ルフィ海賊団の剣士とコックが、端から見れば命の削り合いとも見える、派手なケンカをするのは今に始まったことではない。



それでも



それは犬も食わないなんとやら、なので、他の仲間は、2人の間でその後何が起ころうと知ったこっちゃない。

そしてこの2人の場合、互いに素直に『ごめんなさい』を言うタイプではないので、仲間はいつも不思議に思う。



あいつら、いつも どうやって仲直りしてるんだろう?



 「どうやってって?そりゃあベッドの中ででしょ?」



ナミの大胆発言にウソップは慌てる。

ロビンは微笑む。

ルフィは首をかしげる。

チョッパーは失神する。

そして、新メンバーフランキーは爆笑する。



当のゾロは仏頂面で黙っているが、キッチンにいるサンジの方は、カウンターの向こうで卒倒していた。



ケンカの理由は、今回も些細なことだ。

だが、今回は、誰が見てもサンジの方が悪い。

まぁ今回に限らず、2人のケンカの原因はいつも、6:4の割合でサンジの方が悪い。

サンジの方が、大人気ないというか、つまらない原因でゾロにケンカを売る事が多いのだ。



ゾロは小さく舌打ちした。

そのくだらなさで、いつもナミに文句を言われ、ウソップに文句を言われ、ルフィにからかわれて、しかも最近、ここにフランキーのお節介が加わった。



そのたびに、サンジは真っ赤になってうろたえ、ゾロに当り散らす。

空しい繰り返し。







 ある島。



亜熱帯の温暖な気候の、割と栄えた大きな島。

サウザンドサニー号が碇を下ろしたのは、昨日のことだ。

昨日1日で知ったこと。

この島の治安が良いということ、海軍基地が無いということ、記録が貯まるのが5日間ということ。



なので、3日間自由行動。

出航の前日、サニー号に集合。



それだけ決めれば十分。



解散した麦わら海賊団8人が、それぞれが好き勝手な方向へ3日間のバカンスに

向かって歩き出そうとしたとき、サンジはナミとロビンに



 「ナミさん!ロビンちゃん!買い物するならお手伝いしますよ〜!」



と、ハートを撒き散らしながら言った。

その声を聞きながら、ゾロは何事もない様子で先に船を降りていく。



 「いいの?コックさん。剣士さん、行っちゃったわよ?」

 「え?何のこと?ロビンちゃん?」



けろりと言うサンジに、ナミは深い溜め息をついた。



 「あのね、サンジくん。何のためにわざわざ3日間、自由行動にしたかわからないの?」

 「それはもう!ボクとナミさんとロビンちゃんの、恋のバカンスの為!?」

 「そんなワケ無いでしょ?ま、いいわ!とにかく!あたしとロビンはもう、ホテルを予約してあるの。着いてきてもムダよ。」

 「そんなぁ〜、ナミさぁ〜ん!」

 「ほら!さっさと迷子のダンナを追いかけなさいよ!追いかけて、ちゃんと謝って仲直りしておいてね!」

 「謝ってって、オレがアイツに何を謝るんですかぁ!?」

 「うっわ!やだ!ロビン、分かってないわよ、こいつ!」

 「仕方の無い人ね。」

 「ええ!?」



ナミが、本気で怒ったように眉を寄せて



 「…サンジくん。たまには1人で、じっくり反省するのもいいかもね。」



と、言い残し、ロビンを連れてサニー号を後にした。



 「………。」



気がつけば、サニー号に居るのはサンジだけになっていた。



海からの風が、サンジの髪を梳いていく。

真新しい船の木の香りが、鼻をくすぐる。



新しいタバコに火をつけ、サンジは降りかけていた階からUターンした。

気だるげに、ズボンのポケットに両手を突っ込んで。

風になびく海賊旗を見上げる。

メリー号より大きな船は、ひとりになると、余計にその大きさを感じる。

サンジは船首に行き、黄色とオレンジのとぼけた顔のライオンに向かい



 「よぉ、クソ相棒、気分はどうだ?」



と、語りかけた。

答えはないが、きっとコイツはちゃんと聞いている。



 「…参ったねぇ。」



わかってはいる。

わかってるんだよ、ナミさん。

今回は、オレが悪いってのは。







いや、今回も。  かな?







