩かれた。 そして 「………。」 「あの野郎、お前にも手ェ伸ばしかけてたぞ、ルフィ。」 「…ああ…気が付いてた…。けど、ゾロが吹っ飛ばしてくれたからな。サンキュー。」 「おう。……最小限の被害で済んでよかったな。」 最小限て 憎らしげな声で言いながら、ゾロは、ぶっきらぼうに風呂場を出て行った。 ルフィは、冷たい床に座り込んだままのサンジの前に膝を抱えてしゃがみこみ 「…大丈夫だ！必ず戻れる！戻してやる！安心しろ、サンジ！」 「………。」 おそるおそる サンジは自分の胸に触れた。 むにっ 「………。」 これが 自分の胸の感触とは思えない。 そして、男の一番大事な部分が、きれいさっぱり無くなってしまっている。 背も低くなり、腕も指も細い。 声も、低くはあるが明らかな女声。自慢の髭も、全部消えていた。 ルフィはにっこりと笑い 「いいじゃねーか！すっげぇ可愛いぞ！！サンジ！！」 改めて、鏡に映る自分の顔を見る。 元々、自分でも不本意だが、女顔だと思ってはいた。 顎も首筋もすっきりして、肩もなだらかで細い。 手首など、強く握ったら折れてしまいそうだ。 胸はナミやロビンのボリュームに及びもしないが、腰は負けず劣らずくびれて細い。 麦わら海賊団コック、懸賞金7700万ベリー、�犢�足のサンジ�瓠� は、 一味再集結後、意気揚々と新世界に乗り込んで早々、触れたものをなんでも真逆に変えてしまう悪魔の実、 『ギャクギャクの実』の能力者によって『女性』にされてしまった……。 麦わらの一味の欠点は、目の前に起きている大概の事象を、「だいじょーぶ！なんとかなる！」で片づけてしまう事だ。 だがそれは、「ちっさい事は気にしない♪」という長所でもある。 しかし、今起きているこの事象は決して、「なんとかなる」ものでも「ちっさい事」でもない。 当の本人にしてみれば、己の存在意義や価値に関わる問題だ。 だというのに、こういう状況を、必ず面白がらずにはいられない。 口では「困ったわね」と言って見せながら、「ま、なっちゃったものは、しゃーない」 「そのうち何とかなるだろ」という、極めて前向き、かつ現実逃避な結論に至った。 そ〜…っと。 サンジは、ダイニングラウンジのドアを開けた。 誰もいない。 ホッと息をつき、ドアを閉め、ダイニングの椅子に腰かけた。 「……はぁあ……。」 顔を覆い、深い息をつく。 顔を覆った手を、思わず、しげしげと眺めた。 「……細っせェ指……。」 左手の小指にだけ、ついさっきまでナミに遊ばれたネイルアート。 コックだから、全部は勘弁してくれと懇願した。 「………。」 皆、気にするなと言う。 あの時、ゾロが敵の船を追い、あの能力者を捕まえろと叫んだのは、あの頭目が能力でサンジに何かをしたことと、 それを元に戻すために、その能力が必要であることを瞬時に察したからだった。 あの頭目が、『記録指針(ログポース)』の一番安定した航路を選ぶであろうとナミが推察し、同じ航路を追っている。 だが、ゾロの大技でかなりダメージを与えていた。 もしかしたら、先行しているのはこの船かもしれない。 だがそれなら、先の島で待つだけだとルフィの決断で船を進めている。 おそらくではあるが、あの頭目は己の能力で相手の戦闘能力を奪い、そうしてから攻撃を仕掛け殲滅するのだろう。 大人は子供に 男は女に 強いものを弱く 真っ先に、戦闘能力が高く近距離にいた『黒足』の能力を奪ったのだ。 実際に、あの頭目はルフィにも触れようとしていた。 ゾロが間合いに入ったなら、ゾロも狙われることになっただろう。 