深更。

降るような星空の下。



広大な偉大なる航路の海上に錨を下ろし、穏やかな波間にたゆたう一隻の船。

麦わらの一味の海賊船、サウザンド・サニー号。



そのサニー号の展望室。



深夜だ。



灯りは消え、クルーはみな穏やかな眠りについている。

なのに、ここだけは、小さなランプのともし火が薄闇に浮かんでいた。

その灯りに時折揺れる影。

展望室の壁に映る2つのそれは、時に近づき、時に離れて、それでも決して分かれることなく揺らめいている。



深い溜め息と、偲ぶような声。

時折交わされる短い言葉。

衣擦れの音。



 「…ん…ふ…ぁ…。」

 「………。」



切ない声と、それに答える愛撫の肌擦れの音。



展望室は、ゾロのトレーニングジムと共用になっている。

これ幸いと、様々な筋トレグッズを持ち込んだ部屋の一角に、ベンチプレス用のセットが置かれてある。



そのベンチの上に、サンジは横たえられていた。



そして



 「…ん…んん…っ!」



この部屋に、見張り番の為にサンジが上がってきて、待ち構えていたような

ゾロに抱きしめられてから10分ほどが経っていただろうか。



 「…ゾ…ロ…。」



ゆっくりと背中を滑る手。

深く繰り返されるキス。

熱く強い指先で、サンジの顔を何度も撫で回す。



 「…ゾロ…?…なぁ、ゾロ…。」

 「…ん…?」



優しい声で、ゾロが問い返す。

だが、サンジの答えがない。



感じて、ただ名を呼んだだけかと、ゾロはまた優しい愛撫を続ける。



胸の中で、感じて震える体が愛しい。

薄く開いた瞳が潤むのが嬉しい。



ゾロは、ゆっくりと肌を探った。



探る度に、サンジの体が激しく震えて跳ねる。



 「…あ…ああ…!」

 「…サンジ…。」



ゾロが、サンジの名を呼んだ途端、サンジがびくりと激しく震えた。

そして



 「…ゾロ…やめろ…なぁ…。」

 「…あァ…?」



やめろ、と言う言葉が、本音でない事はわかっている。

ゾロは、さらに強く身体を引き寄せ、抱きしめ、顔中にキスの雨を降らせる。



と、



 「やめろ!!」



次の瞬間。



信じられなかった。



 「!!」















なんで?



なんで、この瞬間に?



