BEFORE


臨床試験3日目 3日目ともなると、ゾロの『ダメダメ』な部分はさらに無くなっていた。  「何か買い足りないものあったら買ってくるぞ?散歩ついでだ。」 と、本当に迷子にもならず帰ってきて、きちんと頼まれたものを買って帰ってきた。 ラウンジの、サニー号標準時時計のゼンマイを巻くのは、本当はウソップとフランキーが 管理注意をすることになっているのだが、たまたま2人が同時に忘れてしまった時、 何も言わずにゾロが、ゼンマイを巻いているのをサンジは見た。 男部屋のランプの油も、気が付く前に入れておいてくれたり、頼む前にキッチンに来て芋剥きを手伝ってくれたりと、 本当に甲斐甲斐しい、優しい『旦那さん』になった。 さらに  「…ん?笛…か…?」 キッチンで、夕食の仕込みをしていると、高く澄んだ音色が聞こえてきた。 効いたことのない、風情のある音。  「ブルックか。新しい楽器仕入れたのか…。」 そう思い、また、作業の手を進めていると  「………え?」 聞き慣れない弦楽器の音が響いてきた。 先の笛の音に混じって、何とも風情のある、たおやかなメロディ。 しかし 笛と弦楽器 両方をブルックが弾いているとは思えない。 では、片方は誰が? サンジが甲板を覗き込むと  「!!?」 驚天動地 とは、こういう時に使う言葉だろうと、その時のサンジの表情を見てウソップは思った。 おそらく、メリー号で空島から落下した瞬間も、こんな顔をしていたに違いない。 そりゃそうだ と、ウソップも、目の前の信じられない光景に目を戻す。 芝生の甲板で 見たこともない弦楽器を引いているのはブルック。 そして、優しい、フルートに似た音の横笛を奏でているのは  「………。」 目をゴシゴシ  「………。」 もっかいゴシゴシ  「…………ゾロ………?」 マストの下のベンチに座り、コーラを煽っていたフランキーが言う。  「ブルックのは琵琶って楽器らしいぜ。町の古道具屋で見つけたんだと。」  「ワノ国の楽器らしいぞ。ヘンな音だよなー。」 ルフィも、楽しそうに言った。 そっちよりも こっち と、「ベン!」と、バチを鳴らし、ブルックがため息をついて  「いやあああああ…この船でどなたかとセッションができるなんて思ってもみませんでした!  楽しかったです!ゾロさん!!」  「結構、吹けるもんだな。音楽になってたかどうかは定かじゃねェが。」  「いえいえ!スバラシかった!!お上手です!才能ありますよ!初めてでそれだけ吹ける方は珍しい!  やはり、剣士としての呼吸法がしっかりしておられるのですよ!」 ゾロが、サンジが甲板から見下ろしているのに気づき、ゾロは笑いながら  「『篠笛』っつんだとよ。面白そうなんで吹いてみた。どうだ?」  「……ああ…いい…音…だな……。」  「だな、おれもそう思う。」 フランキーの隣に座っていたナミが  「そう思う?そう思うって言った?」  「言ったわね。」 チョッパーがロビンの隣で、また眼鏡をかけファイルを取り出し、ボールペンを勢いよくカチカチさせて  「……臨床試験3日目、芸術性が芽生える!うおおおおお!すげェ!おれ、すげェ!!」 すげェよ 確かに けど なんか なんか  「…ねェ、チョッパー、あの薬、いつ効果が切れるの?」 不意にナミが言った。  「わかんないよ。ゾロ、ほぼ2週間分を一気に飲んだんだもん。」  「なんか…なんかやっぱり…変よね…なんか…気持ち悪いっていうか…。」  「そう言われてもなー…。」  「…確かにいいのよ?本当にすごいのよ?でもね?やっぱり…なんかねェ…。」 ナミさんの言う通りだ。 あんなの あんなの、おれのゾロじゃねェ…  「ねェ、ルフィ。あんたもそう思うでしょ?」 ナミが、船長に同意を求めた。 すると  「そうか?おれはあれも、間違いなくゾロだと思うぞ?」  