BEFORE

11月。 30日が営業最終日。 そして、ゾロの100日通いの最後の日。 その日が近づくのが、怖い気もする。 また、最後の日に何か起きたりしやしないかって、不安になる。 不安? 不安って…? …何が不安だ…?…おれ…。  「………。」 100日目。 …どうなるんだろ? 頬が熱い。  「おい、チビナス。」 ある日の午後、一息ついた頃ジジィに呼ばれ、顔をあげた。 手にした手帳を眺めている。  「なんだ?それ。」  「昨日、アイツが忘れてった。今、思い出した。返しとけ。」  「ゾロか…?って、学生証じゃねェか。しょうがねぇなァ…。………あれ?」 生年月日が書いてある。 19××年11月11日。  「11月11日…今日じゃねェか!?」 ゾロ、今日が誕生日。 その日のゾロも、営業時間ギリギリに店に飛び込んできた。 珍しく、学校の体操着のジャージだ。  「あっはっは!体操着初めて見た!!なんだよ、スゲェ小豆色だな!!」  「笑うな…。しょーげねェんだよ!おれらの学年色なんだからよ!」  「今時珍しいダセェ色だなー、よくお似合いで!」  「うるせェ。…ブレンド。」 黙って、ジジィは今日のブレンドを淹れた。  「本日はキリマンジェロブレンドでございます、お客様。  明日は小豆のコーヒーをご用意いたしますか?」  「………。」  「で?なんで、体育着?」  「マラソン大会だった。」  「おー!そういうのあったなー!で?何着?」  「ぶっちぎり1位。」  「さぁすがぁ〜!エライエライ!」 ちょっと照れくさそうに笑い、ゾロはふいっと目を逸らした。 こういう所がまだお子様。 けど、嬉しいよな? 走れるだけでも…。 ゾロが、鼻をクンと鳴らした。  「お、いい鼻してるな?気がついたか?」  「なんか美味そうな匂いだ。」  「ローストビーフ作った。カボチャのスープと、海老のサラダと…  デザートは甘みを抑えたオレンジ仕立てのショコラムースでいかがでしょう?」  「……なんで?」  「ハッピーバースデイ。」 学生証を見せると、ゾロはバツの悪そうな顔をした。  「はい、いくつになった?」 サンジの問いにゾロは  「19…。」  「おめでとう。」 サンジの言葉に、ゾロは少し眉を寄せた。  「…嬉しくねェ?」  「………。」  「おれの誕生日がくるまで、1コ、年が縮まったぜ?」  「…そう考えてる自分が嫌なんだ…。」  「………。」 ふと、サンジは目を泳がせて  「…あ…もしかして、家でお母さん待ってるか?」  「待ってねェ。さっき携帯でおめでとう言われた。…風邪引いて来られねェって。」  「そか…。」  「………。」  「お母さんには悪いけど、よかった。」 ゾロは目を見開いて  「…嬉しい…のか…?」  「え?」  「………。」  「……あ……。」 …嬉しいって… ゾロも、嬉しそうに笑った。  「…火の始末忘れんな…。」 ジジィの声に我に返った。 きっちりコートを着て、出て行くところだった。 ずいぶん長い事、2人で見つめ合ってたらしい。  「………。」  「…ゾロ…。」  「…何も言うな…。」  「……何も言ってねェ……。」  「…最後まで…ケリつけてェんだ…。」  「………。」  「…めんどくせェって思うか…?」  「そんな事ねェ……ただ……。」  「ただ?」  「…じれったいって言うか…なんか…こういうの苦手っつーか…。」 怖いなんて言えねェ。 と ゾロの手が、おれの肩を抱いた。  「………。」  「あと19日だ。」  「…うん…。」  「……待っててくれ。」 ああ、もう 素直になります おれ こいつが好きです… ほだされた? 違うな おれ、こいつのこういう真っ直ぐな所に惚れてました。 5年前からずっと だから 訪れなかった100日目が悲しかった。 今度こそ…。 北の街の冬は早い。 吐く息が白くなる。 水が冷たい。 100日通い、残り10日…。 9日 8日 7日 6日 5日 4日 3日 2日 運命の99日目 その日、その年初めての雪が降った。 あの時と、同じ。  「明日…。」  「ああ、明日。」  