BEFORE


翌日 おれが路上教習をやっている間にゾロは卒検を受け、合格し、学科の間に  「………。」 301号室 空っぽになっていた。 夕べ、愛してもらったベッドのシーツもすっかりはがされていた。 窓も全部開け放たれて、ゾロの匂いは、もう残っていなかった。  「…卒検…がんばるかァ…。」 ああ…いい天気だ…。  「あ、サンジさん。明日卒検ですね。」 たしぎちゃん。 1階ロビーの自動販売機の前で声をかけられた。  「ありがとう…何とかここまで来たよ。」  「頑張りましたよね。延長もそれほどなかったし、優秀な方ですよサンジさん。」  「あはは…。修検落ちたけどね。」 と  「たしぎちゃん!」 ロビーから中年の男が入ってきた。 見たことあるな。 確か、二輪の教習所のラウンジで、ゾロの運転が上手いって褒めてた教官だ。  「たしぎちゃん!ロロノア君…卒検終わったってホントかい?」  「ええ、昨日。」  「頼んでおいたもの…どうなったかな?」  「はい、預かってますよ。」 なんだろ? たしぎちゃん、事務カウンターの向こうにある自分の机の上から、1冊の雑誌を持ってきた。  「はい。すみません、おまたせして。」  「いやいや!教習中は、ミーハー禁止って言われてたからねェ!はははは!!」 なんだ?  「いや、しかし驚いたよ!あのロロノア・ゾロがたしぎちゃんの甥っ子だったとはねェ!!」 え?  「子供の頃はとても手に負えない悪ガキだったんですよ、あの子。」 え? ちょっと 今、なんて言った? たしぎちゃん…?  「…甥っ子…?」 たしぎちゃんは、バツが悪そうに  「一番上の姉の子なんです、あの子。」  「………えええええええええ!?」 二輪教官が小さく笑った。 そうだ、それからミーハーって… 教官が手にしていたバイク雑誌。 あれ? いつだかゾロの部屋のテーブルに載っていたのと同じじゃねェか? ………。 あれ? 表紙… その緑色って…  「…ゾロ!!?」 思わずひったくっちまった。 ゾロだ。 表紙を飾っているライダースーツ。 間違いない、ゾロの野郎だ!! あの時、一瞬で見えなかった。 ただ、バイクの雑誌だなと思っただけで…。  「サインを頼んでたんだよー。MotoGPのトップレーサーロロノア・ゾロ!  有名だよ?知らないのかい?」 教官は嬉しそうに言った。 バイクレーサー!?ゾロが!? 雑誌の表紙二度見。 『鈴鹿MOTO GP201X:日本勢圧倒!優勝!チームムギワラ:ロロノア・ゾロ独占インタビュー!』 ちょっと待て!!  「って…こいつ!!免許もねェのに!?なんで!?レーサー!?」 たしぎちゃんが肩をすくめて笑った。  「ですよねー…あの子、免許持ってなかったんです。」  「いやぁ、だってロロノアは子供の頃からコースで走ってたんだろ?  コースで走る分には、免許は必要ないからねェ。」  「そ、そうなんすか!?」  「そうなんです。国内外のレースで忙しくて、公道を走れる免許を取りに行けてなかったんです。  やっと少し時間ができて、それで私のセンターに来たというわけで…。」  「いやぁ!初めは驚いたよ!!教官連中も、教えることないだろ?って逆に緊張しちゃってさぁ!」  「私が何度免許を取りに来なさいって言っても、今さらって言ってガンとして来なかったんです。  歳が行けば行くほど、無い方がずっと恥ずかしいのに…ロードレーサーがですよ?バカですよねー?」  「………。」  「公道を走れないから、どこへ行くにも何をするにもチームの人や姉…あの子の母親任せで、  みんなから『いい加減にしろ!』って、無理やり放り込んだんです。」  「でも、よかったよな!7月から海外遠征だっていうだろ?  それに間に合わせなきゃならねェってこっちも必死だった!!  あっはっは!じゃ!ありがとーたしぎちゃん!」 そっか… ゾロが、二輪の教習所で注目集めてたのは、プロのレーサーだったからなんだ。 しかし プロのくせに免許がないって…。 悪ィけど…笑える…。 そうかぁ プロのレーサーか どうりでカッコいいはずだ。 