「そぅお?」  「薬が切れるまでだろ?だいじょーぶ!問題ない!面白れぇじゃねェか?」  「切れなかったらどうするのよ?」  「あっはっはっは!そういう事もあるか!」  「もう!」 いつもと変わらないルフィ。 どんなゾロでもゾロ。 ルフィらしい受け止め方。 けれど  「けどよぅ、おれもさすがに心配になってきた。そりゃ、ダメじゃねェゾロはありがてェが、  なんか…デキ過ぎてて逆に頼りがいが薄いっつーか…。」 ウソップが言うとフランキーも  「…ああ…そこはおれもそう思う。」 と  「はは…おれも相当厄介だったな!」 ゾロが、キレもせずに笑い飛ばした。 こういう所自体、違和感バリバリ。 そして、『ダメダメじゃないゾロ』の、イチバン嫌な事。  「………。」 サンジは、唇を噛んで首を振った。 女の子の嫉妬みたいだ。 けど  「………。」 ナミさんや、ロビンちゃんや、ウソップや、チョッパーや、フランキーや、ブルックや ルフィに 優しい笑顔を見せる事…。 今だって、ナミさんにあんな優しい笑顔を見せて、ルフィに、あんな穏やかな笑顔を見せて、 誰にも分け隔てなく、優しく、気を配って接してる…。 嫌だ すげェ嫌だ  「けど、おれはダメダメなゾロの方が好きだけどな!!」 ルフィが言った。 おれがめちゃくちゃ言いてェセリフを、ルフィがさらりと言ってのけた。 誰も、ルフィの言葉に同意しない。でも、複雑な苦笑いが浮かんでいる。 皆、ダメダメすぎるゾロも困るが、あまりにもダメダメでなさすぎるゾロにも困っているのだ。  「チョッパー!解毒剤作れない!?」 ナミが言った。  「なんだよー!量産しろって言ったり、解毒剤作れって言ったり…てか、解毒剤って何だよ?毒じゃねーぞ!」  「そ、それはわかるわよ!わかるんだけど、や、やっぱり、あんまり…性格が変わっちゃうのもね!やっぱりね!」  「あきらめろナミ、こりゃ、売れねェよ。」 フランキーが言った。  「そうね…性格まで変わってしまうのはどうかと思うわ。」 ロビン。  「気を悪くすんなよ、チョッパー!考えようによっては、どうしようもねェ性格の敵に出逢った時に、  そいつを口に流し込んで人格を変えて改心させて、穏便にお引き取りって手が使えるかも知れねェじゃねェか!」 ウソップが言うとナミが  「ああ!そういうのもありね!」  「さて、どうやって敵さんに飲ませるんですか?」 ブルック。  「それは!………どう?」 ナミが、がっくりと肩を落とした。 ゾロが、息をつき  「…おれ自身は、そんなに普段と変わったことをしているつもりはねェがな。」  「してるよ…とんでもなく、してる…。」 サンジが答えた。 ゾロの目に、わずかに不快が浮かぶ。  「…ま…しばらく…そういうもんだと思って付き合ってやるよ…ただ、もうキッチンの手伝いはしなくていい。」  「…なんでだ?」  「…なんででもいい…。してほしい時はおれの方から言う。それ以外は、気を回さなくていい。」  「…わかった…。」  「…じゃ…仕込みの途中なんでな…。」 サンジは重く手を上げ、そのままラウンジへ上がって行った。 その後ろ姿を見送り、チョッパーがぽつりと言う。  「…サンジが一番喜んでくれると思ったのにな…。」 ロビンが言う。  「大丈夫。気持ちは十分伝わっているわよ、チョッパー。」  「……うん。」 がっくりと肩を下ろすチョッパーを見て、ゾロは眉を寄せた。 夕食の時も、その後それぞれに過ごしている時も、それからゾロは一言も誰ともしゃべらなかった。 誰かが何かを問えば答えるのだが、自分から言葉を発しようとはしなかった。 薬を飲んでからのゾロは、鍛錬の後に本を読んだり、フランキーを手伝ったりと、 居眠りもせず、ずいぶんと甲斐甲斐しく動いていたものだが。 