「………。」 明かりの落ちた店先、ジジィも帰って暗く静まり返った中で、ゾロがおれを抱きしめた。 5年前は、ゾロの体はまだ小さくて、背伸びしてのキスだったっけ…。  「………。」 でも、キスはしなかった。 まるで、何かを恐れているみたいに。  「…何も起こらない…。」  「………。」  「…もう、何も…。」  「………。」 サンジは、深い、艶を含んだ息をつき  「…明日…待ってる…。」  「………。」  「…どんなに遅くなってもいい…待ってる…。」 明日 100日目  「…じゃあ、また来春。よいお年をね。」  「ありがとうございます、マダム。よいお年を!」 毎年最終日に、常連の客に手作りのシュトーレンをプレゼントする。 最後の客に手渡して頭を下げ、店の入り口の明かりを落とした。 いつもなら、ゾロが駆けこんでくる時間。  「先に帰るぞ。…ああ…掃除の業者はいつ来るんだった?」 ジジィが、マフラーを巻きながら言った。  「5日だ。火曜日。」  「そうか…今年も無事に終わったな。」  「そうだな。御苦労さん。」  「……火の始末忘れんな。」  「……おう。」 ジジィとしちゃ、フクザツかな…? フクザツだよなァ…。 外、寒いからビーフシチューを作った。 昨日の雪は積もらなかった。 うっすらと辺りを染めはしたけれど、昼前にはもう溶けちまった。 ゾロ まだ、来ない いつもなら、息切らしながらやってくる時間なのに。 100日目 何も起きない。 起きるはず無い。 2度あること3度なんてない。 でも、もし起きているとしたら… …まさか、本当は完全に好くなってなかったなんて…。 何度も、店先に出て辺りを伺う。  「…あ…バス…ああ…もしかしたら1本乗り遅れ…あるある…あるよな…。」 5年前も そう…考えたよな… …ゾロ… そうだよな? バス、乗り損なったんだよな…? …ゾロ… 風が、強くなった。 あのカレンダーを手に取った。 今日の日付に赤い丸。 時計を見た。 閉店から1時間30分。 薪ストーブの上のビーフシチュー 煮詰まっちまう…。 パン 焼きたてがいいと思ってタイミング合わせたのに、すっかり冷えちまった…。 ゾロの学校前からバスに乗って バス停まで25分。 バス停から5分。 最終は何時だっけ? 田舎だから、終バス早ェんだよな…確か…こっち行きは8時台で終わっちまうような事、前に聞いた…。 嫌な想像が、頭の中を駆け巡る。 また病気とか、事故とか、犯罪とか ………心変わりとか……… 手間暇かけた、おれへのとんでもなく悪質な悪戯かな……とか……。 そんなはず、ない…。 絶対ない…絶対……。  「…クソ…。」 なんだ?  「…う…。」 なんか…目から出てくる…。  「…ふ…く…。」 5年前は、悔しいだけだった。 寂しさとか悲しさもどこかにあったけど、悔しさと怒りの方が大きかった。 その怒りで冬を過ごした。 だから、冬の間に立ち直れた。 春には冷静でいられた。 けど 今回はダメだ。 今日、お前が来なかったら、おれ……立ち直れねェ……ダメになっちまう……。 小町も きっと後悔した 少将に、「なんで『好きです』って言えなかったんだろう。」って また 時計を見た 待つ時間は長いっていうけど、こういう時って違うんだな…。 気が付いたら、もう11時回ってやがった…。  「そりゃ言ったよ…遅くなっても待ってるって…けど…これはねェだろ…?」  「…電話の1本くらい…。」  「…ははは…アホかおれ…ゾロの携帯番号知らねェや…なんで聞かねェんだよ…。」 日付が変わっちまう。 100日が終わる。 いくらなんでも、高校だぞ? 遅いったって、限度があらぁ…!  「…ゾロ…。」 がたん  「!!」 外の音に、サンジは弾かれるように立ち上がった。 入り口のドアに飛びつき、ドアノブを回す。  「………!!」  「―――悪ィ!!」 飛び込んでくる、デカイ体。 入るなり、抱きしめられた。  「ゾロ……!!」  「時間…!!間に合ったか!!?」  「…このアホ…!!」 ああ、クソ!! なんて勢いで出てくるんだよ、この涙!!  「このバカ…!!