 「……てめ…どういうつもりだ!?アホコック!?」



部屋の隅に吹っ飛ばされ、それでも何とか身を起こしたゾロは、コメカミに青いものを浮かべて怒鳴った。



 「……うるせぇ!!」



荒い息。

サンジは震える手で乱れた襟を直しながら



 「…気が変わった…!今日はヤらねェ!!」

 「あァあ!?」



サンジの豹変に、ゾロは素っ頓狂な声を上げた。



 「おま…!さっきまで、あんなに燃えてたくせに、なんでイキナリ!?」

 「ヤメだ!ヤメ!!今日はしねェ!…てか、当分しねェ!!」

 「はぁあ!?…おまっ…!おい!“コレ”どーすんだ!!?」

 「…てめぇでコキやがれ!!…寝る!おやすみっ!!」

 「え!?あ!おい!!」



逃げるように、サンジは展望室を飛び出していった。

けたたましい足音と、荒っぽくドアを開ける音がして、やがて静かになった。



 「…寝るって…今夜の見張りはてめェだろうが?」



そして



 「…どーしてくれんだよ…“コレ”…。」



自身の、すっかり『盛り上がった』ものに目を落とし、ゾロは大きく溜め息をついた。











そんな出来事があってから2週間が過ぎた。



2週間。



一言で2週間と言ってしまえば簡単だが、あれから14日なのだ。

ほぼ半月の14日。

くどい様だがその2週間の間。



本当にサンジは、ゾロに指一本触れさせなかった。



無理強いする事も考えた。

実際、1週間目の晩に、無理矢理食糧倉庫に引っ張りこんだ。

すると、意外な程に素直に観念して見せたが、しばらく愛撫を続けていると、また



あの晩の様に手ひどく拒まれた。



 「当分、ヤらねェっつったろ!?」



立ち上がり、そう叫んだサンジの顔は、何かに怒っているという表情ではなかった。

どこか戸惑っているような、本心とは裏腹な、まるで今にも泣きだしそうな顔に見えた。



 「何でだ!?理由を言え!ワケを!」

 「ワケなんざねェ!!」

 「無ェならなんでだ!?」



その問いには、決してサンジは答えようとしなかった。

ただ、頬を染めて顔を背けるだけで。



 「………。」



ぶっちゃけ。



溜まってる。



若いのだ。

吐き出したくてたまらない。

増して、2日前に敵襲を受けてかなり激しい戦闘を味わった。

血が滾っている。

同じ感覚を共有しているはずのサンジなのに、それでも拒んだ。

仕方なく、自分で『処理』するしかなかった。

吐き出したそれは、いつになく濃くて量が多かった。

それを見た瞬間、腹がたって仕方がなかった。



喧嘩でもして、拗ねているのなら話もわかる。



理由が、まったく見えないのが癪に触った。



 「………。」







今夜の見張りはフランキーだ。



ゾロは、展望室を降りて、フランキーの作業部屋に向った。

(素直に辿りつけたかどうかは、また別の話。)







時計の針は10時を指していた。

今夜の見張り番に、夜食を出す時間だ。

トレーの上に2本のコーラと8段重ねのハンバーガーとベイクドポテト。

夜食にはかなり重たいメニューだが、そこはサンジなので、バーガーのソースやパテはかなりヘルシーなものを使っている。

ポテトもフライでない所が心配り。



もっとも、サイボーグにメタボリックが関係あるかどうかは疑問だが。



 「さて、運ぶか。」



まくっていた袖を下ろした時、キッチンラウンジのドアが開いた。



 「なんだ、今、運ぼうと…。」



フランキーだと思った、のに。



 「…てめ…。」



ゾロだ。

サンジはあからさまに眉を寄せながら



 「…これから風呂か?なら、さっさと入れよ。後がつかえる。」



すると、打てば響くようにゾロが言う。



 「一緒に入らねェか?」

 「断る。」



これもまた、間髪入れずの即答。

今の誘いは、ゾロにしてみればかなりの譲歩だが…。



 「…夜食か?」

 「てめェのじゃねェことだけは確かだ。」

 「フランキーのなら、必要ねェ。」

 「あァ?」

 「交代した。今夜はおれだ。」

 「…はァ?」



見え見え。



サンジは小さく息をつき、タバコの火を灰皿の上でもみ消した。



 「じゃ、それ持ってとっとと上へ行け。…風呂もらう。おやすみ。」

 「待て。」

 「………。」

 「話がしてェ。」

 「おれはしたくねェ。」

 「なら、一方的におれが喋る。黙って聞いてろ。」

 「なんだよ、そりゃ。」



瞬間、サンジの頬がかすかに染まった。



ゾロは、ダイニングの椅子に座り、背中を向けたままのサンジへ



 「理由を知りてェ。」

 「…なんの?」



答えがあった。

会話をする気が、ない訳でもなさそうだ。



 「とぼけるな。てめェの態度の理由だ。」

 「………。」



サンジは肩越しに振り返り、小さく笑うと



 「…ああいう関係になる前に、戻っただけの話だろ?」

 「勝手に戻るな。…てめェ、おれに飽きたとか、嫌になったとか、そんなそぶり見せなかったじゃねェか。

 だから理由がわからねェと言ってる。」

 「………。」

 「…言っとくが、おれはてめぇに飽きてもいねェし、嫌になってもいねェ。むしろ逆だ。」

 「………。」

 「今だって、この場でてめェを押し倒してェし、引ん剥いて舐めまわして、突っ込みてぇと思ってる。」



サンジが笑った。



 「怖ェ怖ェ…ケダモノは嫌だねェ…即物的でよ。」



ようやく振り返り、正面からゾロを見て、サンジは少し俯き加減から見上げるように言う。



 「じゃあ、言ってやる。『飽きた』。だから、もうお前とは寝ない。」

 「ウソをつけ。」



ぴくん、とサンジの肩が震える。



 「ヒネクレ者の口からでまかせにはもう慣れた。」

 「誰がヒネクレ者だ?」

 「てめェだよ。」



瞬間、ゾロの手が伸ばされた。

反射的に逃れようとしたが、掴もうとするゾロの動作の方が速かった。



 「放せ!」



ゾロは右手でサンジの腕を掴み、左手をサンジの胸の上に押し当てる。



 「!」

 「バクバク言ってるぜ?これが、飽きた相手に腕掴まれてるヤツの鼓動か?」

 「…っ!!」



途端に、サンジの顔が赤く染まった。

この表情を知っている。

気持ちとは裏腹の、自分を誤魔化している時の顔。



こんな顔をするくせに、なんでだ?