しかし、それすらも、『ダメダメなゾロ』に戻ってほしい仲間への、気遣いのようにも思える。 夜半 ナミとロビンが女部屋に戻り、チョッパーが眠いと真っ先に男部屋に引っ込んで、 ひとり、またひとりとラウンジから姿を消し、最後にゾロが残った。 カウンターキッチンの向こうにサンジ。 今日は、サンジが見張り番の日だ。 2年前から、見張りの夜は2人でゆっくり過ごす時間を設けていた。 抱き合うばかりではなく、酒を酌み交わして、尽きない話で夜を過ごすこともあった。 ただ黙って、隣同士座って、星を見上げるだけの夜もあった。 薬のせいで、人格が多少変わっても、そういった習慣を忘れるわけではない。 いつものように、ゾロはそこで、サンジと過ごすための時間を待っている。 だが 今のゾロに、抱かれたいとは思えない…。  「…悪ィ、ゾロ…。」 きゅ と、蛇口をひねってサンジは呼びかけた。 ゾロが顔を上げる。  「…今夜は…下で寝てくれないか?」  「…なんでだ?」  「………。」  「抱きてェ。」 言葉を飾る事もせず、ゾロが言った。 白い頬が染まる。  「…おれは…抱かれたくねェ…。」  「………。」  「…おやすみ。」 手をふき、袖を下ろして  「火は落とした。灯りだけ消してくの忘れるな…あァ…今のてめェなら、  うっかり忘れるなんて事もねェか…頼んだぜ。」 ゾロの側を行き過ぎようとした時  「!!?」 何かが、サンジの足を思いっきり払った。 ゾロの脚だ。 上体が仰向けに崩れた瞬間、ゾロの腕に抱きとめられた。  「……っ!!」 そのまま抱え込まれ、激しく唇を吸われた。 深い、深い口づけ  「…やめろ…っ!」  「なんでだ?」  「…今は…嫌だ…!」  「『ダメダメ』じゃねェおれに、されるのは嫌なのか?」  「………。」 真っ直ぐに、真摯な目で自分を見るゾロ。 とんでもなく、優しい眼差し。 間違いなく、自分だけを見ているその琥珀の光。  「…おれはおれだ…。」 ルフィみてェなことを言うな。 言おうとしたら、口をふさがれた。  「…好きだ…サンジ。」 素のままの顔で、そんなセリフを名前と一緒に吐くのかよ? 2年前までのてめェなら、いや、ついこの前の、2年ぶりにしたあの日までのてめェなら、 「2年分溜まってんだ、てめェだってそうだろ?」とか、「してェくせに気どんな。」とか、 ニヤついた顔で憎たらしく言って、おれの照れ隠しの悪態受け流しながら、雑に服を脱がせてがっついてくるはずだよ。 それが  「嫌な事はしねェよ。恥ずかしいか?灯り消すか?」  「…いらねェ…。」  「…お前…マジいい匂いだな…相変わらず肌綺麗だ。」  「………。」 褒め方も、やたらとキザで 正に気に障る…。  「…っ…あ…っ…!」 すげ… ダメに効く薬って、こんなもんにも効くのか? 今まで、こんなんしたことなかったじゃねェかって事ばっかりしやがる…。  「……ひ……ぅ…ん…っ…。」 それとも何か? この2年の間に、そっちの修行までしてきたか? まさか、あのカワイコちゃんとか?まさかな? アホか、おれ…。 ゾロがそんな野郎じゃねェって、わかってるだろ? こいつは 絶対に おれやみんなを、裏切るような真似はしねェ ダメダメでも、ダメダメじゃなくても、心の真ん中に立ってる芯は決してブレねェ。 それが、ロロノア・ゾロだ…。 サンジの手が、ゾロの背中に回った。  「……コック?」  「……好きだ……。」  「………。」  「…お前が好きだ…。」  「…ああ…知ってる。」  「…どんなんでも…いい…。」  「………。」  「おれが好きなのは?お前?だよ…。」  「………。」  「…お前…なのにな…。」 一日も早く、薬の効果が切れてほしい。 元の、なんでかおれが惚れちまった、どうしようもねェダメ剣士に戻ってほしい。 あの悪態が聞きたい。 青筋立てて怒る顔が見たい。 