アホミドリ…!!こんな時間までなぁにやってたんだよ!?」 ゾロは、荒い息を必死に抑えた。 体が熱い。 頬が真っ赤だ。  「…学校から…走ってきた…!」  「は!?」 学校からって…!!? お前の学校からここまで…って。  「10キロ以上あるだろが…!いくらこの前マラソンで走ったつったって…!」  「…最終バスが…途中でエンジントラブっちまって…この季節タクシーもねェし  …走った方が早ェと思って…けど…迷った…。」  「…迷うって…1本道だろうが…!」  「近道かと思って入った横道が……なんかワケわかんねェトコに出ちまって…焦った…。」  「………。」  「ちくしょー!!こりゃ、誰の呪いだ!?毎度100日目かよ!!?」 えっと 小町の呪い? それとも少将かな?  「…走るって…なんでそう考えたんだよ…電話1本くれれば…。」  「ここの番号知らねェ。」  「…あー…そうね…。」 あれ?  「そういえば、ゾロお前…この店の名前、知ってるか?」  「………。」 だめだこりゃ(苦笑) 背中に回った手に力がこもる。 耳元で零れる、深いため息。  「…間に合った…。」  「………。」  「…ここまで…遠かった…。」  「遠かったな、10キロ。」  「違う…。」  「…わかってる…。」 おれの方から、キスした。 そして  「遠かったな、ゾロ。」  「………。」  「好きだ、サンジ。」 5年前と同じ言葉、ずっと大人になった声で…。  「…好きだよ…ゾロ…。」 いや…  「…愛してるよ…ゾロ…。」 一瞬、ゾロが怒ったような眼をした。  「…クソ、おれが先に言おうと思ったのに…。」  「…これくらい、お兄さんに譲れ。」  「…わかった…。」  「素直なキミが好き。」  「………。」 おお、真っ赤になった。 目を交わして 顔を寄せて 薄く唇を開いたまま 重ねて 深い、キス。  「…ん…。」  「………。」 んん? あれ? なんか…ボタン外して…る?  「…ちょ…ゾロ…ちょと待て…え〜〜と…ここで…する気か…?」  「…今からホテル行ってる暇あるか…てか、おれの余裕がねェ…!」  「…あ、あのさ…お前…10キロ…走ってきたんだろ?絶対ェ汗かいてるよな!?」  「………。」  「……せめて…風呂……。」 って、自分で言いながら…。  ……ああ…汗の匂いにクラクラする……。  「…てめェも汗かきゃ一緒だろ…?」  「………。」  ……メシ……  …も、いっか… なァ 聞いてもいいかな? ゾロ お前さ 経験あるんですか?  「……ん……っ……。」 あるな これはあるな! いつ経験したコラァ!!?  「…あ…ぁあ…っ…。」 やっぱ、あれか? アチラで教わってきましたか? どんな子に教わったんだよ? ああ、ちくしょー  「…サンジ…。」  「…ん…?」  「何考えてる最中かしらねェけど…こっちに集中してくれ…。」  「………。」 小さく笑った顔が、大人っぽいというより オッサン臭ェ ゾロは、サンジに軽くキスして耳元で囁いた。  「……気持ちよくしてやりてェ……だから……。」  「………。」 サンジの顔が、妙。  「…どうした…?」  「…どこで勉強してきたんだよ…。」  「………。」  「うわ!なんだ!?その意味深な笑顔!!ムカつく!!」 叫んだ瞬間、唇を塞がれた。  「……もう、黙れ……。」 脳天直撃のセクシーボイス。 効果抜群の呪文(スペル)。  「…いい子だ…。」 だーれーがー!? ウチの店 ソファってないんです。 ウッドチェアだけで、ラブチェアはあるけど『する』にはちょっと適してないんで…。 背中を支えられて、そっと床に仰向けに寝かされた。 一応気を使ってるらしく、毛足の長いラグマットの上。 よく見たらゾロの奴、制服のワイシャツ1枚だ。 ワイシャツのボタン、外して、勢いよく脱ぎ捨てた。 …うわ…スゲェ体… そして  「…デケェ傷…。」 胸の、傷痕に触れてみる。  「3回切ったからな…。」  「……見てるだけで痛ェ……。」  「痛くねェよ。」  「…痛ェよ…。」 思わず キスした。  「…痛かったろ?」 ゾロの目が、少し潤んだ。  