朝早く、二人はサニーに帰ってきた。 「…ごめんよ、ロビンちゃん。せっかくの楽しいパーティを台無しにしちまって。」 「何を言うの。それより、お父様が助かってよかったわ。」 「ありがとう。意識が戻れば大丈夫って話だから…。まぁ…油断はできないけど。」 「じゃ、どうするんだ?…日本に残るか?」 フランキーの問いに、サンジは首を振った。 「戻るよ。」 「………。」 「おれが今、やるべき事は1日も早く、一人前になることだ。」 「…やっぱり、行くのか…。」 ウソップのつぶやきに 「…もっと売れるタレントになって、フランスロケに来いよ。プライベートでもいいんだぜ?」 「おお!その手があったな!!」 「またサンジとお別れか…。」 「…おいおい、ルフィ。男が泣くな。」 「だってぇ…。やっぱ、寂しいぞ!!」 「………。」 サンジはルフィを抱きしめた。 「おれだって…戻りたくねェよ…。」 ナミが、チラ、とゾロを見る。 だがゾロは黙ったまま、じっとサンジを見ていた。 「ドラえもんがいたらいいのにな…『どこでもドア』で行ったり来たりできるのに。」 「のび太みたいな優しいだけの男じゃ、宇宙飛行士にはなれねぇぞ?」 「わかってるよォ…。」 ぽろっと、ナミの瞳から涙が零れる。 「ナミさん、泣かないで。」 「…でも…だって…。」 「あううううううう〜〜〜〜〜おおお〜〜〜〜〜ううああああ〜〜〜〜〜〜!!」 フランキー…。 「あうあうあう〜〜〜!バカ!泣いてねェよバカ!!おれは悲しくなんかねェぞ! これが今生の別れじゃあるめぇし!泣いてなんかいねェよバカ!!」 「………。」 「…フランキー…サンジが困っているわ…。」 「あううううう〜〜〜〜〜〜;;」 サンジは笑い 「ナミさん、ロビンちゃん…悪いんだけど…おれ、神楽坂にちょっと行ってきたいんだ。」 「え?実家…?」 「…みんなに、今までのこと謝って、親父の事頼んでいきたい。」 「…そうね…うん…わかったわ。」 「だから、荷物頼んでいいかな?」 「…任せて、何時ごろ戻る?」 「成田に2時には着かないといけないから…。」 「高速バス、新宿でしょ?…うわ!時間ギリギリ!?」 「ごめん。」 「ううん!いいのよ!あ、ホラ、じゃすぐに行かないと!!ホラ、ゾロ!一緒に行ってお願いしてきなさい!」 「なんでおれが?」 その一言に、ウソップがキレた。 「お前なァ!サンジのお父さんはお前のお父さんだろうが!!」 「…そうなるのか?」 「信じられない!この男!だからエースに…!あら?そういえばエースは?」 ルフィが答える。 「ああ、エース出張。」 「ええ!?そんな事言ってた!?」 「うん、なんか昨夜下った命令だって言ってた。 ぼーえーきみつ(防衛機密)だから、行き先まで言えねェって。3週間くらいで帰るってさ。」 サンジは驚き 「…お別れ言いたかったのに…。」 「引導渡せられなかったのね。」 「ロビン、ちょっと違う…。」 「…サンジさんにお別れを言うのが辛かったのでは?」 ブルックの言葉に、ナミが 「あたしだって辛いわよ!」 「おれもだ!」 「おれも。」 「あうううううう〜〜〜〜。」 「私もよ。…チョッパーもね。」 「チョッパーは…逢えるかな。世話になっちまった。」 「仕事が終わったら、飛んで帰ってくるわよ。」 「ホラ、サンジ!急げよ!」 「ああ。」 二人を見送り、ナミは言った。 「結局、何の進展も無しにお別れね…。」 ロビンが笑って 「そんな事ないわ。」 「え?」 「見て。」 ロビンが指差す二人の後ろ姿。 「………。」 ナミも、ルフィもウソップもブルックも、フランキーも、それを見て微笑んだ。 しっかりと繋がれた、二人の手。 二人は、駅までの5分の道を歩いていく。 神楽坂の実家は、サンジを暖かく迎えてくれた。 そして、留守の間の事は何の心配もいらないと、声を揃えて言ってくれた。 