皮肉たっぷりに笑う、憎ったらしい顔が見たい。 居眠りしてるてめェの頭に、踵落とし食らわせたい。 迷子のお前を探して見つけて、散々罵ってやりたい。 『ダメダメじゃない』ゾロはとんでもなく優しく、意地悪く焦らすこともせず、 サンジの感じる部分をサンジが望むままに愛した。 キスも愛撫も、言葉も、乾いた花に水をやるかのようにたっぷりと注ぎ、 ゆっくりゆっくり、解きほぐし、潤わせ―――。  「……あ…ぅん……。」  「…脚…もう少し開くぞ…。」  「…や…。」 ゾロの両手が、サンジの太ももを床に押し当てる様に左右に開いた。 震える桜桃色の男根と、柔らかく解された秘孔が露わになる。  「…恥ずかしいカッコさせてごめんな…。」  「…言う…な…。」 いつもならこの後、己を押し当て、一気に攻め入ってくるのがゾロだ。 だがこの時ゾロはそれをせず、サンジの陰茎と濡れた菊の花弁を愛撫し、 腹を撫で、指で入り口を探り――。  「…ぁ…っ!…あああ…っ!…よせ…っ!…おかしくなる…!」  「…おかしくなれよ…おれがおかしいってんなら、てめェも一緒におかしくなれ…。」  「…んっ…ああっ…!だめだ…そんな…あちこち…!」  「…ここ…感じるか…?」  「!!ひ…!!ああああああっ!!」 サンジが悲鳴を上げるや、ゾロは得たりとばかりにそこに愛撫を集中させ、指を蠢かす。  「…クソ…なんで…なんで…こんなに…巧ェんだ…う…んん…っ!あ!」  「…さァ…なんでかな…?」  「…ゾロォ…!」  「…ダメダメじゃねェからだろ?」  「……う…ん…ああ…は…ぁ…は…!」  「…挿入るぞ…力抜け…。」  「…う…。」  「…ヒクヒクいってら…欲しいだろ…?」  「………。」  「……コック…好きだぜ……。」  「……ゾロ……?」 あれ? サンジが、瞬間惑った時  「……う!ああああああっ!!」 激しい濡れた音と共に、ゾロのものが正面からサンジの中に深く埋められた。 一気に、奥まで押し入った電流のようなそれに、サンジは激しく震え、体内を突き上げる違和感に咳き込んだ。  「色気ねェ。」  「…ゲホ…っ!…あ…ゾロ…!…てめェ…!!」 激しく首を振り、身じろいで、穿たれたものを抜こうと足掻いた。 だが、ゾロの両腕の凄まじい力に抑え込まれ、そのまま加えられた激しい律動に、顎を逸らして悲鳴を上げる。  「…く…!ああああああああああっ!!」  「…根元、すげェ締め付けてんぞ…そんなに締めなくても、すぐにイキゃしねェ。」  「ゾロ…!…う…てめェ…っ!!…っ…はぁ…ぁ!…あああ!!」 ゾロだ ゾロだ いつものゾロだ! このカンジ この意地悪加減、憎ったらしい物言い、『ダメダメな』ゾロだ!!  「ゾロ…てめ…!薬…切れて…!!…あ…あああ!!」  「…切れてねェよ…っ…。まだ…効いてる…。」  「…え…!?…んっ…!」 肌を叩きつけながら、ゾロは言う。  「…薬は効いてる…。だが、てめェらが考えてるような効き方はしてねェ…っ。」  「……はぁ…?どういう…!」  「…イったら話す…。」  「今…!…言え…っ!ふ…!はぁ…あ!」  「ダメだ…今っ…!それ…っ…どころじゃ…ねェ…!」 律動が小刻みになる。 サンジの視界がかすんでくる。 衝動と、快感が、腹の底から膨れ上がり沸騰寸前になっている。  「…ゾロ…!」 縋り付き、背を反らせ、無意識に腰を押し当て動かしていた。 淫らな濡れた音が激しく響き、荒い息が天井に吸い込まれていく。  「…イク…ああ…!…もォ…!」  「…も、ちょい…待て…!」 サンジを引き起こし、抱きしめ、揺さぶり  「…コック―――!」  「あ―――!…ああ…っ…ああ…あ…!!」 同時に 激しく震え サンジの白い腰が、ピクピクと震えながら押し当てられ、2度、3度と肩を上下させた。 深く、長い溜め息が、2人の口から同時に漏れた。 