「…痛かった…。」 痛かったよな…。 堰を切ったように、ゾロはサンジを抱きしめて、顔中にキスの雨を浴びせる。 キスの嵐は首筋を滑り、堅い手が何度も腕をさする。 荒い息を混じらせながらゾロが  「…なんでセーターなんか着てんだよ…!」  「あ。」  「ああ、もう!!」 だって今日寒い。 そう思った瞬間、体を引き起こされて一気にセーターを脱がされた。  「おぅわぁっ!」  「なんで中まで、ポロシャツだ!!?」  「…あ〜〜〜〜〜…。」 心の準備はできてたけど、体の準備がまだでした。 普通、逆じゃね? ちゅーか  「…どっか、ムードのあるホテルにでも行くつもりだと思ったんだよ!!」  「ああ、そりゃ悪かったな!」 また押し倒されて、痺れるようなキスを繰り返される。  「…は…ぁぅ…っ…!」 耳の裏に舌を這わされた。 電流が走った。 パチパチと、ストーブの火が爆ぜる音。 風が、枝を鳴らす音。 ゾロの息遣い キスの音 肌を探る音  「…寒くねェか…?」  「…寒くねェ…熱いくらい…。」 …あ…『うん。寒い。』っつった方が…もっとぎゅってしてくれたかも…。  「……!」 うわ…息できねェ… クラクラする… いつの間に全部脱がした? しまった…もっと灯り落としとくんだった…丸見えじゃねェか…? 恥ずかしいくらい、足の間のモン、堅くなっちまってるのに…。  「…あ…ゾロ…やっ…!」  「…ヤだったら、こんなにならねェだろ…悦んでんぜ…?すげェ垂れてる…ホラ…。」  「…言うな…アホ…!」  「…言わせろよ…これでも我慢してんだ…もっとエロい事言いたくて仕方ねェ…!」  「…く…ふ…ぁ…や…っ…。」  「…おれが5年耐えられたの…てめェのこういうカッコ想像して頑張ったからだぜ?」  「…エロガキ…!」  「考えてみたら、あの頃の体でこんなことしたら、おれ、てめェの上で腹上死だったな。」  「怖ェ事言うなァァ!!」  「………。」 優しいキス。 涙が出てくる…。  「……泣くな……。」 キスを繰り返しながら、指で涙をぬぐう。 その指に指を絡めて、サンジも愛しいキスを繰り返す。  「大好きだ…サンジ…。」  「…うん…。」  「愛してる。」  「…うん…。」 体中、余す所なく口づけて、指を這わせて、舌で愛撫して いやらしい事を囁かれて、キスされるたびに跳ねて、声をあげて 可愛いゾロ クソ生意気で、口が悪くて、でも素直で――。  「…繋げていいか…?」 荒い吐息混じりの声に、サンジも熱い吐息で答えた。 そっと ためらいがちに足を広げると、ゾロも、まるで今から試験でも受けるみたいな顔で、そこへ、指を這わせた。  「…あ…。」  「………。」 濡れた音が聞こえた。 入ってくる 堅い指 こんなのがイイなんて…思いも…。  「………ん…ああああ…っ!!」  「……ここか……?」  「……あ…やっ…そこ…!やだ…!」  「……嫌っていう割には…指…締め付けてっぞ。」  「…や…ぁ…っ…。」  「…もう…いいか…?」  「………。」  「…嫌だって言われたら…すげェ困…んだけどよ…。」 黙って、サンジは腕を開いた。 潤んだ目、何かを求めるような唇。  「…このまま…止められたら…おれ…も…困…。」  「………。」 …ゾロ… …キス上手ェなァ…  「…あ…あ…ぁあ…っ…。」 …ゾロのが… おれの中…挿入って来…。 …痛ェけど… …なんか…すげェ…イイ…  「…あ…はぁ…ん…っ…。」 受け止めた部分が、濡れた音を立ててる。 …熱ィ… …焼けた、鉄の棒…突っ込まれたみてェ…っ …でも…  「…ふ…くぅ…ん…っ…あ…。」  「…入った…わかるか…?」  「………。」  「…全部…入ってる……お前に…すげェキツク抱きしめられてる…気持ちいい…。」  「…ん…ぁ…。」  「サンジ…。」  「…う…。」  「…お前は…?」 黙って、うなずくしかできない…。 …もう…何も考えたくねェ…もう…。  「…ゾロ…!」 すがりついて、サンジは大きく喘いだ。 応えるように、ゾロは激しくサンジを揺さぶる。  「…サンジ…サンジ…っ!」  