鍛え方が違うと思ってたけど、そりゃそうだ。 無駄なとこなんかひとつもない体だった。 強くて、熱くて…。 知ってる人は知ってる有名人。 そんなヤツに、一晩だけでも『好きだ』って言ってもらった。 一晩だけでも、愛してもらった。 めちゃめちゃ熱くて激しくて 優しい あの瞬間だけは、確かにゾロはおれだけのモンだった…。 もし 本当にヤツが店に来たら その時は笑って「ようこそ」と迎えよう。 隣に誰がいても、心からの笑顔で、「いらっしゃいませ」と言おう。 本気で惚れたから 迷惑はかけたくねェ…。 半月前、ここに来た時には考えもしなかった。 こんな想いを知るなんて…。 卒検 一発で合格した。 まァ、実技だけだからな。 学科もここで受けて、すぐに免許がもらえるのかと思ったら、 住んでいる住所地域の免許センターで学科の本検受けて、 合格してから交付なんだってその時点で初めて知った。 たしぎちゃんが必死に笑いを堪えてたな…。 いや、たしぎちゃんだけじゃなかったな…笑ってたの。 すいませんねェ… なんせ、料理人目指して世間から背中向けて生きてきたもんで…。 日帰りのツアーは断った。 参加するのが野郎ばっかりだって聞いたせいもある。 何より、ひとりっきりの合宿所に、長居する気になんかなれなかった。 たしぎちゃんに、「さよなら、お世話になりました」を言って、 「ゾロによろしく」を言って、新幹線の駅までのバスに乗り込んだ。 もう 二度と教習所には来ないだろう。 普通免許だけでおれは十分だ。 通うことがあっても、もうここには来ない。他の場所を選ぶ。 新幹線の自由席。 腰かけてすぐに目を閉じた。 さぁ 日常に帰るぞ いつものおれに ゾロを知らないおれに戻るんだ。  「………。」 目頭が熱い。 勝手に何かにじんでくる。 泣くかよ。 こんな他人様だらけの場所で。 泣いて…たまるか…。 本検 いつ受けに行こうかな… 日常に帰ってきた。 店の改装が終わり、新規オープンでてんてこ舞いの毎日が続いた。 質を落とすのを良しとしないオーナーシェフの意向で、最大席数の70%だけ稼働させている。 それでも忙しい、嬉しい限りだ。 めいっぱい働いている間は、何もかも忘れていられる。 ただ、そのおかげでまだ学科の本検を受験しに行けてない。 次の休みには何が何でも……あァやっぱ今日も行けなかった…。 そんなことを繰り返しながら、季節は夏になった。 7月のカレンダーも残り少ない。 ふと、手が空いたりすると、あの緑の頭が目の前にちらつく。 約束の7月がもうすぐ終わる。 いつ来るともわからねェファジィな予約。 …こういうのは予約とは言わねェよ。 来てほしいとも思う。 来なくていいとも思う。 そう簡単に、次の恋に移れるほどおれは器用じゃねェんだと思い知った。 そこそこ女の子とも付き合ってきたのに、別れたことも一度二度じゃないのに、 なんで、こんなに苦しさが続くんだろうな…。 こんな時、車でかっ飛ばしてスカッとするってやつをやってみてェよ。 夕方 まだ、本格的なディナーには早い時間。 しかし、うちの店はこの時間帯だけのディナーメニューがある。 それを目当ての客も多い。 そこそこの忙しさにどっぷりつかっていた時だった。  「おい、サンジ!」  「あァ!?なんだ!?」 厨房とフロアの境のカウンターから、ウェイターが顔を出しておれを呼んだ。  「客だ!お前を呼んでる!」  「あァ!?客だァ!?誰だよ!?このクソ忙しい時に!!」  「聞いて驚け!MOTO GPレーサーのロロノアだ!!」  「!!?」 ガンガラガッシャーン!!! 振っていたフライパンが床に炸裂する音。 オーナーの雷鳴みてェな怒鳴り声が厨房に響いた。 ウソ だろ? すっかり すっかり忘れてた いや、1人になると、静かになると、町でバイクを見ると、いつもいつも思い出してた。 今は、たまたま、思考の中から抜けていた。 そのゾロが ゾロが マジで来た!?  「早くしろよ!お前、ロロノアとどこで知り合ったんだよ?」  「………。」 シェフコート、ボタンかけ直して、パンと頬を叩いた。 ゾロ ゾロ ちょうど1か月ぶりだ。 