けど、イヤなんだ。



オレから詫びいれるなんざ。



例えナミさんに怒られても、譲れねぇんだ。



これだけは





だって、そうじゃねぇと…。











気配に



咄嗟にサンジは振り返った。



その気配をサンジはよく知っていたが、その気が怒気を含んでいたので、思わず振り返って脚が ――― 出た。



岩をも砕くサンジの蹴りは、2本の刀で弾き返された。

弾かれ、反転して、サンジは再び蹴りを出す。

黒い脚は床に弧を描くように回転し、相手の足を払うかに見えた。

だが一瞬早く、軍靴の足は跳躍し、体勢を低くしたサンジの肩を掴んでそのまま床へ叩きつけた。



 「うぁっ!」



中央甲板と違い、ここには芝は敷いていない。

硬い床に背中を強打され、サンジは呻いた。

大きなダメージではないが、それでも瞬間走った激痛に眉を歪め、背を丸めた。



と、そのまま左腕を引きずり上げられ、一気に体を抱え上げられた。



 「何をしやがる!?」



答えはない。

叫んだ途端に、今度は肩へ担ぎ上げられた。

しかも、普通に腹ばいにして担ぐならともかく、背中を肩に載せられるというかなり無理な姿勢。

息が詰まる。

抵抗できない。



 「ゾロ!」



サンジの重さなど、いつもゾロが振っているダンベルの半分もない。

担いだままゾロは平然と階段を上がり、ダイニングへの扉を開けた。



 「テメ…!出てったんじゃねぇのかよ!?」

 「………。」



答えはない。



ダイニングの壁際に置かれたソファの上に、サンジは放り投げられた。

さすがにムカつき、咄嗟に身を起こしてゾロの腹へ蹴りを食らわせる。

入ったと思った蹴りは、ゾロの掌で受け流された。

受け流され、また、ソファの上へ投げ出される。



 「くそっ!」



がらぁん、と大きな音がして、床に3本の刀が転がった。

ゾロが腰から引き抜き、放り投げたのだ。

刀身を失った雪走が、鞘から抜けて無残な赤い姿を晒している。

その赤茶けた錆が、ふとサンジに抵抗する気力を萎えさせた。



 「………。」



サンジの目の前で、ゾロはシャツを脱ぎ捨てた。

腹巻きも落として、ズボンのファスナーを下ろす。

そしてそのままサンジをソファに押し付けて、首筋に噛み付いた。



 「……っ!」



痛い。



だが、言わなかった。



言いたくなかった。



たちまち、ゾロのそれが猛り狂うのがわかる。

それを感じて、自分も奮い立とうとしているのがわかる。



けれど



『ベッドの中で仲直り』には程遠いセックスに、傾れ込もうとしているのが嫌でもわかる。

 「…やだっ…止めろ…!」



だって、ナミさん。

コイツもこれだけずるいんだ。



こうやって、オレを攻めて、オレの口から『悪かった、許せ。』の言葉を奪い取ろうとする。

反省しろってナミさんは言うけど、コイツだって十分悪い。

しかも反省なんかしやしねェ。

最後にはオレがすがりついてイクのを、見て、笑って、喜んでいやがる。

こんなヤツに、何でオレから謝らなきゃならねぇんだよ!?



慣れた手つきで、ゾロの手がサンジの服を剥ぎ取っていく。

こんなパターンの激しい抵抗も、ゾロの手には何の障害もない。

服の上から、サンジの敏感な部分をなぞっていくだけで、魚のように跳ねるタイミングを計り、するすると肌を覆う布を滑り落とす。



こんな風に



何もかもわかった風に、オレを抱くコイツが嫌だ!



喉の奥で、サンジは叫ぶ。

だが声にはしない。



本当に嫌なんだ。



こんな形で、こんな風に抱いて、オレから何もかも奪って行くコイツが嫌だ。

そして

そうされてもなお、コイツにすがり付いちまう、自分が嫌だ。



どう足掻いたって、『される』側の立場の方が弱い。

翻弄されて、嬲られるだけ嬲られて、心のどこかでこんな自分を恥じて、

それでもそれが気持ちよくてすがって、絶頂を味わって涙まで流しちまう。



その上で、『詫び』?



冗談じゃねぇ!



