所内を、サイレンが鳴り響く。
当然、桟橋に着く以前に砲撃を受けたが、上陸前にウソップが、
あらかた砲撃で砲台を片付けた。
サニー号は、ルフィ達が上陸できる距離にまで接近し
「行くぞ―――!!」
ルフィの号令一下
「ゴムゴムのォォォ!!ロケットォ――――!!」
先陣を切ったルフィにゾロが続く。
接岸すると同時に、ウソップとチョッパーが桟橋に降り立った。
「行くぞ!チョッパー!おれ様に続け――――っ!!」
「うん!!」
4人が突入すると同時に、サニー号からフランキーがキャノン砲で援護する。
ブルックも、桟橋でルフィらを追う海兵らを斬り捨て、蹴散らし
「眠り歌…フラン!!」
ロビンも
「千輪咲き(ミルフルール)!!―――クラッチ!」
4人が、奥へ消えたのを見届けてナミが叫ぶ
「ブルック、戻って!!フランキー!!離れるわよ!!」
「はい!ナミさん!!」
「よっしゃああ!!」
サニー号は岸から離れ、距離を取った。
だが、たちどころに海軍の船が押し寄せてくる。
「来るなら来やがれ!!サニー号の力を見せてやるぜ!!」
突入班と脱出準備班に仲間を分ける事になった時、
ルフィとゾロは当然の様に突入班を申し出た。
これはいつもの面子だ。ここに、ナミはフランキーを加えようとしたが
「絶対、サンジケガしてる!!おれも行かせてくれ!!」
言い出したチョッパーに、ナミが
「能力者2人は、万が一の時(今の)ゾロには余るわ。」
「おれは大丈夫だぞ、ナミ。」
ルフィの言葉にナミは
「周りを海に囲まれた施設なのよ?サニー号が寄せられなかったり、
敵の船を手に入れたりができなかったら、
サンジくんを抱えて、あんたとチョッパーまではムリよ。」
「…う…。」
ルフィが詰まった。
すると珍しくウソップが
「じゃあ、おれも一緒にいく!!」
言い出した。
フランキーが
「ウソップ、お前ェにはカタパルトに入ってもらいてェが…。」
「それは…何とかならねェか?」
「おれは操船で目いっぱいだ。おそらく砲撃まで手が回らねェ。」
「サンジが捕まってんだ…!おれも助けに行きてェ!!」
「砲撃は私が担当するわ。大丈夫、何度かレクチャーを受けているし、花を咲かせれば。」
ロビンが言った。
「ありがとう!ロビン!!」
やはり、一番の友人だ。
普段はどんなに憶病であろうとも、自分も一緒に助けに行きたいという
ウソップの気持ちは、ゾロと同じように強い。
「施設の見取り図でもあればいいけど、何もない手探り状態の突入よ?
十分に気を付けてね!作戦開始よ!!」
「お――――っ!!」
走る
走る
走る 走る! 走る!!
ルフィ、ゾロ、ウソップ、チョッパーは、桟橋から崖上への階段を一気に上がり、
門を破り、鉄の扉をブチ破って、収容所内に突入した。
走りながら、ウソップが叫ぶ
「おい!ルフィ!ゾロ!どれか一人でもいいから海兵とっ捕まえて!
罪人をどこに収容してるのか聞き出せよ!!片っ端から倒してんじゃねェェ!!」
「あ、そっか!その手があったな!」
「今、気づくな!!」
走りながらチョッパーが言う。
「さすがだな!ウソップ!!そういう事に気が付くなんて!!」
「まったく…あいつらだけ行かせたら、サンジを助けるまで
どんだけ無駄に敵と戦う事になってたかわかんねぇな!
……って、言ってる側から斬り捨ててんじゃねェ!ゾロォ!!」
答えず、ゾロは再び無言で走り出す。
「…言っても無駄かァ…。」
大きなため息をつき、ウソップは倒れた海兵をひとり引き起こして
「おい!牢はどこだ!?」
「……っ…!!この建物の…上層階だ…4階より上が…。」
「そっか、ありがとさん!」
礼すら言い、ウソップも走り出した。
「上だ!ゾロ!!上の階!!」
「…わかった!」
今回ばかりは、さすがのゾロも迷う事無く階段に辿り着き、駆け上がって行く。
「チョッパー!時間、何分経った!?」
ウソップが叫んだ。
「…突入から48分!!」
「急げェ!!」
突入前に、ナミから言い含められた。
突入から60分、サニー号は『観測所』から離れている。
そして突入から70分後に、サニー号を崖下に寄せ、さらに10分で離脱すると。
そして
『ウソップ、地図は持ったわね?』
ナミが確認した。
『いい?万が一、脱出に間に合わなかったら、何とかして地図に記した場所へ到達するのよ?