ああ 心臓 すげェ鳴ってる ばっくん ばっくん ばっくん あの時みてェに…すげェ叩いてる。  サンジ 好きだぜ 耳の奥で、あの時の声が甦る。 大きな手で、体中撫でてくれた。 熱い唇で、体中キスしてくれた。  挿入れるぞ 乱れた息で、乱暴な口調で、でも優しい声で囁いて 繋がった時 奥まで全部満たされた時 このまま死んでもいいと思うくらい幸せだった。 酔いもあった。 互いに何度イったか覚えてねェ。 疲労と酔いで眠くて、寝たくねェのに堪えられなくて、必死になって頑張ってすがっていたら  眠いなら寝ちまえ。離れねェから。  明日帰るが、必ずお前の店に行くからな。  待ってろ。 あの言葉を、目覚めた朝から忘れようとしてた。 けど、忘れられるわけがねェ…。 必ず行く その言葉を、お前律儀に守りやがったのか…。 気合を入れろ、おれ。 顔を見たら泣いちまいそうだ。 だが、泣いてたまるか…! そんなみっともねェマネ、あの野郎にできるかよ! 一方的に惚れちまって、憐れまれて一晩だけ抱かれた野郎。 考えてみたらめちゃくちゃ自分に腹が立つ!! しれっとやってきたあいつにもめちゃくちゃ腹が立つ!! 大きく息を吸って、覚悟を決めて、勢いフロアに出た瞬間。  「おおおおおおおお!!お前がサンジか――!?」 高い、少年のような声が響いた。  「へぇええええ!!」  「ほおおおおおお!!」  「ヨホホホホホ!!」  「おおお!こりゃあ面食いゾロが惚れるだけあるな!!イケメンってやつだ!!」  「はしたないわよ、あなた達。少し声を落として。」  「初めまして―――!!」 一斉に降ってきた歓声。 何? 何が起きた? 周りの客も、店の連中も、呆気にとられてこっちを見てる。  「……あ?」 我に返って、真っ先に目に入ったのは黒のカジュアルスーツに身を包んだゾロだった。  「……ゾロ……?」  「よぉ。」 軽い まるで、昨日別れた相手に今日もまた会いました的な挨拶。  「…え〜〜〜っと…?」 やっと、少し落ち着いて目の前のテーブルに座っている面々を見回した。 ゾロと同じテーブルに座っている、その他7人。 中でも、おれに食いつかんばかりに身を乗り出している、黒髪のガキ。  「…なんだ…?」  「おっす!おれはモンキー・D・ルフィ!!世界最速になる男だ!!」  「言ってろ。それになるのはこのおれだ。」  「うっせェ!ゾロ!おれがなるんだ!」  「はいはいはいちょっと黙ろうねー。よろしくな!おれがチームの要!  メカニックキャプテン・ウソップ!」  「誰が要でキャプテンだ。メカニックチーフのフランキーだ。」  「マネージャー、主に渉外担当のニコ・ロビンよ。」  「おれ!チームドクター!トニートニー・チョッパー!よろしくな!サンジ!」  「ヨホホホホホ!!広報担当という名の雑用!ブルックでーす!!」  「うるさくてごめんなさいね〜。チームの会計担当、ナミです!  よろしくサンジくん!!」 ナミ  「え?…あ、あなたがナミ…さん?」 可愛い。 すっげェ美人。 もう1人の女性ロビンちゃんも、とんでもねェ美人だが、ナミさんにはそこに愛らしさがある。  「え?あたしを知ってるの?…あ!ゾロ!何を言ったのよ!?  「はァ?」 と、鼻が異様に面白い形状をしたウソップが笑いながら  「うちのチームの銭亡者、どケチな財務大臣魔女ナミ!いっつも泣かされてるもんなァ。」  「なんですってェ!?ウソップ!あんたの領収書、今後一切受け付けないわよ!!」  「あああああああ!!ごめんなさいーい!!」 ルフィという名の黒髪が、嬉しそうに仲間を眺めながらサンジに振り返る。  「これがおれの仲間!チーム・ムギワラだ!!」  「………。」 ゾロを見る。 にやっと白い歯が見えた。  「………。」 そうか…。 チームの仲間…。 ?彼女?じゃないんだ…。 心の奥でほっとした。 精一杯平静を保って見せたけど、力が抜けてふらつきそうだ。 レーシングチーム、【チーム・ムギワラ】は、ルフィのじいさんが所有し経営するチームらしい。 