BEFORE それから数日が過ぎたある日の朝。 ゾロはサンジの前に、自ら衣箱を運んできて言った。 「着替えろ。出かけるぞ。」 「着替え?」 見ると 「……これ……。」 男の着物だ。 「馬を引いてくる。急げよ。」 「………。」 男の着物なんか着たら、正体がバレる…。 内掛けや、重ねた着物で体型を誤魔化しているのだ。 しかも、青芋の着物。 生地が薄いから、体型が出てしまう。 「そう思ってるのはお前だけだ。」 言い捨てて、さっさとゾロは行ってしまった。 ぶつぶつ言いながら、それでも本来の姿になると、やはり心地がいい。 締め付けるものの多い女の着物から解放されて、サンジは思わず深呼吸する。 「どこへ行くんだ?」 「着いて来ればわかる。」 着いて来れば? 見れば、馬が2頭。 自分で乗れってか? ますますバレやしねェか? が、手綱を引いて、城の大門まで歩いて行く途中の至る所で 「これはお方様…!」 「見違えましたぞ、どこの小姓がおるのかと…!あ、いや!これはご無礼を!!」 「お似合いでございますわ、姫様。」 …もう、何も言うまい… 少しがっかりする。 ゾロは、侍従に告げた。 「“麦”へ行く。帰りは…。」 すると侍従は笑って 「お帰りはいつか、わかりませぬな。」 「あー、そうだな。」 「火急の折は、早馬を。」 「頼む。」 言って、さっさと自分は馬上の人になった。 さすがに侍従も、ゾロが氷雨姫に手を貸さないのでいぶかしんだが、ゾロは愉快そうに 「乗れねェか?それともこっちで一緒の方がいいか?」 と、どこか意地悪げに言った。 サンジはむっとして 「お構いなく。」 と、ひらりと鞍に身を預けた。 「おお。」と、侍従が声をあげた。 「よし、死ぬ気でついて来い。」 「………。」 仏頂面のサンジをにやりと笑って見ながら、ゾロは馬に一鞭くれた。 「はいや!!」 風の様に、ゾロの馬が麓への道を駆け下りはじめる。 と、見送る侍従や門番達が、瞬間慌てふためき思わず叫んだ。 「若殿!!?」 「二の丸様!!」 しかし、置いてけぼりを食らわされたと見えた氷雨姫は 「はいっ!!」 思いっきり馬腹を蹴り、いななく馬の手綱を見事に操って、つむじ風の様に駆け下って行った。 「……お見事……。」 呆然と、誰かがつぶやいた。 「お。来たか。」 「てめェ!!不意打ち食らわせやがって!!」 「悪ィ悪ィ(笑) ちょっと、からかってもいいかと思ってよ。」 杉木立の中を、ゾロの笑い声が響き渡った。 つられるように、サンジも笑う。 「…ありがとう、ゾロ!」 「あ!?なんだ!?」 「ありがとう!」 「あァ!?聞こえねェ!!」 「…も、いい!!」 真っ赤になってサンジは叫んだ。 ゾロは、自分の為に、“男”に戻る時間をくれたのだ…。 馬はやがて、林を抜けて山間の道へ進んで行った。 切り立った崖に囲まれた谷を抜ける頃には、もう城を出てからかれこれ二時は過ぎていただろう。 久しぶりの心地よい運動。 空 山の緑 腹が空いてきた。 関に来てから、腹が空いたと感じたのは初めてだった。 「ゾロ、どこまで行く?」 馬首を並べて尋ねたサンジに、ゾロは指で方向を示し 「見えてきた。あそこだ。」 「………。」 サンジが見下ろした谷の底に、小さな集落があった。 村の1区画から、たくさんの黒い煙が昇っている。 「タタラの村。“麦”の里だ。」 「………。」 谷あいの村は、思ったよりも小さかった。 家も少なく、畑も田も僅かな広さだ。 しかし、山道から見たあの黒いたくさんの煙はなんだろうか。 そしてここは、ゾロにとってどんな意味のある村なのだろう? タタラ 「……タタラ…鉄の精錬所か?」 「そうだ。」 事も無げに、ゾロは言った。 