その場所へ、必ずサニー号を向けるから。』
『…遠くねェか?歩きになったら結構あるぞ?』
『その時は、追われて逃げてるってことを考えて。』
『そか…ん!わかった…!』
ウソップに渡された地図には、島の北端にバツ印がつけられていた。
『でも、よく聞いてみんな。少し気圧がおかしいの。もしかしたら、嵐が来るかもしれない。
そうなるとサニー号の方が、遅れる可能性もあるわ。頭に入れておいてね。
…ちょっと、ゾロ!他人事みたいな顔しない!あんたがイチバン危ないんだから!』
『…島の北端だろ…わぁったよ…。』
『…ちなみに、今、北はどっち?』
ナミに問われ、ゾロは盛大に真反対を指差して、拳を一発喰らった。
「やっべェ!あと20分しかねェぞ!!まだ、サンジを見つけてねェのに!!」
「間に合わせるしかねェだろう!!」
「サンジ――――っ!!どこだぁああああ!?」
「聞こえてたら返事してェェェェ!!サンジィィィィ!!」
と、「いたぞ!」という声と共に、廊下の角から、こちらに銃口を向けた海兵が現れた。
「…おれがやる…!!」
ルフィが覇王色の覇気をこめたが
「どけ!!」
さらに早く
「煩悩砲…白雷―――!!」
飛ぶ斬撃が、海兵ごと壁まで吹き飛ばす。
「あ〜あ。」
ルフィは呆れるような声を上げたが、ウソップとチョッパーはぞっと背筋を凍らせた。
愛って、怖い。
喧騒が、どんどん近づいてくる。
悲鳴がここまで聞こえてくる。
…あ〜あ…
サンジもまた、苦い笑みを浮かべながらルフィと同じように呟いた。
こりゃあ…相当キてんな…あのバカ剣士…
思うと同時に、真実愛されている悦びも込み上げてくる。
…おい…頼むから迷子になんかなるなよ…?…ああ…この気…ルフィだな…
ルフィと…チョッパーと…これは…おー…ウソップだ…あいつ来てくれたのか…
はは…嬉しいねェ…。
…けど…やっぱり…最初に見るのはお前の顔がいい…。
目を閉じ、サンジは静かに微笑んだ。
…ゾロ…早く来い…おれはここだ…。
「――――っ!!!」
瞬間震え、ゾロは大きく身を翻した。
同時に、ルフィも
「ゾロ!!あっちだ!!」
「わかってる!!」
いきなり駆け出す2人に、ウソップとチョッパーも面喰いながら続く。
「な、なぁ!あれか!?覇気って奴か!?」
「サンジか!?サンジなのか!?」
ルフィが答える。
「サンジだ!!急げ!!こっちだ!!」
「おい!ゾロォ!お前が先行すんなァ!!」
「大丈夫だ!ちゃんとサンジが呼んでる!行けェ!ゾロ!!」
サンジが海軍に捕まってからのゾロは、いつもの全く変わらない様子で、至極落ち着いていた。
だが、「あのバカコック!」「仕方ねェな、あのアホ眉毛!」などという悪態を、
一切つかずに黙っている事が、逆に怒りの深さを示しているようで怖いと、ナミが申し訳なさそうに言っていた。
現れる敵に問答無用で大技を仕掛け、斬り伏せていくその姿はまさに鬼のようで―――。
だが、もう何かを考えている余裕はない。
「はァはァ…!…55分過ぎたァ!!時間がねェぞォォ!」
「サンジ―――――っ!!」
「はァ…牢獄って…大概地下に…はァ…あるって思ってたけど…
はァ…この階段は…予想外…っ!…はァ!」
と、ゾロが三刀を構え
「…上へ行きゃあいいんだろ。」
「…っ!!って、おい!?ゾロ!?何考えてんだ!?」
「ちょ…!待って!心の準備…!!」
「三刀流……!!竜巻―――!!」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」
「うっひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
大爆音
「まぁ、派手にやっているわ。」
見張り台の上で双眼鏡を覗きながら、ロビンが微笑み呟いた。