メンバーみな個性的で、少数精鋭でありながら各レースで良い成績を収めているそうだ。 メインのレーサーはルフィとゾロ。 ルフィはまだ19歳だと聞いた。 そしてルフィも  「あー、おれも早く免許取りに行きてェなー!なァ!ナミ!」  「なんであたしに同意を求めるのよ?」  「お前乗っけて夕日に向かって走る為だろ!」  「ひとりでどーぞ!第一あんたの運転じゃ怖くて乗れないわ!」 あ。 わかった。 そういう…。 じゃあ ナミさんは その時、厨房からオーナーの声がした。 挨拶がすんだらさっさと戻ってこいと言っている。  「じゃあ…みなさん、ごゆっくり!!  ラストにレディにはデザートを、コースとは別にサービスしますよ!」  「うわぁ!嬉しい!」  「まァありがとう。」  「サンジ!サンジ!おれには!?」 ルフィが食いつく。  「なんで野郎にサービスしなきゃならねェ。」  「なァ、この料理、全部サンジが作ったのか?」 かみ合わないルフィの問いに、テーブルを見る。 コース料理のメイン。 グランドメニューの数品、確かにおれの料理だ。  「ああ、そうだ。それがどうした?」  「ししししっ!!」 あ? なんだ、この笑い。  「よし決めた!!サンジ!おれの仲間になれ!!」  「はァ!?」  「お前をおれの仲間にする!!決めた!!  今日からお前はチーム・ムギワラの専属コックだ!!」  「はァァァァァァァァ!?」  「ゾロの目は確かだったという訳か!めでてェな!」  「よろしくサンジー!」  「コック加入にカンパーイ!!」  「よろしくねーサンジくーん!」  「ちょ…!!勝手に決めんな!!どういうことだ!?ゾロ!?」 ゾロの「ドヤ顔」が、こんなに憎たらしいと思ったことはない。 なんだ? なんだ? なんなんだ!?この展開は!? この1か月のおれのこのモヤモヤ。 こいつのせいでずっと悩んで泣いて苦しんだこの1か月!! 免許だって、まだGETしてねェんだぞ!コノヤロー!!←ここ完全に八つ当たり。  「お前と一緒に走る。」  「…え?」  「決めた。だからここ辞めて仲間になれ。」 しばらく、頭が働かなかった。 ただ、そう言ってもらえたことが嬉しくて。  「ありがと…。」  「……?」  「……十分だ……。」  「あ?」  「…ごめんな…一方的に好きになっちまって…。」  「あァ?」  「…ナリユキだから…何もなかった事にしていいんだ…だから…。」  「…何が一方的だって?」  「………。」 ゾロが席を立った。 ちょ おい やめろ みんな見て……  「好きだ。」  「………。」  「…合宿所1週間目で、てめェに惚れたって自覚した。」  「え?」  「二輪の教習所、目が合った時に落ちた。」  「………。」 あん時か…。 おれも、あの時初めて心臓バクバクしたんだ…。  「好きだよ。」 ああ ちくしょう うなずくしかできねェ…。 この熱い手に、また抱きしめてもらえるなんて夢みてェだ…。  「いよっしゃあああ!!コックゲットォォォォ!!」 ルフィが叫んだ。 慌ててゾロから飛び退り  「ちょっと待て!それはちょっと待て!!」  「なんでだ!?」  「そう簡単に『はい、そうですか』って問題じゃねェだろ!?」  「簡単だろ!?」  「簡単じゃねェェ!!考えなきゃならねェことが山ほどあるんだよ!!」 すると  「考えること?ひとつだけだろ?」 ゾロが言った。  「はァ!?」 にやり ゾロは笑い  「おれの事だけ考えてりゃいいんだ。」 どやっ  「………っ!!!」  「お!サンジ真っ赤になった!」  「うっせェ!!」 しれっとしてゾロが言う。  「お前、免許取れたか?」  「まだだよ!それがどうした!?」  「本検落ちたのか?」  「受けに行ってもいねェよ!!」  「じゃあさっさと受けてこい。もうすぐ車が届く。」  「車!?なんの!?」  「それにはおれが答えるぜ!にいちゃん!」 フランキーが言った。  「チームの遠征用キッチンカーだ!!お前さんのために用意したんだぜ!!」  「当然!元をしっかり取れるくらい、ゾロとルフィで勝ちまくることを条件にね!」  