サンジの背中を抱いてゾロも腰を突き上げ、最後の一滴まで、最愛の体の深奥へと己の分身を注ぎ込む。 抱え、抱きしめ、まだ荒い息の中で、サンジが言った。  「…………説明しろ………。」  「…しつけェな…。」  「説明…しろ!!」 瞬間、サンジが腕で首を絞めたので、ゾロはちっと舌打ちして答える。  「あの薬な、確かに効いてる。しかし、おれ自身の性格とか人格が変わったわけじゃねェ  …ただ、テンションが格段に違った。」  「…テンション…?」 ゾロはサンジの腹についた、彼の体液を拭いながら  「『何かをしたい。しなきゃならない。あれもしてェ、これもしてェ。』って欲求がすごい。」  「………。」  「『ダメに効く薬』って言い方が、あの薬には当てはまらねェ。  あえて名前を付けるなら『何かをしたくなる薬』だな。」  「…『何かをしたくなる薬』…ねェ…。」 ゾロの頬が染まった。  「…お前だけじゃなく…奴ら全員が喜ぶことをしてェと思う気持ちが高ぶって、どうにも収まらねェんだ。」  「………。」 サンジはハッと目を見開いた。 じゃあ、この3日間のゾロの行動はそれとしても、料理のセンスも服のセンスも、 芸術的センスも、ちゃんとゾロが持っているもの…というワケか? どんなんでもゾロはゾロ ルフィが言った言葉は、正に核心を突いていた。 ゾロはサンジの体を抱きしめ、肩に顔を埋めて  「…あれこれこっ恥ずかしくて、顔から火が出そうだってのに、火が出るどころか『嬉しい』気持ちの方がデカくてよ…。  心にもねェセリフばっかり、どんどん出てきやがる。…まいった…。」  「…はは…そか…でも…全部本心だったんだよな?」  「言うな…!やっと薬が切れ始めて、自覚が戻ってきて、自己嫌悪に陥ってんだ!!」  「ははははははは!!こりゃダメだ!やっぱり売れねェな!使用後にこんな自己嫌悪が始まるんじゃ!」  「…昨日は薬のせいで…てめェがおれを好きなのも幻じゃねェかとまで考えちまって…  てめェはてめェでおれを憐みの目で見たり、嫌なもん見るような目で見たりするしよ…!  ちくしょう!チョッパーの野郎…!」  「チョッパーに当たるな。あいつはあいつで、てめェとおれの為を思って、頑張ってくれた結果なんだからよ。」  「わかってる!」 言うなり、ゾロはサンジを床に押し倒し  「抜かずにヤるぞ。」  「…あー…嫌だっつっても無駄っぽいな…。」  「…思っクソ汗かいたら、汗と一緒に出るかも知れねェ。」  「それなら、いつもみてェに串団子振ってろ!そっちの方が絶対ェ早ェ!!」  「てめェ振ってる方が楽しい。」  「!!!!!!!!!!!」  「好きだぜ、サンジ。愛してる――――。あー、こういうセリフもスラスラ出てくるな。」 真っ赤になって、顔を覆い隠すサンジ。 その耳朶に唇を寄せ、ゾロは言う。  「量産するんだろ?次はてめェで臨床試験だ。」  「やなこった!!」  「どんだけ素直になるか、楽しみだな。」  「飲まねェ!絶対飲まねェ!!」 笑いながら、ゾロがサンジの首筋に顔を埋めた。 ゾロ本人が言った通り、その晩たっぷり汗をかいたのが良かったのか、翌日のゾロは  「ぐおおおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜Zzzz」 芝生の甲板の真ん中に描かれた『大の字』を、麦わらの一味は、男ヤンキー座り、 女体育座りで沈黙しながら見つめていた。  「…戻っちゃったわね…。」  「うん、戻ったね…。」  「臨床試験4日目…被験者、薬の効果切れる…と……あっさりしすぎ…。」  「残念ですねー、もう一緒に演奏できないのですねー…。」  「ま、ホッとしたな。」  「ははは!そだな!やっぱ、ゾロはこうでなくちゃゾロじゃねェな!」 サンジが言う。  