2人が、ゆっくりと馬を進めながら村へ入って行くと 「ゾロ――――っ!!」 村の奥から、年の頃は13、4といった雰囲気の少年が走ってきた。 顔が、煤けて真っ黒だ。 「ルフィ!!元気か!?」 「おう!おれは元気だ!!」 ルフィ、とゾロが呼んだ少年は、馬上のサンジを見て目を丸くした。 じっとサンジを見つめて、少年は言う。 「おもしれェマユゲ!!」 「余計なお世話だ!!」 思わず、怒鳴り返してしまった。 はっと口を押さえる。 「ゾロ、コイツ誰だ?」 城の若殿に対して、なんというぞんざいな口調。 だが、ゾロは気にするような男ではない。 「おれの嫁だ。」 「嫁?なんで?」 「なんでって、もらったんだよ。」 「聞いてねェぞ!」 「言ってねェからな。」 「ずッけーぞゾロ!!こんな美味そうなの独り占めか!?」 「美味そうって何だよ?」 「ところで嫁って何だ?」 …なんなんだ…このクソガキは… 「これは若殿……いつもお越しは急じゃの。」 言いながら、歩み寄ってきた老人に、ゾロは笑い 「いちいち先触れするの、面倒じゃねェか。」 「ははは…違いない。…さてさて…こちらは…噂の北の方でおられるか?」 サンジは、さっと切り替えて 「…氷雨でございます。」 と、声を作った。 「おお、なかなか……お上手じゃ。」 「!!」 「サンジ。」 ゾロが、『サンジ』、と真名を呼んだ。 「…この村長…クローバーは、元はお前と同じ忍びだ。誤魔化しても無駄だ。」 「…え?…あ…。」 「はははは……毛利家の姫と伺っておったが、間違えておったかの?」 「まぁ、いろいろあったんだ。こいつは、表向きはそういう事になってる。」 表向き、という言葉に、サンジはふと眉を寄せた。 「…が、どうやら、“筑前宰相”の策にどっぷり嵌ってしまわれたか?」 「…面目ねェな。」 ゾロは笑った。 クローバーも愉快に笑う。 「美味そうだもんな。」 ルフィが言った。 美味そう、という言葉の意味がわからない。 するとゾロが 「おう、メチャメチャ美味ェぞ。」 「そっか!おれ、美味ェヤツ好きだ!!」 ますますわからん。 だが、まず間違いなく、ゾロの美味いの意味は下ネタだと思う。 「あ!ゾロ様!!」 「おいでなさいませ!」 「まぁ、若殿!!」 「お久しゅう!」 「この度はご婚礼の儀、まことに祝着至極に存じます!」 村の者達がわらわらと集まってくる。 老いも若きも幼きも、男も女も。 ゾロは笑って 「ああ、ありがとよ。」 と、答えた。 そして 「これがその嫁だ。よろしく頼まァ。」 と、かなり簡単に紹介する。 すると誰もが 「これはこれは…。」 「………。」 「美味そうな!」 …だから、その言葉の意味が… ミカンのような色の髪の娘が、ゾロに尋ねた。 「ねェ、ゾロ。お嫁さんって、フツー、女の人じゃないの?」 「!!」 こんな小さな女の子にまで…。 だから、男のカッコはヤバいって言ったんだ! 「ま、いろいろあんだよ。けどな、コイツはおれの大事な嫁だ。 仲良くしてやってくれるか?ナミ?」 「ふーん、いいけど?」 少し頬を染めて、ナミと呼ばれた娘はサンジを見て恥ずかしそうに笑った。 「ルフィ、ナミ。フランキーはどこだ?」 ゾロが尋ねた。 「フランキーなら鍛治場にいるぞ。」 「ウソップも一緒か?」 「うん。」 「わかった。ありがとな。…じゃ、そっちを先に済ませるか。行こう、サンジ。」 「………。」 と、ルフィがまた 「なァ!ゾロ!用事が終わったら遊ぼうぜ!!」 「わかった。終わったらな。」 「あたし、一緒に行く!」 「あ、ずッけーぞ、ナミ!」 歩き始めた二人に先立つように、ルフィとナミはじゃれあい、小突き合いながら子犬の様に駆けていく。 「…可愛いな…。」 「…だろ?…ナミは戦で親を亡くした。