「勝たなきゃそのまま借金になるの。」  「アナタに来ていただかないと、車そのものが無駄になります!ヨホホホ!」  「勝手に決めないでくれ!!」  「サンジくん!!」  「はい!?ナミさん!?」 ナミが仁王立ちになり、サンジに詰め寄る。  「ここまであなたにしてあげたの。  それもこれも、ゾロがアナタにぞっこんラブになっちゃったせいなのよ?  それなのに!それを!断るって言うの?こ と わ る って 言 う の ?」  「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 これって すでに脅迫じゃねェ? ナミさん にっこり笑って  「明日にでも免許を取ってきて頂戴ね!来月には鈴鹿でレースがあるから!  それに間に合うように身辺整理をよろしく頼むわ!!  そういうカンジで、お店の皆様!よろしくお願いしまぁ〜〜す!  サンジくんいただいていきま〜す!!」  「………あァ。」 いつの間にそこにいたんだオーナー!? てか、雰囲気で承知しやがった!! すげェ… 魔女って あながちウソでもねェかも… こういう人だったのか ナミさん…。  「サンジ。」 ゾロの声に、振り返った。 ああ、もう。 そんな風に笑いかけられたら、もう何にも言えねェ。  「…明日…。」  「うん。」  「休みだから…免許センター行ってくる…。」  「付き合ってやるよ。迎えに来る。」  「…おう…。」 冷静になって考えてみるに おれ めっちゃハズいことしたよな? 店の連中の前で、客の前で、いきなりスカウトされて告白されて脅迫されて。  「ルフィ。」  「おう、なんだ?サンジ?」 よし おれも覚悟を決めた。 ゾロの、こいつらの、勝利の為にメシを作る。 イカスじゃねェか。 ルフィという男に向き直り、言う。  「ルフィ。スカウトした責任、てめェとれよ?」 ルフィはにかっと笑い  「当たり前だ!!」 そして  「ゾロ。」  「あァ。」  「…同じ景色を見て…走って行く。お前と。」 サンジの言葉に、ゾロは大きくうなずいた。  「明日、絶対受かるからな。」  「期待してねェよ。修検落ちるくらいのアホだからな。」  「…この!!」  「まァ、落ちたら落ちたでおれが運転すっから問題ねェが。」 ゾロが言った。 すると  「……何気取ってんのよ、ゾロ。あんただってまだ受かってないじゃない。」  「う。」 ナミさんが言った。  「はぁああ!?」  「言うな!」  「こいつ、3回受けて落ちてるのよ、サンジくん。さっきからやたら偉そうに威張ってるけど。」  「…裏読みとフェイクが多くて混乱すんだよ!!  慣れりゃああんな選択問題屁でもねェ!!」  「だったら!さっさと免許取ってきなさいよ!!」  「言われなくても取ってくらァ!!」  「あ、サンジくん世田谷でしょ?ゾロも試験会場同じだから、明日一緒に取ってらっしゃい!  今度落ちたらシメるわよ!ゾロ!貴重な練習時間、これ以上削らないでちょうだいね!」 いきなりの転職と、いきなりの恋の成就と、いきなりできた仲間。  「さて。」 東京の運転免許試験場は3か所ある。 ここはそのひとつ。 同じ教習所の書類袋をそれぞれ抱えエントランスに立った時、ゾロが少し高い声で呟いた。  「行くか。」  「おう。」 肩を並べて、ステップを上がる。 共に走る為の、これが初めの一歩。 END    BEFORE ここまでお読みいただきありがとうございましたv ツィッターでのふとしたやり取りの中で生まれたネタ【合宿免許】 R2さんからいただきましたvv ツインルームゾロサンではなくシングルルームにしてしまいました; あるさんにお気に召していただけるとよいのですが…。 今回ソフトなエロでご不満かと存じますが、それはまた次の機会に(おい)                     (2012/3/21) License!!‐TOP
お気に召したならパチをお願いいたしますv

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