 「………。」



サンジの抵抗が止んだ。



小刻みに震えながら、血が滲むほど唇を噛み締めて、洩れそうになる声を必死に押し殺す。

もう、この船には誰もいないのに。

どんなに声を挙げても、聞いているのはサニーだけなのに。



ゴーイングメリー号で生まれて結ばれた関係。

継がれ、さらに先へと、新しい世界へと向かうはずのサウザンドサニー号の中。

時折波に揺れ、軋む音に、荒い息遣いが混じる。



サンジはずっと両手で自分の口を覆い、声を出すことを拒むと同時に、ゾロのキスも拒んでいた。

だが拒むより前に、ゾロはまったくそれを求めなかった。

ただサンジの快楽を誘い、過敏に反応する部分ばかりを攻めて、サンジの体がビクビクと震えるのを楽しんでいるかのようだった。



不意にゾロは、口元を覆ったサンジの右手を引き剥がし、自身のそれを強く握らせた。

指先が、触れたくないものを拒むように震えている。

体を密着させて、握らせたそれに自分も手をかけて、ゾロはその手を激しく上下させた。



 「…!!」



思わず、口惜しげな声がサンジの口から洩れた。

言葉には、ならなかったが。

動く度に、握ったものが更に硬くなり、熱を帯びていく。



欲しい



心の奥で、それを望む自分にサンジは唾を吐いた。



と



 「欲しいか?」



息を乱しながら、ゾロが耳元で囁いた。

刹那、全身が震えた。

応、とも、否、とも、答えることを躊躇った瞬間、サンジの手の中でそれは大きく震えた。



 「!!」



思わず、手を引っ込め、指を濡らした液体を振り落とす。

だが、ゾロはそれを許さなかった。

手首を握り、その指を、サンジの唇を割って奥へと突っ込む。

 

 「…う…ッぐぅ…ッ!!」

 「…嫌なら嫌って言えよ。」

 「…う…!」

 

サンジ自身の指で、その舌を犯しながら、ゾロの左手はサンジのものを鷲?みにする。

 

 「…ん…んッ…!」

 「…ったく…こんなになっちまうクセしてよ。」

 

ゾロの声から怒気が消えない。

 

握られた手の中で、サンジのものがゾロの指が動くのを求めている。

どう弄って、どう愛してやれば、どんな風にサンジが悦ぶのか、ゾロはよくわかっているはずだ。

なのに、ゾロの固い手はそれを握っているだけで――。

 

 畜生

 

すでに唇は解放されていたが、サンジは決して声を出さなかった。

出せば、どんな言葉が飛び出してしまうか分からない。

 

それを悟ったかのように、ゾロは、日頃のサンジが最も嫌う体位になろうと、無理矢理サンジの体をひねらせる。

 

 「…あ…あ…ッ!」

 

『 嫌 』

 

と、言ったようにも聞こえた。

だが、それは悲鳴のようではっきりとした言葉にならなかった。

 

ソファの座面から、体を半分床にずり落とした状態で、ゾロはサンジのそれを口に含んだ。

そしてサンジの口にも、自分のそれを無理矢理に捻じ込む。

 

 「噛むなよ。」

 

冷たく、それだけを言った。

互い違いになった体、しかもサンジの方がゾロの腹の上の状態。

床に頭を押し付けられるような体勢。

ただでさえ沸騰した血が逆流して、目が眩む。

ゾロの手は、サンジの両腿をしっかりと掴んで放さない。

舌が淫らに動いて、サンジを煽り立てる。

サンジの口の中で、ゾロは再び力を漲らせた。

喉の奥まで突くそれに、サンジは何度も吐きそうになる。

 

それでも

 

 ( 絶対に泣かねェ。懇願もしねェ。したいだけ勝手にさせてやる。イキたきゃ勝手にイきゃあいいんだ!! )

 

決して、感じた顔をしない、声を出さない。

そう決意したサンジの耐える体が、小刻みに震える。

白い肌は桃のように染まり、指先や、耳や、胸の小さな乳首は、さらに赤い桜桃のようだ。

頑固なサンジの、最も敏感な肉体の芯を、舌でなぞり、唇で吸い、歯で軽く噛んで刺激する。

震え、甘い蜜を漏らすそれと、どこよりも赤く痙攣する秘部が、何を求めているのかゾロにはよくわかっている。

唾液で指を濡らして、遠慮無しにそこへ挿し込む。

 

 「!!」

 

ビクン と、白い体が大きく跳ねた。

 

もう1本。

 

また、ビクンビクンと跳ね、背中が仰け反る。

まだ体を交叉させたまま。

気づけばゾロは、ソファの上にサンジの腰を抱えて座り、大きく広げた脚の間で、最も恥ずかしいふたつの場所を同時に攻め立てていた。

腕を床につき、サンジは必死に体の自由と理性を手繰り寄せようとする。

 