「…どこにいるか一目でわかるな。てか、まだ、建物の中かよ。ナミ、どうする?」
フランキーが、海軍の追撃をかわしながら尋ねた。
「予定通りよ。変更は効かないわ。」
クリマタクトを肩に担い
「東側の海軍基地に、すでに連絡は行っているはずよ。
応援が来る前に、あたしたちはここを離れなきゃ…。」
「急いでくださーい…ルフィさーん!…ヨホホホホ!ホイっ!っと!!」
飛来する砲弾を、ブルックが見事に切り裂いた。
「…ナーイス、ブルック。」
「イエイエ!ナミさん!ご褒美に、パンツ見せていただいて…グボホエァッ!!」
足下にブルックを沈め、ナミは叫んだ。
「フランキー!一気に行くわよ!!」
「りょ〜〜〜〜〜かい!!」
サニー号が、大きく回頭する。
「みんな…早く出てきて!!」
『観測所』の牢が上層階にある意味を、上に立って見て理解した。
建物そのものは4階建てという大して高いものではないが、建っている場所が崖の上。
その崖が、海までとんでもない高さがあるのだ。
牢獄がある棟はその断崖の方にあり、鉄格子を破って脱走をしても、
眼下が目も眩む高さ、そして激しい波が岩を打っている。
岩を穿って地下に牢を造るより、より上層に造った方が脱走のリスクが低いのだ。
まぁ
こいつらには関係ない。
「―――!!」
何も言わず、サンジの気を捕らえ、ゾロはためらう事なく再び走り出した。
そして
「コック―――――!!」
牢獄の奥。その姿を目にした瞬間両手の刃を大きく振るい、太い鉄格子を真っ二つに切り裂いた。
石壁に磔られ吊るされ、手首を縛められていたのは紛れもなく。
「コック!!」
「………。」
薄く目を開き、ゾロを見て、サンジはニコリと笑った。
だが
「!!」
サンジの首のものを見て、ゾロはぐっと息を呑む。
だが、サンジはまた笑い
「…よかった…。」
「…あァ?」
「…迷子にならずに…ここまで来られたか……。」
「………。」
「…うれしい…。」
「――――っ!!」
怒鳴ってやろうと思った。
このカッコつけ野郎が無茶しやがって
そう言って、いつものように―――。
だが
髪を探り、頭を抱え、肩に引き寄せた。
「…………。」
「…ありがとう…。」
ルフィ、ウソップ、チョッパーが飛び込んできた。
「サンジ!!」
「おおおお!サンジぃぃ!!――っ!ゾロ!そういうのは後だ!!時間がねェ!!」
「サンジ!!ケガは!?」
チョッパーがサンジに飛びついた。
「…うわ…アバラ…やられてる…手も…酷い…。」
ビキッ!と、ゾロの何かが切れる音が聞こえたような気がして、ウソップは身を震わせた。
「…大したことねェ…今まで戦った連中の中でも…下の下だ…。」
「ここまでやられて、言うセリフじゃないよ。」
チョッパーは手早く、注射器に薬を注入し
「痛み止め。とりあえず打っとくよ。」
「さんきゅ…。」
そして、チョッパーもサンジの首に気付き
「…サンジ…!」
「………。」
ウソップも
「うわ…そいつァ…!」
「ゾロ!どけ!」
ルフィが進み出た。ゾロも素直にルフィに譲る。
「サンジ。」
「………。」
「じっとしてろよ。」
サンジがうなずく。
ルフィが、手に覇気をこめた。
途端に、首の爆弾から警報が鳴り始める。
キンキンキンという金属音から、ピピピピピ…という爆発寸前の警告音に変わった。
「るるるるるる!!ルフィぃぃぃ〜〜〜!!」
「うわああああああ!大丈夫かぁああああ!!」
ゾロがぼそっと
「黙ってろ。」
悔しいが、これができるのは覇王色の覇気の持ち主だけだ。
「外すぞ!」
「おう。」
ゾロが答えた。
それは秒単位の出来事だった。
ルフィの手が首輪の錠を外し、投げ、それをゾロの刀が切り裂き
爆発は、回廊の端で起こった。
威力で、壁に大穴が空く。
返す刀で、サンジを縛めていた鎖を斬った。
崩れる体を受け止め、肩に担ぎあげる。
「…逃げるぞ。」