まったく理由がわからねェ。



引き寄せて、力任せに唇を吸う。

手を剥がそうと必死に抵抗するサンジを押さえつけ、背中で腕をひねり上げた。



 「痛ェ!!」



だがゾロは手を放さなかった。

サンジは承知しているのだ。

手の加えられた刺激に、サンジが『痛い』と言えばゾロがすぐに手を放すことを。

だが、今は



ひねり上げて抵抗を奪い、そのままソファの上に放り出す。

そして



 「言ったはずだ。“引ん剥いて舐めまわして、突っ込みてぇ”ってな。」

 「………。」

 「理由を言わねェなら、このままレイプになるぞ。」

 「………。」

 「いいんだな?」



と、サンジの目が鈍く光り、不敵な笑みが浮かんだ。



 「…断ってするレイプがあるのかよ?」

 「………。」

 「レイプってのは、相手が嫌がるのを押さえつけて、無理矢理犯すことを言うんじゃねェの?」



サンジは、自らネクタイを緩めた。



 「しろよ。レイプ。」

 「…てめェ…。」

 「…もっと抵抗しようか?逃げ回って、助け求めて泣き喚いてやろうか?」

 「………。」

 「お相手するぜ?魔獣プレイならな。」



その時



何かがゾロの中で、『カチリ』と音をたてて嵌まった。













ああ











わかった











そういうことか













サンジの両手を頭の上で押さえつけて、首筋に激しくキスを繰り返す。

スーツの襟を引き裂いて、シャツの上から胸に舌を這わせた。

言葉通りのレイプじみた前戯。

どこまでが本気なのか、サンジは言葉通り背中を反らせ、足をばたつかせて抗って見せる。



だが



サンジの顔は笑っていた。



憎らしげな笑みで、首筋から脇へ頭を滑らせていくゾロを見下ろしていた。



ゾロの手が、サンジのネクタイにかかり勢いでそのまま引き抜くと、それでサンジの両手を縛りあげる。



 「…ははっ…レイプらしくなってきたな?」



少し荒くなった息で、サンジは笑いながら言う。

股間にあるものはすでに固くなっていて、スーツのズボンの上からもそれがわかる。

サンジが更に悪態をつこうと開いた唇を、ゾロは激しいキスで塞いだ。



と





 「……!!」





サンジの表情が瞬時に固くなった。

ゾロの愛撫は止まらない。

体中を這い回り、サンジの焔をさらに激しく熾そうとしている。



その



手



 「…ゾロ…!」

 「………。」



答えはない。



 「ゾロ!!」



喉の奥から搾り出すような声で、サンジは叫んだ。



誰かが起きていたら、ここへ来たら。



その理性が一瞬脳裏を駆け抜けたが、サンジはゾロの胸を本気で押し返しながらまた



 「ゾロ!!」



無言のままで、ゾロはサンジを犯すことをやめない。



 「ゾロ!やめろ!!」

 「………。」

 「…やめろ!ゾロ!やめてくれ…!!」



羽のようなキスが、サンジの頬を滑っていった。



 「…ひ…ぁっ…。」



背中を探る、ゾロのものとは思えない柔らかな指先。



 「…やだ…っ…!」



いつしかゾロの行為は、激しくありながら柔らかく、包みこむようなそれに変わっていた。

そして



 「…サンジ…。」

 「…!!」



優しい、心の底に染み込むような声。



 「ゾロ…やめろ!…なァ…!!」



サンジの耳朶を軽く噛んで、ゾロは囁く様に言う。



 「…こういうの、スキだろ?」

 「スキじゃねェ!!」

 「…好きだろ?」

 「……!!」



顎を掴まれ、正面から目を合わせさせられた。



 「…こういうのが好きなんだよな?」

 「…う…。」



サンジは、口惜しげに唇を噛み



 「…クソ…なんで…。」

 「………。」

 「なんで最近…こんな抱き方ばっかりすんだよ…!」

 「なんだと?」

 「…こんなん……セックスしてるみてェで…嫌だ…!!」



ゾロは一瞬目を丸くして



 「…正にセックスしてるんじゃねェのか?」

 「てめェとおれのはセックスじゃねェ!!…ただの…処理だ!

