「…………と、まァ、そんなワケで。あいつらはめでたく、ラブラブバカップルになれたというコトだ!
ま!これもひとえに、おれ様の尽力のおかげというワケだな!!」
偉大なる航路―グランドライン―を進む、海賊船サウザンド・サニー号。
ウソップは、長い長い熱弁を終えて大きな息をつくと、コップの水を一気に飲み干した。
ずっと聞いていたロビンが、にこやかに微笑みながら拍手を送る。
だが、フランキーとブルックは互いに顔を見合わせ、肩をすくめた。
「まったくよォ。あいつらはもっと、おれ様に感謝して然るべきだよな〜〜?
おれがあんだけ走り回ってやったから、お互いの気持ちを確かめ合えたってのによー。」
その瞬間
短い悲鳴と共に、ウソップが芝生にめり込んだ。
3人が見上げると、そこに、見慣れたコックの長身。
咥え煙草に渦巻き眉毛、ウソップを見下ろす目は氷の様に冷たく青い。
「……あのな、ウソップ。お前が恩を着せるのはゾロだけだ。
おれの方は、てめェに恋の相談を持ちかけた覚えは一切無ェ!!」
「…ダビに゛ば、ぼぢがげでだんだどー?おんだじじゃねーが!」
「うっさい!!ナミさんには見抜かれたんだ!!そんな恥ずかしい事、ナミさんに持ちかけるかァ!!」
と、フランキーが言う。
「で、今のラブラブっぷりに到る訳だな?」
「どこがラブラブだよ!!?ナミさんやロビンちゃん相手ならともかく!!なんであんなアホゾロと!!?」
「ラブラブじゃない?」
「ラブラブですよねぇ?ヨホホ!!」
「ロビンちゃ―――ん!!(泣)」
ブルックを踏み潰して折畳み(!!)ながら、サンジはロビンに情けない声で否定する。
芝生甲板の騒ぎを横目に、ナミは、紅茶のカップを口元に運びながらつぶやいた。
「……まァ、珍しくウソップが嘘を言ってないわ……。」
「ああ、そだな。」
「うん。そうだね。」
ルフィとチョッパーが同意した。
会話が聞こえる位置で、刀の手入れをしていたゾロが、コメカミに青いものを浮かべる。
2本。怒りレベル2
確かに
あの時、ウソップとナミが策を立ててくれなかったら、自分達はそれぞれの想いを押し込めて、
今でも“仲間”としての旅を続けていたかもしれない。
でもまさか
あの時すでに、サンジも自分を好いてくれていたなんて、想像もしていなかった。
お前がメゾネットに登ってきた時、心臓破裂しそうだったんだぞ。
…起きてたのか?てか、まさか、誘ってたのか?ありゃ。
あはは!実はそう!!
……色気足りねェな。
言ってろ!しっかり反応してやがったクセによ!!
う…;;
服はボロボロで
髪、ボサボサで
顔も腫れてて
体中アザだらけで、痛くて
暴れまくったから、お互い汗だくで、汗臭くて
互いに襟首掴んで
互いに引き寄せて
初めて交わしたキスの味は、切った唇に滲んだ血の鉄臭い味。
ロマンチックなんて、蹴り飛ばして刻んでどっかに吹き飛んでった。
ま
こういう始まりも、おれ達らしくていいか。
「ところで、なんだっていきなりそんな話になったんだい?ロビンちゃん?」
サンジが尋ねた。
その声にはっとして、ゾロは柄にもない物思いから現実に帰った。
平常心 平常心
ウソップに世話になったのはホントの事だ。
いつまでもグダグダ恩着せがましくしてくる訳じゃない。
長い航海。
たまに、ヨタ話のネタにされるくらいは仕方がねェ。
ロビンは笑って
「ゾロが大剣豪になったら、伝記を出版したいんですって。」
「はぁあ!!?」
サンジの叫びと同時に、ゾロが思いっきりずっこけた。
弾みで、平常心と秋水が、チョッパーの鼻先に飛んできて突き刺さった。
「あぎゃああああああああ!!?」
「ウソップ!?てめェ、何考えてんだ!?」
「いーじゃねーか!そんくらいのおこぼれに預かったって!!」
「2人の恋物語、小説にして出版したいんですって。」
「ふざけんなァァァ!!!」
「印税で稼いで、エルバフへの旅の資金にすんだ!!文句あっかー!?」
「開き直りやがった、こいつ!!」
「あの島までの、あのおれのオタオタの代価だと思って我慢しろー!!」
「出来るかァ!そんな恥晒し…!!」
と、サンジが言った瞬間。
ゾロのコメカミの青筋の数が増えた。
両方に3本ずつ。
怒りレベル10!!警戒警報発令!!
「恥晒しだと……?」
「あ。ヤべ。」
「あー言っちゃった。」
「言っちゃったわねー。」
「い〜けないんだ、いけないんだ♪サ〜ンジがいけないんだ♪」
「まァ。」
「うわァ、言うか?普通…。」
「好きなくせに。」
「ヨホホv」
次の瞬間
爆発の様な激突音が起こる。
ウソップとフランキーが叫ぶ。
「船を壊すなァァ!!」
愛しい船と別れ、さまざまな困難を越えて、さらに旅は続く。
海賊人生、長いか短いかわからないが
(…そういう相手に出逢えるのは、ホントに幸せだよ…。)
いつか
おれもそんな相手に逢えるかな…。
逢えたらいいな…。
もしかしたら、もう逢ってるのかな?
ま、今はまだいっか。
さて!
未来の大ベストセラーは、どんな書き出しにしようか?
END
BEFORE
14万HITキリバンニアピン、恋川珠珠さまリクで「ゾロの猛烈アタックに全然気付かない天然サンジ」
………………あれ?
きっと今頃、珠珠さん「どこが?」って突っ込んでいらっしゃるのではっ!?
えと、えと;;白状いたしますと、『ゾロの猛烈アタック』が、ワタシの乏しい脳みそで全然思いつかなくて…;;
ぱたの想像する『猛烈アタック』だと、ゾロがとんでもなくおバカになりそうで…
で、そこまでおバカになると、とってもかわいそうなゾロになりそうで…ちょっと怖く…;;
ごめんなさいごめんなさい;;ホントにこんなんでごめんなさい;;
でも、ちょこっとでも楽しんでいただけたら…うれしいな…。
珠珠さまv リクありがとうございました!
遅くなってホントにすみませんでした!
ぱた的固定お初エピソードはありますよv
もっと根暗いっすー;;(おい)
(2010/8/11)
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