ルフィの親父は、戦での傷が原因の病で死んだ。」 「………。」 「…この村に居るガキは、半分がそんなガキだ。だが、ここで、皆に学問やタタラの技術を教えられて育っていく。 米が作りたければ他に土地を与えて出してやる。中には侍になるやつもいる。 ルフィは、15になったら、おれの家来にしてやると約束した。本人は、家来なんか嫌だと言うがな。」 「…あの子を…?」 「…強いぜ…それに頭がいい…。チョッパーのいい家臣になってくれる。」 「………。」 本当に、ゾロは弟が可愛いのだ。 カーン カーン カーン カーン 「………。」 高い、金属音が聞こえてくる。 やがて、4人は村の外れにある粗末な小屋へついた。 石造りの煙突から、黒い煙がたち昇っている。 鍛治場と言っていた。 サンジにもわかる。 ここで、刃物を打っているのだ。 「フランキー!ウソップ!」 呼びながら、ルフィとナミが駆けていく。 「おお!」と、中から答えがあった。 だが、音は止まない。 「おれだ、入っていいか?」 ゾロが外から声をかけると、別の声が 「いいぜ!気をつけろよ!手は止めねェからな!!」 「わかってる。」 筵を払い、少し薄暗い中を覗くと、目に入ってきたのは真っ赤に燃え盛る炉の炎だった。 一気に、熱風が顔に襲いかかる。 サンジは思わず目を細めた。 カン! カン! カン! 規則的な音が鳴り響く。 真っ赤な鉄の棒を、体の大きな男が汗まみれになりながら打っている。 茎(なかご)の部分を、鉄鋏で押さえつけている男の奇妙に長い鼻の先から、汗がぽたぽたと落ちている。 「………。」 呆然と、2人の男の作業を見つめるサンジに、ゾロが言う。 「“小鍛治”のフランキーだ。手伝っているのは、弟子のウソップ。」 「…小鍛治……?」 「刀を作る鍛治師よ。」 ナミが言った。 ゾロは笑って髪を撫で 「…刀は、鉄を造るところから始まる。鉄を採取しタタラにかけて玉鋼(たまはがね)と呼ばれる鉄の塊を造る。 そこまでが、大鍛治の仕事だ。…ルフィの親父は、その大鍛治だった。」 ルフィが、うんと大きくうなずいた。 「その玉鋼を、刃物にするのが小鍛治だ。」 「………。」 「おれの和道も、フランキーの打った刀だ。」 「そうなのか…。」 婚礼の晩、3人の間者をあっという間に斬り伏せた刀。 一刀両断にしながら、刃こぼれひとつせず、翌朝のあの時、手の中にあったあの光は、わずかな曇りもなかった。 フランキーという小鍛治は、全く手を休めず、言葉も発しない。 ウソップという弟子も同様だ。 そんな暇はないのだろう。 ゾロはかまわず 「またなフランキー、ウソップ。」 「おう!」 「またな!」 顔を上げず、言葉だけ。 だが、いつものことなのだろう。 ゾロはサンジを促し、外へ出た。 風が心地よい。 「熱かっただろう?」 「あ?ああ…すげぇもんだな…初めて見た…。」 「タタラも見せてやる。だが、今日は別の用事でここへ来たんだ。」 「え?」 「こっちだ。…ああ、ナミ。お前も来い。」 「あたしも?」 「ああ。」 笑って、ゾロはうなずいた。 と、ルフィが 「おれも行っていいか?ゾロ。」 「ああ。」 次にゾロが向ったのは、村の奥にある小さな家だ。 家の前で、ひとりの女が背を向けて、広げた筵の前で蕎麦の実を打っていた。 その背中へ 「ロビン。」 呼ぶと、女が振り返った。 「………。」 その顔を見て、サンジは思わず息を飲む。 美しい。 鄙には稀な美女だ。 女は微笑んで立ち上がり、かぶっていた頭巾を取ると 「まぁ、若殿。」 と、目を丸くして言った。 「ご正室を迎えられて、しばらくお出ではないものと思っておりましたのに。」 なんだって? 瞬間、嫌な想像がサンジの中を駆け抜けた。 