感じてたまるか、と、何度言い聞かせても、ゾロの嵐のような愛撫は止まらない。

 

目の前が真紅に染まる。

 

もう、イキたい。

 

なのに、ゾロの片手はサンジの根元を押さえつけて、イカせようとしない。

イキそうになるとそこに力を込めて、それを許しはしなかった。

 

目の前で火花が散っているような感覚。

このまま、頭の中が爆発してしまうのではないかというほどの。

 

許してくれ と。

オレが悪かった と。

もういじめないでくれ と。

だから、イカせてくれ と。

お前のもので、オレを犯してイカせてくれ と。

 

そう、テメェが言わせたがっているのなんか百も承知だ!!

 

チクショウ

 

チクショウチクショウ!

 

噛み締めたサンジの唇から、赤い血が滴り落ちた。

ゾロはそれに気づいていたが、止めようともしない。

 

真っ赤に染まり、熱い汗が噴き出していた肌が、見る見るうちに真っ白になる。

熱い汗が、冷たい汗に変わる。

 

 「………!」

 

ゾロが、舌打ちするのが聞こえた。

何かを吐くようにつぶやいた。

 

そして、いきなりサンジの体は引きずり起こされ、ゾロの胸に背中から抱きしめられた。

小刻みに痙攣する背中。

激しく上下する肩。

荒く乱れた呼吸。

弛緩しながらも、強張った全身。

震える唇はまだ固く、真一文字に結ばれている。

 

優しい抱擁は一瞬だった。

 

イカせるつもりなど微塵も無い、一方的な攻めがさらに続く。

秘部が、ゾロを欲して熱く濡れているのにゾロはそれを無視して、ただ硬くなった自分のものを擦り合わせるだけだった。

 

 

 

 

 

もう

 

 

 

 

堪えられない

 

 

 

 

 「…う…うう…。」

 

サンジの唇が、獣のようなうめきを漏らした。

うめくような声は、やがて、小さなすすり泣きになり、そして

 

 「…ゾロ…ごめん…ゾロ…。」

 

蚊の鳴くような、小さな声。

 

 「……ゾロ……なァ…悪かったよ…謝るから……謝るから……。」

 「………。」

 

ぽろぽろと、固く閉じたサンジの目から、涙がこぼれる。

 

悦びの涙ではない。

明らかな、自身の敗北への悔し涙だ。

 

ゾロの手が止まった。

止まって、そして冷たいまでの低い声が

 

 「悪かった?」

 

と、つぶやいた。

サンジの目から、堪えきれずに涙が溢れて落ちた。

 

畜生、と、叫びたかったが、もうその気力も無い。

 

今はただ、イキたい。

ゾロに愛されて、絶頂を迎えたい。

 

欲しい

 

だから

 

 「…ああ…!謝るから…!だから…だから…もう…!」

 「………。」

 「…ゾロ…ごめん…ごめ…。」

 

と、ゾロはようやく、その重い口を開いた。

 

 「何を謝ってんだ?」

 「………。」

 「オレが何を怒ってるのか、それを分かってて詫びてんのか?」

 「…え…?…だって…それは…。」

 

震えながらうろたえるサンジの唇を、ゾロはようやく吸った。

ゾロ自身、我慢に我慢を重ねてやっと、という勢いのキスだった。

 

 「…連中に、いちいちツッコまれるたんびにうろたえて、反応しやがって!!」

 「え…?え…?え?」

 「オレぁな、テメェだけに腹立ててんじゃねェ。連中にも腹立ててんだ!

いくらオレ達の関係が特殊でも、もういい加減にしろと言いたくなる。

つーか、おいコック!テメェがあんまり反応しすぎるから、ナミもロビンも面白がって、オレ達をからかってテメェを突っつくんだ!

おまけにそこに、今度はフランキーまで加わりやがって!」

 

サンジの息は、まだ乱れている。

ゾロの言葉の意味を、理解する思考力も低下していた。

そのサンジの両肩を掴み、真正面からその目を捉え、ゾロは叫んだ。

 

 「オレとのことは、テメェにとってそんなに恥か!?」

 「!!」

 

 

 

ゆっくりと

サンジの思考が戻ってくる。

 

 

 

ケンカの原因なんか、もうなんだっていい。

つまらない衝突の全てが、痴話喧嘩などではない。あるはずない。

なのに、オレとゾロのケンカをいつも、みんなは『夫婦喧嘩』『痴話喧嘩』『犬も食わない』と笑う。からかう。

 

そのことを

 

オレはいつもどこかで恥じていた。

 

 

 

 「…ごめん…。」

 

どうしろって?

