……あ〜……あったけ……気持ちいい……まだねむ…… ……ん…？…なんか明るい……朝かァ……起きねェと… …今日シフト何番だったっけ……て、ああ…店休みだ…ここ合宿所… …今日…ああ、午後からでいいんだった……今何時だ……？……？……？ 「…ん…？」 なんか すっごい気持ちいんだけど…？ 「………！！？」 目の前に ゾロの顔 「！？！？！？！？」 ど、どういう状況！！？ 少し身じろいで、目だけで周りを見回した。 いつもなら左に見えるはずの窓が右にある。 おれの部屋じゃねェ。ゾロの部屋だ。 夕べ、あのままここで寝ちまったのか。てか、酔いつぶれたのか！？ で？なんで？ なんでおれ ゾロに抱かれて寝てるんだ！？ 狭いシングルベッドの上、しっかり肩まで布団かぶって、 おれ、ゾロにしっかりすっぽり抱えられて寝てる…！！ 「！！！！」 思わず、動かせる腕で探れる部分を探った。 「…あ、着てる…。」 カットソー…着てる…えと…下………！？何でパンツだけだ！！？ 頭だけ、ちょっと上げると、ゾロが座ってたソファの背もたれにおれのスキニーのデニムが引っかかってた。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！？」 ちょ やばくね！？ やばくね！？ やべェだろ！？ 「………っ！」 ……あ。 別に 何かされたよな様子 ねェな… いやいやいや！！ するワケねェだろ！？男同士で！！いや！男同士でもそういうのあるのは知ってっけども！！ てか、まさかこいつそういう趣味！？そういう趣味！？ ばっくん ばっくん ばっくん 昨日の比じゃねェ！ 破裂する！爆発する！ 「…ん…。」 起きた！？ 「…………。」 「〜〜〜〜〜！！」 至近距離の寝ぼけ眼が、薄く開いておれを見た。そして 「………何時だ？」 「………あ……えと……。」 腕、時計してた。 「……６時…ちょっと過ぎ……。」 「……そか……。」 呟いたと思ったら 「！！？」 また、抱き直された。 ぎゅぅっと、さらに力がこもる。 そして 「……もう少し寝てろ……。」 爆弾処理は―――――ん！！ 密着度が増して、ゾロの唇がそのままほっぺたにくっついちまった。 俗にいう チューな状態……。 ああああああああああああああ……！！ けど だけど 「……うん……。」 あー… あったけ 男臭ェけど、嫌な臭いじゃねェ 気持ち良さの勝ち…。 「うっわ！ヤベ！！」 ゾロの声と共に、勢いベッドから落っことされた。 「痛ってェ！！！！」 「11時…うわ…路上すっぽかした…。」 「…へ？」 サンジの意識が、はっきり覚醒したのとゾロが大きく肩で息をついたのは同時だった。 ゾロは時間割を開いて 「…あー…学科もあった…３時間サボっちまった…。」 「………ありゃぁ………。」 ゾロがおれを見た。 バツの悪そうな顔。 「…事務所行ってくる…。」 「…いってらっしゃい。」 教習セット一式抱えて、頭掻きながら出て行こうとしながら、ふとゾロの足が止まった。 「？」 ゾロはすごく真面目な顔で、重い口調で 「…てめェよ…。」 「！！」 ドキ 真面目な顔が、瞬間ドヤァな笑顔になり 「パンツ地味だな。」 「セクハラかぁあーっ！！」 まだパンツ1枚の下半身、毛布巻いて叫んだ。 笑い声と共にバタンとドアが閉まってから 「………。」 チラ ネイビーブルーのボクサーパンツ。 持ってきたパンツの中じゃ一番おとなしい柄。 「余計な御世話だ―！！」 デニムを履いて、一旦自分の部屋に戻って顔を洗って歯を磨いて、 髪に櫛を通してからロビーへ降り、事務所を覗くと 「……だから寝坊には気をつけてって言ってるのに。」 「しょうがねェだろ。もう済んだんだ。組み直してくれ。」 「簡単に言わないでください。結構大変な作業んですよ。」 たしぎちゃんだ…。 あれ？ なんかずいぶんフランクな話し方だな…。 「あら、サンジさん。」 たしぎちゃんがおれに気付いた。 「あ…お、おはよう。」 「おはようございます。でももうお昼ですよ？」 「そ、そうだね…。」 「そうだ。サンジさんの時間割、組み直した分出来てます。」 「ありがと…。」 ゾロが、カウンターから立ち上がる。 「…ちっ…てめェにちょっと差ァつけたと思ったら…。」 「……なんだと？」 たしぎちゃん 小さく笑って、おれに会釈してカウンターを離れた。 間違いない ゾロとたしぎちゃん、初対面じゃないんだ。 初日、ゾロが「ロロノアです」って名乗らなくても、たしぎちゃんはゾロを呼んだ。 あの「ロロノアさん」は「ロロノアさん？」じゃなかった。 「今頃来たの？ロロノアさん」そんなカンジの「ロロノアさん」だった…。 なのに、まるで知らない相手と話すみたいに、事務的な会話を作ってる。 「………。」 「おい、サンジ。」 いきなり てか、初めて名前で呼ばれた。 「な、なんだよ？」 「午後イチなんだ？」 「…えと…学科だな…。」 