「……気ィ…失ってもいいか…?」
「いいぞ。寝てろ。」
「…へへ……さんきゅ…。」
肩に、サンジの重みがかかる。
その重みが、ゾロに安堵の息をつかせた。
「急げ!!」
ウソップに促され、走り出す。
敵を散らしながら階段を駆け下り、桟橋を目指す。
だが
「!!」
爆音と共に、桟橋が吹っ飛んだ。
「そんな…!!」
チョッパーが悲鳴を上げた。
ウソップが
「…ロビン!何やってんだよ!!」
「…いや、ウチの砲弾じゃねェ。海軍だ。」
ゾロが言った。
「…おれ達がサニー号に、戻れねェ様にしやがった…。」
「いいいいいいいいっ!?」
同じ頃
「何てことするのよ!海軍!!」
ナミが叫んだ。
「まぁ…思い切ったことをするわ。」
ロビン。
フランキーが
「桟橋なんざ、あとでいくらでも造り替えられる。妥当な選択だぜ。」
「どうします!?ナミさん!?このままでは、みなさんを回収できませんよ!!」
ブルックが叫んだ。
「ナミ!できる限りサニー号を寄せて!私が引き寄せられれば…!」
ロビンが叫んだが
「ムリよ!あの銃撃の中じゃ!!」
その時
「待って!…ウソップが合図してるわ!」
ロビンが双眼鏡を見て叫んだ。
そして
「…西側を指差してる…!」
「よし!おれがシャークサブマージで出る!!」
フランキーがブルックに舵輪を託した。
「ダメよ!シャークサブマージは…3人しか回収できないわ!!」
ナミが叫んだが
「往復すりゃ済むことだ!行かねェよりいいだろう!!」
ソルジャードックシステム格納庫に飛び込み、勢い救出に向かう。
「――――っ!」
ナミが、はっと息を呑み、甲板から身を乗り出した。
「どうしたの?ナミ?」
ロビンの問いに
「……マズイわ…嵐が来る!!」
「ええ!?」
追っ手をかわしながら、ルフィらは何とか岩だらけの海岸へ辿り着いた。
『観測所』からの追っ手が、すぐ後ろに迫っている。
ウソップが海を指差し
「シャークサブマージだ!!おおおお〜〜〜〜い!!」
「大丈夫かな…?向こうにすごい雲があるよ!」
「急げ!ルフィ!!」
「先に行け!」
身構え、再び覇気を放つ。
バタバタと、倒れる海兵。
―――と
黒雲に覆われ始めた空から
「――雨だ!!」
「………!!」
急激な天候の変化。いきなりの、土砂降りの雨。
雨の勢いに、サンジが目を開く。
「…おい…降ろせ…。」
「黙ってろ。」
「…この雨…ヤベェ…ルフィ…チョッパー…。」
「だ、大丈夫だ!」
チョッパーは言ったが、全身濡れ鼠ならぬ濡れ狸になってしまっては
「ううう…。」
ルフィも、何とか立ってはいるが。
「くっそ…力が出ねェ…。」
「ヤベェェェ!!急いでくれェェェ!!」
シャークサブマージが浮上し、ハッチが開いてフランキーが飛び出した。
「アウ!さあ!急げ!!お前ら!!だが、まず初めに3人だ!!すぐに戻るからな!」
ウソップがゾロに手を差し伸べ
「サンジ!!先に乗れ!!」
だがサンジは
「…おれは大丈夫だ…ウソップ、フランキー…ルフィとチョッパーを先に連れてけ…!」
「何、言ってんだよ…!助けに来たのはおれ達だぞ!」
チョッパーが言った。
しかし
「…動けねェ奴を、置いていかれる方が困る。ウソップ、てめェが残れ。」
ゾロが言った。
そして、まるで荷物の様に、サンジをフランキーへ放り投げた。
フランキーは波に揺れる潜水艇の上でサンジをキャッチし、ふらつく足を踏みしめる。
サンジが叫ぶ。
「…っ!何しやがる…マリモ…!!」
「先に行け。」
「……!!」
「大丈夫だ、サンジ!行ってくれ!」
ウソップが、ハッチの際でルフィに手を貸しながら言った。
「悪ィ…ゾロ…!」
ルフィが乗り込む。
「ほら、チョッパー!!」
「…ごめん…ウソップ…。」
「心配すんな!!」
フランキーが操縦席に着こうとした時、サンジがよろめく足を奮い立たせるように
ハッチに伸びあがり、ウソップに