 マスかくのと変わりねェ!!…そんな…女の子抱くみてェなマネ…すんな!!」

 「………。」



やっぱり、な。



ゾロはひとつ息をつく。



 「そうかよ。」

 「………。」

 「…なら、てめェはそれでいいじゃねェか。」

 「………。」



ゾロは、サンジの腕を引っ張りあげるように引き起こし、顔を寄せて



 「…おれはてめェとセックスがしてェ。」

 「……!!」

 「おれがやりてェセックスをするだけだ。

 …レイプ紛いに抱きてェ時はそうするし、じっくりねちっこく抱きてェ時はそう抱く。

 おれはどんなセックスでも、てめェを処理だと思ったことはねェぞ。」

 「…う…。」

 「…女の代わりに抱いてるつもりもねェ。おれは、お前が喜ぶ抱き方がしてェんだ。」



その言葉に、サンジの顔が真っ赤に染まった。

ゾロは、ふと目を泳がせて、首をかしげると



 「…女みてェに…抱いてた?そんなつもりはなかったけどな…。」

 「……!!」



そうなのだ。



初め、こんな関係になった頃のセックスは、もっと荒っぽくて乱暴で、

互いにただ射精出来ればいいというだけで、前戯もへったくれもないマスターベーションの延長でしかなかった。



そのセックスが



明らかに変わってきていた。



最近のゾロのセックスは、とんでもなく優しく、柔らかく、暖かかく

両腕の中にすっぽりと抱え込まれると、堅い胸なのに、まるで柔らかな羽毛に包まれているようだった。

キスも、愛撫も、挿入も、全てが優しく、熱く、涙が出そうになるくらいに幸せで…。



だから



我を忘れてすがってしまう。

すがって、声を挙げて、何度もゾロの名を呼んで、耳元で名前を呼ばれて、

奥深くへ穿たれて放たれると、愛しくて愛しくてたまらなくなる。

ゾロは、自分の体を女性に変換しているだけだと、サンジはずっと思っていて、

なのにそのセックスがたまらなく好きになりかけている自分が、どうしても許せなかった。

自分たちのセックスに、愛なんかないのだと言い聞かせてきたのに、

ゾロの愛撫が優しすぎて、たまらなく自分が惨めになってしまった。



なのに



 「…お前ェ、確かに喜んでたよな?