そして、1日も早く、立派なシェフになってくれと応援してくれた。 ゾロのコトも パティとカルネには話した。 初め二人は驚いていたが、病院での二人の様子に、薄々は感じていたらしい。 「安心しろ、もし旦那が反対しても、おれ達は味方だ!」 その言葉が嬉しかった。 病院に寄った。 まだ、意識は混濁しているが、サンジが声をかけると薄く目を開いてうなずいてみせた。 サンジである事を、わかっている様子だった。 「…今度帰って来る時は…ゆっくり話をしようぜ…。」 うんうんという仕種でうなずき、わずかに指を動かした。 その手を握って、サンジは微笑む。 「…ごめん…。」 「…あうううううう〜〜〜〜おおお〜〜〜あああ〜〜〜ううう〜〜〜〜〜!!」 「…ちょっとフランキー、いい加減にしなさいってば…。」 「うるせェよバカ!泣いてねェよバカ!」 「うううううう〜〜〜〜〜ううううううううううう〜〜〜〜〜〜〜!」 「あいいいいいぃぃぃいいい〜〜〜〜〜ううううううえええ〜〜〜〜!」 「うおおおおおおお〜〜〜〜びええええええ〜〜〜〜〜〜!!」 「ヨホホホホぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜お〜お〜お〜〜〜〜!!」 びーびー泣く男共を横目に、ナミが言う。 「…ちょっと…もぉ、いい加減にしてよ…。」 「うるせェ!ナミィ!!お前ェ冷てェぞ!!…サンジが行っちまうんだぞォ! ……あうぅ…うううう〜〜〜〜うおおおおおおお〜〜〜〜〜〜!!」 「……何よ…あたしだって…あたしだって、必死に我慢してるのよ…っ!」 「…ナミちゃん…。」 「うわぁ〜〜〜〜〜〜ん!サンジぃ〜〜〜〜やっぱり行っちゃヤぁダぁ〜〜〜〜〜!!」 ついにはナミまで泣き始め…。 「おい、てめェら…その辺りでいい加減泣き止め。」 「何よゾロ!アンタが一番冷たいわ!!あああ〜〜〜〜いあいあいあいあ〜〜〜〜んあん!」 「ナミさん…泣かないで…。」 「わかってるわよ!わかってるけど!……あ〜〜〜ん、やっぱり悲しい〜ぃ〜!」 「………。」 ロビンが、ナミの背中をさすりながら 「…元気でね。」 「うん。」 「ロビンちゃんも、幸せに。」 「…これ以上の幸せを望んだら、バチが当たりそうだわ。」 「…いい報せを待ってるよ。」 「…ありがとう…。」 少し頬を染めて、ロビンは首をかしげた。 「さんじぃ〜〜〜〜〜っ!」 チョッパーが抱きつく。 堰を切ったように、ルフィも、ウソップも、ブルックも、フランキーまで 「サンジィ〜〜元気でなァ〜〜〜!!」 「おおおあああ〜〜〜!スーパーなシェフになれよぉ〜〜〜うおお〜〜〜〜!」 「ヨホホホホぉぉ〜〜〜お〜お〜お〜!体は大事にしてくださいねェ〜〜〜!」 「うわぁ〜〜〜ん!!おれの飯ィ〜〜〜〜〜〜!!」 「ぅおいっ!!」 ゾロが、サンジのスーツケースを持ちあげ 「サンジ、行くぞ。」 「…ああ…。」 「うわぁ〜〜〜〜〜ん!!ゾロのバカぁ〜〜〜〜〜!!」 「ずっけーぞ、ゾロだけェ〜〜〜〜〜〜!!」 「うるせェ。」 ナミが、ルフィとチョッパーの頭を両拳で殴る。 「…最後ぐらい、二人っきりにしてあげるって約束したでしょ!?」 「ううううう〜〜〜〜〜〜〜〜。」 「うーうーうーうー!あ゛う゛ぅ゛〜〜〜〜〜!!」 「じゃぁな…みんな!!」 「おおおおおお―――っ!!」 「サンジくんの健闘を祈ってェェェ!!」 「エールを送るぅぅぅぅぅぅ!!!」 「…ナミちゃん、止めて。近所迷惑だわ。」 「おっけー。」 ゴゴゴゴゴン!!! 沈黙 「いってらっしゃい、サンジくーん!!」 「がんばってね。」 「ありがとう!……行ってくるぜ!!クソ野郎共!!」 高々と腕を掲げ、サンジは躊躇うことなくサニーの門を出て行った。 NEXT BEFORE (2009/4/6) めぞん麦わら−2号室と5号室−TOP NOVELS-TOP TOP