「…ウソップ…!」
「ん!?なんだ?」
呼ばれ、ウソップが覗きこむと
「うわぁっ!!?」
中へ、引きずり込まれた。
入れ替わりに、サンジが外へ飛び出した。
あばら骨を数本、折られているとは思えない動き。
船体が、大きく傾く。
「うおっ!!」
フランキーが叫んだ。体重を移動して、バランスを取り戻す。
ウソップが、ルフィの上で仰向けにひっくり返ったその時、ハッチが外から閉じられた。
「サンジ!!?」
「行け!!」
「おいぃ!!助けに来てもらった方が残ってどうすんだよぉぉ!!?」
「…だからだよ。」
言い残し、サンジは跳躍し、岩場に残ったゾロの前に辿り着く。
「…馬鹿が。」
ゾロが、ニコリともせず言った。
土砂降りの雨が、深く刻まれた眉間の間を伝って落ちていく。
サンジは照れくさそうに
「へへっ。」
酒に酔った時の様な、締まりのない笑顔を浮かべた。
瞬間、同時に2人は振り返り
「うわあああああっ!!」
同時に、技を炸裂させた。
「…庇ってやってる余裕はねェからな。」
「誰が庇ってくれっつった?余計なお世話だ、マリモマン。」
深く、腰を落とし身構えた。
「何やってんのよ!あんた達は!!」
「仕方ねェだろ!!サンジのヤツがぁ!!」
「彼らしいわね。」
「笑ってる場合じゃないわよ、ロビン!!」
「とにかく!もう一回行ってくらァ!!」
フランキーが、シャークサブマージを出そうとした時
「ナミさん!!軍艦が見えます!!」
「ええええ!?」
ブルックの叫びに、皆ギョッとしてブルックの骨の指が指す方を見た。
「…タイムリミットだわ…!」
ナミが、絶望的な呟きを漏らす。
チョッパーが叫んだ。
「ゾロとサンジはどうするんだ!?」
「――――っ!!」
ナミは、空の黒雲を見上げ
「…だめ…限界だわ!この風の中、海軍をかわしながら2人を回収するのはムリよ!!」
「ええええええええええええええええええええええ!!?」
「ゾロォ!!サンジィ―――っ!!」
と、ルフィが、ウソップに支えられながら
「ナミ――!!船をつけろ!!」
「ムリだって言ってるでしょう!?こっちの岩場じゃ、サニーは近づけないわ!!
ロビンだって、この雨の中じゃ『ハナハナの能力』は使えないのよ!!」
「じゃ、どうするんだよォ!!」
ウソップの叫びにナミが
「…当初の予定通りよ!いいわね、船長!!」
「――――っ!!」
「大丈夫よ…!!サンジくんが残ったのなら、ゾロは大丈夫!!あの2人よ!」
ルフィが大きくうなずいた。
「…わかった!!逃げるぞ!フランキー!!」
「りょ――――かい!!」
「ウソップ!!2人に合図を!!」
「うううう!!くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
ウソップがカブトを構え
「火煙星!!」
破裂音と共に、真っ赤な煙が空に登った。
「ゾロ――――!!」
サンジが気付いた。
「………。」
同時に、サニー号が大きく向きを変えた。
それを見とめ、ゾロが和道一文字を口から外し
「…逃げるぞ。」
「わかった。」
余計な言葉は要らなかった。
同時に、追いすがる海兵達を蹴散らしながら、ゾロとサンジの2人は『観測所』の北側の森へ走り始める。
陸でロロノア・ゾロと黒足。海でサウザンド・サニー号を追う海軍。
だが
「…黒杖…大竜巻―――!!」
「風来…バ――――ストォ―――――!!」
突風と激しい波飛沫を残し、喧騒が去っていった。
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(2013/2/11)
(2012ゾロ誕TOPからおいでの方はブラウザを閉じてお戻りください)
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