もうそれしか、言葉を思いつかねェ。

 

ゾロの手が、サンジを力の限り抱きしめる。

涙に濡れた、子供のように擦れた声が答えて言う。

 

 「ゾロ好きだ。」

 「…んなこた、よくわかってる。アホ。」

 

深いキス。

背中を滑る手が、また熱い快楽になる。

 

お前が欲しい

 

サンジが、そう言葉にしようと思った瞬間

 

 「我慢できねェ…!挿れていいか…!?」

 

ゾロが叫んだ。

真っ赤な顔。

本当に、もうこれ以上辛抱できないという顔。

そして、答える暇も与えず一気に奥まで

 

 「んぁ…ッ!ああああああああっっ!!」

 

悲鳴が、部屋中に響き渡った。

激痛に放たれた悲鳴ではなく、それはまさしく歓喜の声。

 

同時に、言葉にならない、うめき声のようなゾロの溜め息が漏れた。

 

 「…ああ…やっぱ…こん中がイチバンいい…。」

 「…オヤジ発言…。」

 「しょうがねぇだろ、本心だ。…動くぞ。…ちょっと派手に動いていいか…?こっちももう限界だ…!」

 

ひくっ、とサンジの喉が鳴った。

座ったまま正面から深く繋がれて、激しく揺さぶられる。

 

 「あっ!あ…あっ…!!」

 

ようやく叶えられた快感に、サンジも声を挙げた。

オレも、もう我慢なんかしねェ。

 

 「ゾロ…!ゾロ!ああ…!」

 

抱えられ、揺れながら、サンジも固くゾロの頭を抱えて自ら腰を振る。

ゾロが、虎のように呻きながら

 

 「…スゲェ…イイなんてもんじゃねぇ…!堪んねぇ…!」

 

サンジが、薄く目を開けてゾロを見つめる。

自分から、キスを求めて、頬を包んで顔を寄せる。

答えるゾロの、絡みつく舌が火のように熱い。

サンジの指先から、ゾロの熱が伝わってくる。

ゾロの顔も真っ赤だ。

一滴の酒も飲んでいないのに、酔いしれたような目。

 

自分が、この男にこの表情をさせているのだ。

 

そう思った瞬間、サンジの瞳からまた涙が溢れた。

その涙を見たゾロが、口惜しそうな顔で吐く。

 

 「ああ、畜生!!んなツラされたら、もっと泣かせたくなるじゃねぇか!!」

 

そして

 

 「オイ、コック!テメェ、謝るならついでに、もうひとつオレに謝れ!」

 

激しく揺さぶり、今にも互いに絶頂を迎えんばかりのタイミングで、ゾロは叫んだ。

 

 「…え…?…あ…ああ…!」

 「テメェが…っ…思ってるほど…オレはテメェのことを軽く考えちゃいねェぞ…!!」

 「!!」

 

ゾロが、深く息を吸う。

次の瞬間

 

 「クソ…!ダメだ!イク…!!…コック…ケツだけでイケるか…!?」

 「ん…んん…ッ!」

 

サンジは激しく首を振った。

横に

イクことはできるとわかっていたが、それでも、そこにもゾロの熱を感じてイキたかった。

ゾロの手がサンジを捉えて激しく扱いた。

空いた片方の手は、サンジの腰をきつく抱え、律動にあわせて引き寄せ続ける。

 

 

 「…サンジ…!」

 

 

叫んで、ゾロはサンジを固く抱きしめた。

結び合った部分をさらに深くして、突き上げた瞬間、熱いものがサンジの中で弾けた。

かすむサンジの目に、歯を食いしばり、目を固く閉じて絶頂を迎えたゾロの顔が映る。

 

オレだけの顔

 

愛しい顔

 

オレだけの もの

 

ガクン と、ゾロの体が沈み、ソファの背もたれに全身が投げ出された。

力尽きながら、それでもサンジを抱いた手の力は変わらない。

 

ハァハァと、肩で息をしながら、ゾロは尋ねる。

 

 「…すまねぇ…イケたか…?」

 

小さくサンジは笑った。

 

今、気がついた。

 

コイツも結構、ヤってる間に、オレに謝ること多いよな。

 