明らかに、年齢はゾロより上だが、この美しさだ。 もしかしたら… だがゾロは 「サンジ。紹介する。ロビン、おれの母親の末の妹だ。」 「初めまして。」 あ。 一瞬の妄想 サンジは真っ赤になった。 それを見て 「…お前…何想像した?」 「あ…いや…その…。」 戸惑い、慌てるサンジに、ゾロは眉をしかめて 「…お前な…。」 「…ウフフ…。」 だって なぁ? …って 「え?じゃあ…叔母上…?」 「そういう事になるな。…ちなみに、ここはさっきの村長の家。 クローバーはロビンのじいさんで、おれのひいじいさんて事になる。」 「え!?そうなのか!?」 では、この里は…ゾロの母親の故郷。 「……こういう村だからな、親父も若い時、通ってる内にロビンの姉に手をつけた。そういうこった。」 「そういう元も子もない言い方をしないの。」 ロビンがたしなめる。 「そうなるまでは、色々あったのよ?散々話して聞かせたのに。」 「人の色恋に興味はねェ。」 「あなたのお父上の事でしょう。」 「まぁ、生んでくれた事には感謝してる。」 ロビンは困った様に笑った。 「ロビン、今日はお前に頼みがあってきた。」 「まぁ、何かしら?」 「城に上がってくれねェか?」 「何故?」 「こいつの、女房…老女になって欲しい。」 「この方の?…まぁ、そういえば、こちらはどなた?」 今頃? ゾロはあっさりと 「おれの嫁だ。」 「まぁ、そう?」 それだけですかい? この村の連中は、およそ世間の常識というものに捕らわれないようだ。 「こちらが、毛利のお姫様なの?私には殿方の匂いがするのだけれど?」 「男だが、毛利の姫なんだ。小早川の隆景がそう言って寄越したんだから、そうなんだよ。」 「まぁあ、あの御仁も、随分と面白い事をなさる様になったのねェ。」 「まったくだ。」 「………。」 何を言う権利もございません…。 「でな、とりあえずはコイツ、しばらくそういう扱いをしなくちゃならねェ。だが、口の固い女でねェと、こいつを任せられねェ。」 サンジは、ようやくゾロの意図を察し 「…待て、ゾロ…おれは…別に侍女も老女もいらねェ…自分の事は自分でできる。」 「…そうはいくか。お前の1件を小早川は知ってる。 難癖つけて、別の間者を侍女として寄越されたら困るんだ。」 「………。」 「…こいつは信じていい…。」 サンジは、ロビンを見た。 綺麗な顔がにっこりと微笑む。 美しく、頼もしい笑顔。 この女性がゾロの母親の妹なら、きっとゾロの母親も、綺麗な女性だったのだろう。 あの、堅物そうなミホークの心を動かすほどに。 「それから、ナミ。」 「なに?」 サンジの側で、じっと話を聞いていたナミは、いきなり呼ばれて少し驚いて目を丸くする。 「お前も一緒に来い。」 「あたしも?」 「ああ、こいつに仕えてくれ。」 「別にいいけど。」 あっさりと、ナミは笑ってうなずいた。 「え!?城に行くのか!?ナミ!!」 ルフィの方が驚いていた。 「ゾロ…こんな小さな子…。」 「小さいっつっても、もう12だ。ひと通りの事はできる。それに、コイツは賢く強い。」 と、ルフィが 「ゾロ!おれも連れてけよ!!」 「お前はダメだ。」 「ゾロォ!!」 「約束の15まで、あと1年ある。」 「たった1年じゃねェか!!」 「まだ1年だ。」 「う…。」 ゾロは、唇に笑みを浮かべてルフィの髪を撫で 「1年。修行しろ。」 「…うううう…。」 ちら、と、ルフィを見たナミの目が、何だか泣きそうに見えた。 「………。」 ああ 好きなんだな… お互いに…。 まだ、幼いけれど。 離してしまうのは…。 「ゾロ…。」 「何も言うなよ。」 「………。」 「約束は約束だ。」 「………。」 ぷっとルフィの頬が膨れた。 