「…………は…ああっ…!!…や…ぁああっ!…ああ…ゾロ…!ゾロ…ォ…!!」 ゾロは、カウンターの壁に背中を預け、大きく足を広げたサンジを正面から抱き締めて腰を打ちつけながら、 白い胸の上で震えるように上を向いた緋色の乳首を舌で舐った。 こうなる事をずっと望んでいた。 好きで好きでたまらなかったから、絶対に誰にも渡したくなかった。 なのに、自分のオンボロの心臓がそれを邪魔して許さなかった。 誰かの死の上に成り立った自分の生を無駄にしたくはない。 だから、ずっと抱えていた想いを果たしたかった。 果たせた歓びが、ゾロを激しく突き動かす。  「…熱ィ…っ…も…ダメ…イク…イっちまう…ゾロ…ぉっ…!!」  「…いいぜ…イケよサンジ…イってくれ…っ!…おれも…っ。」  「…ぁ…は…はぁあっ…!あああああっ!―――――ぁ っ……!」 弾けた飛沫が、ゾロの唇から顎にかかった。 一瞬、爆発するような恥ずかしさがサンジを襲ったが 殆ど同時に、腹の中を駆け巡った熱いもの。  「…あ…ああ…っ…!」  「……おい…締めすぎ…絞り取るつもりかよ……。」  「…馬鹿…ん…ぁあ…。」 崩れるサンジを抱きしめながら、ゾロは、唇についたものをそのまま舌で舐め取った。  「…汚ェ…。」  「…てめェの体から出たもんが、汚ェ訳ねェ。」 …恥ずかし… サンジの心のつぶやきを聞いたように、ゾロは自分の胸にサンジの頭を埋めて抱きしめる。 まだ 繋がったまま 満たされた幸福に互いに酔う。 パチン 火が爆ぜた。 やんわりと、暖かく幸せな空気を、ゾロの声が裂く。  「…明日から…100日でも1000日でも…。」  「一緒にいよう…。」 サンジは、幸福な笑顔でゆっくりとうなずいた。 可愛いゾロが 愛しいゾロになった100日目。 もうすぐ冬が来る。 今度の冬は、暖かな冬。 ストーブの中の薪火が、ぱちんと鳴った。 ………。 あれ…? え…っと…おれ、明日から…。 そんなちょっとした疑問を抱いた時、ゾロが言った。  「…そうだ…冬の間は、お前ェがおれんちに通って来いよ?」  「……え?」  「たりめーだろ?おれは、冬休みまでガッコがあんだ。…冬は下へ降りちまうんだろ?  だったら今度は、お前がおれんトコに通う番じゃねェか。」  「……えェ?」 ゾロは、嬉しそうに笑って  「100日、1日も欠けさせねェからな。」 ちょっと待て その間、クリスマスとか正月とかあるんですけど!? おれ、街のホテルでバイトなんですけど!?  「勘弁しねェ。覚悟しとけ。」 5年前のゾロと同じ、子供の様にいたずらな笑顔で宣言される。 おれの方が絶対、分が悪い。 でも  「……通ってやろうじゃねェか!!ちくしょー!!」 お前と一緒の、幸福な100日を過ごしたら、また春  「一緒に、ここに帰って来よう。」 サンジは笑ってうなずく。 100日でも1000日でも。 END    BEFORE 100000HITキリ番ゲッターうさ様のリク 『年下ゾロにほだされるサンジ』でございました。 実は「年下ゾロ」バージョン話を3個作りました。 というより、まず思いついたお話は 「……違う。」とすぐに切り捨て 次に思いついたお話は、年下ゾロである理由が薄く、 すでに完結間近でありましたが急きょ止めまして(ぉい) 最後に思いついたお話がこれであります。 ご満足いただけるかどうか、とても不安ではありますけれど うさ様、どうかお受け取りくださいませw リクをありがとうございましたw 白状いたします SWに軽井沢へ出かけた折に、シーナ誠氏の『白い手』を思い出しまして 『少年の頃、別荘地で出逢った白い美しい手の人』 そのパターンで行こうと、それまで書いていたのを捨てました(笑) そちらのパターンは、設定を変えて書こうかと思います。 その内に(その内かよっ!)                     (2009/11/1) 君を待つ100の夜‐TOP
お気に召したならパチをお願いいたしますv

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