サンジは黙って、ゾロの腹を指差した。

ゾロが見ると、胸から腹にかかるあの傷を伝って、白い体液が滑り落ちていた。

 

 「ん。」

 

サンジを抱きしめる、ゾロの一瞬の嬉しそうな顔。

 

そして、幸福に酔うサンジの耳に、いつものゾロの声が届いた。

 

 「サンジ。」

 「…うん…。」

 「テメェがどう考えていようが、オレの方の考えはひとつだ。テメェはオレの恥なんかじゃねェ。テメェはオレの。」

 「………。」

 

 

 

 「誇りだ。」

 

 

 

なんだってこう

 

 

コイツは人を泣かせるのが上手いんだ…?

 

サンジがうなずくのを見届けて、ゾロは、またいつもの悪態をつく口調でさらに言った。

 

 「いいか?もう言ったからな!?ちゃんと聞いてたな!?」

 「…ああ、聞いた。」

 「よっく覚えとけ!!こんなこっ恥ずかしいこと、もう2度と言わねェ!!」

 「あ〜〜、ハイハイ。わかったわかった。」

 

自分の胸に顔を埋めて、赤くなった顔を隠すゾロを、サンジは優しく抱きしめた。

 

 

 

 「…ありがとう…。」

 

 

 

 

 

恥ずかしい なんて

 

もう2度と思わない。

 

それがどんなに不道徳でも

 

オレが愛してるのは やっぱり お前だ。

 

 

 

 

 「ゾロ。」

 「ん?」

 「オレも。」

 

 

 

 

広げた両腕の中に、ゾロの体を包んでサンジははっきりと言った。

 

 「お前がオレの誇りだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいまぁ〜〜〜。あ〜〜〜楽しかった!」

 

ナミとロビンが帰ってきた。

2人とも、出掛けた時とは違う服。

両手にたくさんのショッピングバッグ。

 

 「おかえりなさぁ〜い!ナミさんロビンちゃん!待ってたよぉ〜〜〜ん!」

 

サンジが目をハートにして、くるりんと1回転しながら出迎えた。

2人の手から荷物を受け取り

 

 「お茶淹れるからね。ICE or HOT?」

 「あたしはアイス。オレンジペコがいいわ。」

 「私はホットでコーヒーを。ブランデーを落としてくれる?」

 「イエッサー!」

 「サンジくん、ずっと船に居たの?」

 「ああ、買出しには行ったけどね。」

 

と、船首甲板の方からルフィの笑い声がした。

 

 「ルフィも帰ってるみたいね。」

 

ロビンが言った。

ウソップとチョッパーと、フランキーの声もする。

そこに、ゾロの笑い声も混じっていた。

 

 「あら、ゾロも戻ってるのね?あららら〜?もしかしてサンジくん?ずっと一緒だった?」

 

からかうように尋ねるナミに、サンジはにっこりと微笑んで

 

 「はい。」

 

と、答えた。

 

その笑顔が

 

あまりに自信と幸福に満ちていたので

 

 「!!」

 

からかったつもりのナミの方が、少し慌てて赤くなってしまった。

 

 「ウフフ。」

 

ロビンが笑う。

ナミも笑って

 

 「反省したみたいね?サンジくん?」

 「ええ、たっぷり。」

 「ごちそうさま。」

 

ロビンの言葉に、サンジはまた微笑んだ。

 

 「ナミさん、明日の出航の予定は?」

 「変更なし!潮に乗って島を離れましょう。全員夜明け前に起床よ。」

 「了解。野郎共に伝えてきます。」

 

サンジは2人の前にカップとグラスを置いて、甲板へ出た。

心地よい風。

 

大きく、息を吸った。

潮の香りが胸いっぱいに広がる。

 

サンジは、水平線の向こうを見つめた。

こちらを優しく見つめる、ゾロの向こう側にある海の果てを。

 

明日、またここから旅が始まる。

 

心の中に、この誇りを抱いて。

 

 

 

END

 

 







『サンジが泣くまで攻めるゾロ』

書いてもいいかな? と、友R(ゾロル)に言ったら

「そんなのアナタ、いつも書いてるじゃないのよ〜う!」

と、泣かれました。



ゾロに泣かされるサンジ

ルフィに泣かされるサンジ

チョッパーに泣かされるサンジ(意味違う)



…ええなぁ…(鬼)



ワンパターンも磨けば光るんだ。

磨こう。





(2007/7/7)








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