被害が最小限で済んでよかったと、ゾロが憎らしげに言った。 確かに いろんな意味でも、おれだけでよかった…。 息をつき、サンジは新しい煙草に火をつけた。 甲板で吸おうとしたら、フランキーに嫌な顔をされた。 女の喫煙を、嫌がるタイプだったかと改めて認識。前から思ってはいたが、オールドタイプな男だ。 夕べは、恐ろしくて風呂に入れなかった。 改めて自分の全身を見たら、そのまま海に飛び込んでしまいたくなると思った。 「………。」 カマバッカに居る頃でさえ、あれだけオカマ達に囲まれ攻められて暮らしながら、 なんとか理性を保ち続けて2年を過ごし、戻ってきたのに。 何で今になって、こんな目に遭わなきゃならねェ…。 その時、ドアが開いた。 ビクン、とサンジの肩が大きく震えた。 「…お、いたか。」 ゾロ 腰の刀を外し、テーブルに立て掛けながら 「小腹が空いた。何かねェか？」 「…パンの耳ならあるぜ。」 「お。」 嫌味で言ったつもりが、ぱぁっとゾロの顔が明るくなった。 「……待ってろ。」 タバコを消して立ち上がり、キッチンに入る。 「………。」 そうだ。パンの耳の菓子、こいつ好きだったよな。 「…ガーリックがいいか？チーズか？」 「甘ェの。」 「…めずらし…。」 「気分だ。」 「じゃ、メープルシュガーで。」 サンジがこんなことになっても、ゾロだけは何も変わらない。 ルフィは面白がっているし、フランキーは意外にもおれをどう扱っていいかわからなくてオロオロしてるし、 ウソップは顔を合わせる度にドギマギしやがるし、ナミさんとロビンちゃんはオモチャにして遊ぶ気満々だし、 ブルックはムカつくくらいにおれをレディ扱いしやがるし。 ああ…チョッパーは全然かわんねェな…まぁ、あいつトナカイだしな…。 「…ほい、お待ちどうさん。」 「おう、待ってました。」 マグカップに入れたパンの耳を、待ちきれないと言った様子で手を伸ばし 「！！」 無意識に、カップごとサンジの手を握って1本を抜き、口に入れた。 ドキン、とサンジの心臓が大きく鳴った。 慌てて、手を引っ込めると同時に 「あぶねェな！落っことすだろうが！」 寸でのところでカップをキャッチし、ゾロが言った。 「！！…っせ！気色の悪いことすっからだ！！」 「…前とそんなに変わんねェだろ。細っせェ手。」 「……っ！」 言いながら、ゾロは2本目を口に入れ、カウンターに腰かけた。 「ここで食うのか？」 「外に持って行ったらルフィに取られる。」 「……はは……。」 ガキみてェ こういう所は、2年前と一緒か。 「おい、飲み物くれ。」 「…お茶でいいか？」 「だな。茶の方がいい。」 「あいよ。」 すぐに、サンジは茶器を揃えて湯呑に茶を注ぐ。 いい香りが漂った。 「ほい。」 「さんきゅ。」 受け取り、一口すすって 「相変わらず美味ェ。」 「…へ？」 「てめェの入れる茶が一番美味ェ。」 「…2年で世辞を覚えたか。」 「2年前からそう思ってた。」 「………。」 沈黙 「…お前さ…。」 「あん？」 「…女相手だとそうなワケ？」 「………。」 再び沈黙。 と 「…戻れねェとか思ってんのか？」 ゾロが言った。 「…思ってねェ…思いたくねェ。」 「………。」 「…もし…。」 「………。」 「…戻れねェってことになったら…おれがここにいる意味が…無ェ様な気がする…。」 「………。」 カウンターを挟んで、向こう側にいるサンジの目をゾロはじっと見た。 いたたまれず、サンジは目を伏せる。 長い睫毛が、濡れているように見えた。 