 だからおれは、お前がイチバン悦ぶセックスを、無意識にヤってただけだと思うんだがよ。

 違ったのか?…違ってねェよな?」



サンジは思わず顔を覆った。

熱くてたまらない。

きっと真っ赤だ。



 「それから、女だと思い込んでヤったことなんざ無ェからな。…考えてもみろ。

 女のケツはもっと柔らけぇし、どんなに小せェ胸だってそれなりに膨らんでるし、

 何より勃てて、射精(だ)したりしねェだろうが?」

 「言うなーっ!」

 「てめェは、腰は細ェが肉は堅ェし、ケツはしまってっけど小せェし、

 胸は無ェし、色は白くて肌は申し分のねェ艶だが、ヒゲ生えてっしスネ毛は処理しねェし…。

 どうがんばっても、てめェで女の体なんざ想像できねェ。立派に男だと認識してる。」

 「あああああああ!(泣)」

 「だから。」



ゾロの手が、サンジの肩を包んで胸へ抱え込んだ。



 「…てめェが、おれとヤるのは何故だ?」

 「………。」

 「おれと同じ理由じゃねェのか?」

 「………。」



サンジは顔を伏せ、表情を隠したが、小さく、だがはっきりとうなずいた。



 「だったら、てめェも、自分が好きなセックスで思いっきり燃えりゃあいい。」

 「…うう…。」



最後の抵抗。

ゾロは、サンジの頬を両手で包み、半ば呆れたような声だったが



 「確かにてめェ、レイプ紛いのも好きだよな?」

 「………。」

 「変態チックなのも好きだよな?」

 「………。」

 「でも、あんな風にされるのがイチバンスキだろ?」

 「………。」



もう、隠した所でどうにもならない…。



サンジはうなずいた。



と、ゾロは



 「…まァ…てめェのキモチも…わかるけどよ…。」



この誇り高い男。

どこか、深層の令嬢のように育った男のその誇りを、全て無視している自分。



だがそれは



 「…惚れてんだ…。」

 「………。」

 「この先、何が起こるかわからねェ、けどおれは、今、お前ェにぞっこん惚れてる。だから、してェ。」

 「…そういう…セリフを…真顔で言うな…。」

 「真顔でなく、どんな顔で言えってんだ?」



言って、ゾロはサンジの唇を奪う。



 「シてェ。させろ。」



うわぁ



と、明らかに心の中で叫んだ顔。



 「お前ェが好きだ。だから、お前とするセックスが好きだ。お前が悦ぶセックスがしてェんだ。

 …お前が感じまくって、おれのでイクのがたまらなく好きだ。」

 「…も…わかった…わかったから…何も言うな…。」

 「いや、まだ言うぞ。ついでだから言っとくが、おれは、てめェ以外の誰かとセックスする気は毛頭無ェ。

 てめェ以外の誰かとヤるなら、自分でカイた方がマシだ。」

 「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」



顔を隠した指の間から、桃色に染まった頬が見える。

次から次へと、『好き』という言葉を臆面もなく吐いてのける。

自分がナミやロビンに言うことは簡単に出来るのに、言われることには未だに慣れない。



甘やかされて、望むものを惜しげもなく与えてくれる。

それが、このダセェハラマキのクソ野郎だと思う度に、自分に腹がたつ。



 「おれとするなら、どんなシチュでも好きだろ?」

 「自惚れんな…バカヤロ…。」

 「好きなくせに。」

 「好きじゃねェ!!」

 「てめェ、ウソップより性質(たち)の悪いウソつくな…。」



笑いを堪えるようなゾロの声。



 「ヤるぞ?いいな?」

 「…どうぞ…」



諦めたように、サンジは答えた。

サンジは、ようやくゾロをまっすぐに見た。

真っ赤な頬。



 「…おれも…お前が好きだ…お前のセックス…好きだ…。」

 「ああ、よく知ってる。だから照れるな。おれに恥じらいなんざ必要ねェぞ?」

 「…おれが必要なんだよ!」

 「面倒くせェな。」



吐き捨てたゾロを、サンジは潤んだ瞳で睨みつけた。



ああ、やっぱりコイツおれに惚れてんな。

おれも、どうしようもなく惚れてるけどよ。



低いはっきりとした声で、サンジがつぶやく。



 「浮気したら、羊肉ショット100連発だかんな?」

 「心得た。」



サンジの腕が、ようやくゾロの首に絡みつく。

縛られたままだが、腕の間にゾロの首を通り抜けさせて。

ゾロはサンジの頬に、自分の頬をすり寄せて、耳元に唇を寄せながら



 「絶対ェそんなことにはならねェよ。」



ぴくん、とサンジの全身が震えた。

ぽろっとひとつ、涙がこぼれた。



愛されたがりのくせに、愛され慣れていない。

そんな華奢な心が愛しい。

その心を包む体が、愛しくてたまらない。



耳元で洩れる、熱い息。

その吐息を感じた瞬間、ゾロも大きく息をつき、サンジの耳に囁いた



 「……あー…おもっくそ変態プレイがしてェ。」

 「なんじゃ、そりゃぁあ!!?」

 「おお、丁度縛ってた。」

 「はあああああ!!?」



ニヤ、とゾロは白い歯を見せて笑い



 「溜まってっかんな、覚悟しとけ。」



サンジの顔から、滝の様に血の気が引いた。



 「ああ、安心しろ。ちゃんとてめェの好きなセックスしてやる。……フルコースでな。」



言われた瞬間、サンジの顔が爆発したように更に赤みを帯びた。

ハズカシさと、コワさと



ウレシさで



 「…さて…まずは、始めのお約束通りゴーカンだな?」

 「!!!!!」



にやりと笑うゾロの顔に、サンジは一瞬苦笑いを浮かべた。



自分でも、ゾロは思う。



 あー、たまんねェな。

 なんでこんなのに、ここまで惚れたか?





好きだから



お前とするのが好きなんだ





ゾロが小声で囁くと、サンジは笑ってうなずいた。











END





              (2008/7/8)







…まぁ、たまには

ココアに砂糖を10個入れるような甘い話も

よろしいかと思いまして……ダメ?





お気に召したならパチをお願いいたしますv

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