「ところで、なァ、チョッパー…あの薬、もっかい作れって言われたら、お前作れるのか?」  「………。」 返事がない。 ナミが  「何よ!?じゃあ、ゾロが飲んだあれだけ!?量産体制確立、一般販売、そしてぼろ儲けの夢は!?」  「…ごめん…ぶっちゃけ、どう調合したかよく覚えてねェんだ…。」  「しっかりしろ医者!」  「……転んで頭打った後だったからなー……。」  「おい!」 タバコの煙を吐きながら、サンジは心の中で思う。 ゾロは『ダメに効く薬』ではなく、『何かをしたくなる薬』だと表現した。 意欲が格段に上がって、テンションも上がる。 テンションが上がるから、方向感覚がよくなって迷子にもならねェし、目端が効くし、眠くもならねェ。 それって、ある意味アブナイ薬だ。 あれっきりで正解だ。  「………。」 ゾロは、ゾロのままが一番いい。  「ところでそろそろ、どの指針を目指して進むか決めましょうか!  いつまでもここでこうしてても仕方ないし。」 ナミが、ログポースを示して言った。 ルフィが途端に  「だからー!その一番針が揺れてる島だって言ってんだろー?」  「却下だ!却下却下却下―――っ!!」  「コーラもたんまり仕入れたし!いつでも出港できるぜ!」  「じゃ!お日様が高い内に出航しましょうか!  「うおおおおお!いよいよ本格的に新世界かああ!」  「楽しみね。」  「ヨホホホホホ!待ってて下さいね〜〜〜ラブーン!!」  「よ〜〜〜〜〜〜し!帆を下ろせ〜〜〜〜!出航だぁあ――――!!」  「了解キャプテン!くぉら!根腐れダメ剣士!!いい加減に起きやがれ――!!」  「おごはぁっ!!」 サンジに思いっきり腹を踏みつぶされ、ゾロは跳ね起きる。  「何しやがんだァ!?やんのか!?あァ!?」  「あ〜あ!やっぱりダメダメじゃねェ方がよかったなァ!!」  「いーかげんにしなさい!!」 ナミ、鉄拳一発 ルフィが、サニーの頭の上で帽子を押さえ、笑いながら言う。  「あっはっは!やっぱこうでなくっちゃな!出航ぉ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」  「お―――――っ!!」 白い帆いっぱいに風を受け、サウザンドサニー号は新世界の海へ漕ぎ出していった。  「あれ?」 出航して数時間後 薬品の整理をしていたチョッパーは、薬箱の隅にある瓶に気付いた。  「……………もう1本あった。」 茶色の薬瓶のラベルにかかれた自分の文字  『エロに効く薬GOLD』  「…………………。」 そっと、元の場所に薬瓶を戻し、チョッパーは大きなため息をつき、しばし考え  「………………お〜〜〜〜〜い!ナミ――――!!」 と、明るい声で、医務室を飛び出していった。 END 追記 いろいろあって、『エロに効く薬GOLD』を服用したサンジが、ピュアッピュア!になり過ぎて、 結局薬が切れるまでの実に3週間、ゾロがブチ切れ続けたのはまた別のお話。    BEFORE ゆるり様リクエスト 『「ダメに効く薬」がついに完成!!(未治験) 「人体実験をしてから、量産してお金儲けよ!!」 と、サンジにこっそり料理or酒に混ぜて飲ませるように指示。 次の日から寝腐れマリモが大変身!! 二サン日するうちに、段々皆が違和感を覚え出して…』 というワケで、『ダメに効く薬』でした。 全員分のシチュを考えてみましたが、麦わらの一味よりもおいらが耐えられなくなったという… 機会があったら『エロに効く薬GOLD』サンジ服用編も書いてみたいと思います← ゆるりさん、ありがとうございました!                     (2012/12/3) 使用上の注意‐TOP
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