「…おれの2年が…いや…男として生きてきた21年が…全部…無駄になったんだ…。」 「………。」 「…せめて…戦う力だけでも残ってくれてりゃよかったのに…あの野郎…。」 「命のやり取りで、相手の力を削ぐのは定石だ。」 「わかってる…！！」 ポリ と、ゾロがパンの耳をかじる音が響いた。 「…ナミさんやロビンちゃんを守ることも…ルフィと戦う事も…もう…。」 「だったら。」 「！！」 「…もう一度一から、今から強くなりゃあいい。」 「………。」 「その気概がねェなら、次の島で船を降りろ。そんなてめェじゃ、ルフィの足手まといにしかならねェ。」 「……っ！！」 「ナミやロビンだって戦える。てめェにそれができねェとは言わせねェ。」 「………。」 「2年前までのてめェならできただろ？それとも何か？オカマばっかの島で、やっぱり影響されたか？」 「されるか！！おれだって2年…！！どれだけ！！」 「だろうな。でなきゃ、覇気を身に着けられる訳もねェ。」 「………。」 ゾロは呆れたように笑い、パンの耳をかじりながら 「ま。この先どうにもならなかったら、ルフィの嫁にでもなれ。 おれがもらってやってもいい。毎日美味ェ料理が食える。悪くねェな。」 「……ばっ！！」 爆発したようにサンジの顔が赤くなる。 だが、今のゾロの発言は、サンジを侮り、バカにしたのと同じ事だ。 複雑な怒りとストレスが一気に爆発し、思わず 「―――っ！！」 覇気にも似た気。いつものあの本気の蹴りが来たと反射的に思った。 思わず身を翻し、 「―――う！！」 「―――！？」 相手はサンジだ。 いつもの調子で仕掛けてしまった。 「…しまっ…！」 ダイレクトに技をくらい、床に叩きつけられる瞬間 「くっ！！」 わずか1ミリ ゾロの手がサンジの頭を抱え、腕を引き、床に強打するのを防いだ。 「悪ィ…。」 「……う…。」 手加減なく、鳩尾に拳を入れてしまった。 瞬間ためらった分を差し引いても、今のサンジには激しい威力だったろう。 「コック、大丈夫か？」 「…う……ああ……。」 左手で頭を支え、そのまま右手で腰を抱え引き起こす。 その時 「おーい！コーラ冷えてる……。」 ドアが勢い良く開かれた。 「…か…？」 フランキーの目に映ったのは 「………。」 ゾロが サンジを 腕に抱え込み、頭を引き寄せている姿。 それはまさに 「………。」 無言のまま ドアが再び閉じられた。 はっ！と我に返った２人は同時に叫んだ。 「おい！フランキー！！何誤解したんだてめェ！！」 ドアの外から声が返る。 「いや！何も言うな！おれァは今スーパーに、�牴箸傍△辰燭虧爾�、 彼氏とイチャイチャしている光景に出くわした親父�瓩竜な�になってんだ！！」 「何の気分だ！？どこに目ん玉つけてんだ！」 「誰が娘だ！誰が親父だ！？なんだそのホームドラマ！てか、イチャついとらんわァァ！！」 サンジが飛び出していった。 何かを言い合う声がしている。ナミが、面白そうに笑う声。 「………。」 残されたゾロは深く息をつき、湯呑に残った茶を飲み干して、パンの耳を口に咥えた。 そして、 「………。」 咄嗟に抱えたサンジの頭。 指に触れた髪の感触。 「………。」 不意に沸き起こった感情に、ゾロは驚いて、咥えたパン耳を噛み砕き、飲み込んだ。 「………。」 もう一度 あの髪に触れたい NEXT （2012/11/19） (2012ゾロ誕TOPからおいでの方はブラウザを閉じてお戻りください) 僕らの恋のはじめ方‐TOP NOVELS-TOP TOP