「いいよ!ゾロのケチ!!」 主家の若殿に言う台詞ではないな。 ルフィは、きびすを返して駆けて行った。 目じりが少し、光っていた様だった。 ロビンが困ったように 「…意地悪ね。」 「意地悪なもんか。焦って背伸びをしたがるヤツは、戦で生き残れねェ。」 サンジがゾロを見ると、ゾロもまたサンジを見た。 「大丈夫だ。護りてェもんがあるヤツは、必ず本物の強さを知る。」 「………。」 その日の夜、ゾロとサンジは村長の家に逗留した。 里人が集まり、ささやかであるが宴が始まる。 並ぶ料理は精一杯の心づくしだが、場は賑やかに華やいだ。 と、いうのも 「えんとりーなんばー41ば――ん!!きゃぷて〜〜〜〜〜ん・ウソップ!!腹踊りしまぁ〜〜〜〜っす!!」 「遠く離れたアナタを思い、はるばる来ましたこの北港。 訪ねるアナタは、そぼ降る雪の、向こうにけぶる霧笛の彼方……思いをこめて歌います!!“北漁場恋時雨”!!」 里の男女が一斉に早したてる。 昼間 アレほど真剣な顔を見せてくれた、小鍛治のフランキーとウソップ。 真剣なのは、あの鍛治場でだけか? 「いやぁ〜〜〜〜〜〜!!わかる!わかるぞゾロ!!」 「何が?」 「うんうん、お前、メンクイだもんな〜〜〜〜〜〜。うんうん。 お前がな?こういう美人が好みだってのはよ〜〜〜くわかってたけどよ。」 「だから、何がわかるって?」 ウソップは、にんまりと多少エロイ目をして笑い。 「お前、嬉しくて可愛くてしょーがねぇだろ?」 「………。」 「も〜〜〜〜、ホントは今だって、膝に抱っこして可愛がりたくてしょーがねーだろー? うんうん、お前はな、そーゆーヤツだよなー?な?ヌホホホホホ!!」 「寝てろ!てめェはァ!!」 ゾロの鉄拳にウソップが沈む。 「あううううううううう!!よかった…よがっだよなァ〜〜〜〜〜! お前ェみてェな朴念仁のトコに、こぉ〜〜〜〜んなベッピンが来てくれてよォ〜〜〜〜〜!! お前ェの死んだお袋も、さぞや草葉の陰で喜んでるだろうよォ〜〜〜いおいおいおい!!」 いきなり泣きだすフランキー。 すると 「55ば〜〜〜〜ん!ルフィ!!気持ち悪い芸しま―――――す!!」 「おお、いいぞ!やれやれ!!」 ゾロが、泣いてからむフランキーを押し退け、ルフィをけしかける。 「サンジ!瞬間芸だぞ!一瞬だぞ!見てろよ!!」 「ああ、見てる。」 「んんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!タコ壺に入ったタコの真似っっ!!」 「うああああああああああっ!!!」 サンジが悲鳴をあげてゾロに飛びつく。 どんな芸かは、読者の想像にお任せする。 まぁゴムだから。(いきなり思いだすオフィシャル設定) 「瞬間しか出来ねェのがイマイチなんだよな。」 「一瞬でいい!キモすぎる!!」 「あっはっはっは!!お粗末さまでした!!」 歌は途切れず、踊りは止まず、笑い声も途切れない。 楽しい サンジもいつしか、本来の姿で笑い転げていた。 と、いつのまにそこにいたのか、クローバーが言う。 「…いつでも、お出でになるとよい。」 「………。」 「重い衣を脱ぎ捨てたい時は、いつでも。」 「………はい。」 「…ここの者達は…みな鉄の様に口は固い。安心召されよ。」 「はい…。」 「…ロビンを頼みます…。」 サンジはうなずいた。 「おれの方こそ…。」 「…礼は…ご自分のご夫君に申されよ。」 「………。」 「…わしからも…お願い申し上げます…。」 「………。」 「…ゾロを…。」 「………。」 「…どうか…。」 サンジは再び、今度は大きくうなずいた。 (2009/9/4) NEXT BEFORE 赤鋼の城 TOP NOVELS-TOP TOP