「20番か。同じだな。メシ食っとこうぜ。」 「…ああ…うん…。」 ちょうど午前の時間割が終わったところで、食堂は結構混み合っていた。 ビュッフェスタイルの食事をするにはちょっと料理の置き場が遠い、 壁際の席が空いていたのでそこに座った。 「メシがそこそこ美味いのが嬉しいよな。」 おれが言うと 「腹に入りゃ一緒だ。」 ゾロが言った。 「…コックに吐くセリフじゃねェなァ…。」 「ああ、そうだな。悪ィ。」 小気味の良い食べ方をする。 がっつく訳でもないが、勢いがいい。 結構姿勢よく、きれいな三角食べをする。 箸の持ち方も正しくきっちりとしている。 結構、いいトコの坊ちゃんなのかもしれない。 食事のマナーがしっかりしてる。 きっと親の躾がいいんだな…。 「なァ。」 「あ？」 「…なんで…おれ…てめェと寝てたわけ…？」 ゾロはちょっと考える顔をして 「あァ。」 と、また言った。 そして 「てめェがおれのベッドで寝ちまったからだろうが。 あの部屋で他に寝る場所あるか？床しかねェだろ？」 「……起こせばよかったじゃねェか……。」 「起こしたぞ。起きなかったんだ。」 「あ〜…そりゃどうも………で…なんで…下…脱がしたんだよ……？」 下 という言葉が小さかったのか 「あ？何脱がしたって？」 ゾロの声が大きかったせいで、隣のテーブルにいたおばさんがぎょっとしてこちらを見た。 「ああ、Gパンか。」 「声でけェよ！！」 「てめェが自分で脱いだんだろが。」 「あァ！？ウソをつけェ！！」 「ついてどうする？飲んでる最中に窮屈だっつって、てめェで脱いだんだ。おれが脱がすか。 まぁ、あんな細っこいGパンじゃ無理ねェからな、ほっといた。」 「止めろ！そこは頼むから！！」 「男同士で恥らいもねェだろ。」 「〜〜〜〜〜！！…じゃ…なんで…てめェ…おれ…抱…。」 そこは、ゾロもすぐに感づいたのか 「…あァ…いい抱き枕な感じがしてよ。 抱き枕いいぞって聞いてたが…ありゃマジだな。今度買うか。」 「枕ァ！？」 こいつ こいつこいつこいつ！！ 「…あれは覚えてるか？」 「あァ！？何を！？」 ゾロの言葉に、思わず怒鳴り返す。 まだ何かあんのか！？ 「てめェの料理食わせろってのは。」 「！！」 「あァ…その面は覚えてるな。」 「……マジ……？」 「マジだ。7月末。予約入れとけ、行くからな。」 「……うん。」 思わず顔を伏せた。 なんかニヤける…。 マジ、うれしい…。 皿の上のチャーハンを平らげて、「うし！」とゾロは席を立った。 おかわりか。 まっすぐ、カレーのブースに歩いて行った。 と ♪ ♪ ♪ 珍しいくらい定番の着信音。 テーブルの隅に載っていた、ゾロの携帯が鳴った。 液晶が点滅して、登録されている発信者の名前が表示される。 「……！！」 『 ナミ 』 画面に表れた、女の子の名前…。 思わず、手を伸ばしかけた時 「！！」 ゾロが携帯を拾い上げた。 てんこ盛りのカレーをテーブルに置きながら 「おれだ。」 仏頂面のまま しばらく、相手が何かを話しているのを黙って聞いて そして 「ああ、修検は受かった。…ちっと予定よりは遅れるかもしれねェ。」 「………。」 「…わかった。大丈夫だ。それまでには戻る。ああ、じゃな。」 携帯を置いて、ゾロは何事もなかったかのようにカレーを食い始める。 女の子の名前 ナミ さん 大丈夫だ それまでには 戻る ちくん なんか、痛い。 「……彼女か？」 「…あァ？」 ゾロが顔を上げた。 「今の電話…ごめん、見ちった…。」 「………。」 「�爛淵澂瓠弔気鵝�」 「あァ。ナミはそんなんじゃねェ。」 「…ふーん…。」 『ねェゾロ！いつ帰ってこられるの？半月も寂しいじゃない！』 ああ、修検は受かった。…ちっと予定よりは遅れるかもしれねェ。 『見たいって言ってた映画どうするの？終わっちゃうわよ？』 わかった。大丈夫だ。それまでには戻る。 『じゃ、卒検受かったら連絡して。すぐよ？』 ああ、じゃな。 そんなカンジかな…。 あれ？ なんだ？ なんかモヤモヤする…。 さりげなく紳士 けっこうお育ちよさそうだし 顔だってそこそこいいし いかにもスポーツマンの均整取れた体格 モテるよな モテねェはずねェ 彼女のひとりやふたり、いないはずねェ もしかしたら、もうたしぎちゃんともかなり親しくなってるってことか？ 「…タラシ…。」 「あァ？なんか言ったか？」 「……別に……」 なんか なんか気に入らねェ。 無意識に、席立ってた。 「おい、もう行くのか？」 カレーを3分の1くらいまだ残しているゾロが顔を上げて尋ねた。 「…う、うん…タバコ…吸ってくる…先…行っててくれ…。」 「…残ってるぞ。」 「…あ…うん…。」 一気にかき込んで、食堂を出た。 なんだ？ なんか 涙出る…。 NEXT BEFORE （2012/3/21） License!!‐TOP NOVELS-TOP TOP