BEFORE



 ゾロは、眉間に深いしわを寄せて目を覚ました。

2,3分前からずっと、すぐ側で耳障りな音がしていたからだ。

それが、ベッドサイドのテーブルに置かれた伝々虫の音だということに気づくまで、かなりかかった。

普段、伝々虫には縁のないゾロだ。

最近になって、ナミとウソップが小伝々虫を手に入れたが、こうして上陸した時以外

あまり使う事も無いので、ゾロは2人のそれが起きている姿をあまり見た事がない。



 「……はい。」



かなりな不機嫌声。



 『お寛ぎ中の所を恐れ入ります、ゾロシア様。フロントでございます。』



ゾロシア

最近になってから、宿を取る時に使う偽名だ。

ちなみにルフィはルフィオーネ。

サンジはサンジーノ。

ナミはナミモーレで、ロビンはロビータ。

後は説明不要であろうが(笑)、加えておくならブルックはベンジャミン・ブルックリン、

フランキーは何のひねりもなくカティ・フラムと、堂々と本名を名乗っている。

閑話休題。



 「…あァ?なんだ…?」



ベッドに横になったまま、空いた手を額に載せ、目を閉じたままゾロシア(仮名)は答える。



 『お客様にお電話でございます。“3番”と名乗られる女性の方でございますが、

 お繋ぎしてもよろしいでしょうか?』



3番



ナミだ



 「ああ。」



短く答えた。



これは、ルフィとゾロがアラバスタで賞金首になった頃、使い始めた暗号だ。

バロックワークスの格付けナンバーが使える、とウソップの提案で決めた。

ルフィ海賊団に加入した順番に、ナンバリングしている。

ゾロは2番でサンジは5番だ。

街の伝言板などを使う時に、『5番から2番へ』というような書き方をする。

ちなみに全員を示す時は『0番』だ。

そして、近頃は必ず、宿泊場所をナミに知らせる約束になっている。



 『ゾロ?あたし!』



少し慌てた声。



 「なんだ…?」

 『サンジくん、居る?』

 「…コックならサニーに戻ったぜ……ん?今、何時だ?」



半身をひねって、伝々虫の横にある時計を見た。



15時47分



 「…?あれ?ルフィのヤツ遅ェな。」

 『戻ってないのよ。』

 「あ?誰が?」

 『だから、サンジくんよ!』

 「何…?」

 『サニーに戻ってないのよ。2時間くらい前にルフィが辛抱し切れなくて

 知らせてきたの。“サンジが来ない!”って。』

 「………。」

 『…ラブラブすぎて、まさか昼か夜かもわかんなくなっちゃってるんじゃないでしょうね?』

 「アホ!……戻ってねェ…?そんなワケあるか。ここを出たのは朝の8時前だぞ。

 ルフィに朝飯作ってやるって出てったんだ。」

 『…なんですって…?…じゃ、どこに行ったのよ…!?』

 「………!!」



ゾロは跳ね起き、床に散った服をかき集めて身につけ、3本の刀を腰に差すやホテルを飛び出して行った。











 「……どっかでナンパでもしてるんじゃねェのかァ?」



緊急に、全員がサニー号に集まった。

いつもの中央甲板の芝生の上。

ウソップが呆れた様に言った。



 「そんなことねェ。サンジが交代を忘れるはずねェんだ。」



ルフィが言う。



 「そうね…彼が責任を放棄するなんて考えられないわ。」



ロビンも言った。



 「ゾロ、変わった様子とかなかったの?」

 「無ェ……。」

 「朝早くに出たのに…もう夕方だよ?おかしいよ!」



チョッパーが不安げに言った。

フランキーが尋ねる。



 「仮にナンパだったとして、だ。今までこんな事はあったのか?」



ナミが首を振る。

そしてゾロが言う。



 「サニーに戻る。ルフィと交代する。何よりルフィに朝飯を作ってやると言って出て行った。

 その言葉が嘘であるはずがねェ。」



迷いの無い言葉。

ルフィもウソップもうなずく。



 「では、サンジさんはどこへ行ってしまわれたのでしょう?」



ブルックが言った。

フランキーが



 「…何かがあったと見て差し支えねェんじゃねェか?ゾロ?」

 「………。」

 「まず……そう見て間違いないかもね……。」



ナミ。



 「でも…静かだよな?街の中で、『麦わらの一味の一人を捕まえた!』

 なんて騒ぎになってねェだろ?」

 「全くの別件で、どうにかされたと見るべきかしら。」

 「けどよ、マユゲがそう簡単に拉致られるか?」

 「わからないわよ…現に、スリラーバークで、声もなく捕らえられてしまったわ。」



ちら、と全員がゾロを見る。



最凶最悪の顔だ。



 「探そう。」



短く、そう言ったのはルフィだ。



 「サンジを見つけて、無事なら無事でそれでいいんだ。

 あとでたっぷりお仕置きしとけばいいんだから!な?ゾロ?」

 「………。」

 「探そう。」



ゾロは、刀を携えて立ち上がった。



 「…悪ィな…船長…。」

 「謝る事じゃねェ。仲間を心配するのは船長の仕事だ。

 けど、おれは心配なんかしてねェぞ?サンジはほっといたって死にゃしない。」



ゾロは、ぐっと声を詰まらせた。



情けねェな。



瞬間、自分の心が乱れていた事に気づく。



そうだ。

あいつは簡単に死ぬようなヤツじゃない。



 「初めての島で、そう足が向く場所があるとは思えないんだけど…。」

 「そう言えば…上陸した日に教会へ行ったって、言わなかったかしら?」

 「そうですね…もし、旅行者に紛れた賞金稼ぎや他の海賊に出会っていたとしたら…

 可能性はありますね。」

 「人が集まる場所なら、何かわかるかも知れねェ。」

 「よし!まず、その教会へ行ってみよう!」



8人は、全員でサニー号を降りた。







天を突いて聳える14の塔が夕陽に染まる。

教会から、時刻を告げる鐘の音が鳴り響いた。

街へ向いながら、この2日間で耳にした島の情報を与え合う。



 「…でさ、塔を回っている時に、地元のヤツに聞いたんだけど。

 この街にその…なんてったっけサンジ…。」

 「サン・ジミニャーノ。」

 「そう、そのジミニャーノの伝説で、“天使降臨”ってのがあるらしい。」



ピクン、とゾロの肩が震えて、ウソップを振り返る。



 「天使がさ、その聖ジミニャーノに統治の指輪を与えたとかなんとか…。」



ロビンが言う。



 「…そういえば、この島には“天使崇拝”があると聞いたわ。」

 「何?それ。」

 「本来、その教義の教えは唯一神教で、信仰し、崇拝するのはヤハウェの神ただひとりなの。

 けれど…神の教えを最初に下界に説いた“熾天使”だけは、敬意を表して崇拝する事を許されている。」



チョッパーが



 「ああ、そうだ。あちこち塔があるけど、どの塔もてっぺんに天使が祀ってあった。」

 「貴族が競って高い塔を建てたのは、天界から降臨する天使を迎えるためのもの…という説もあるのよ。」



ロビンが言った。

フランキーが感心する。



 「詳しいな。」

 「昨日図書館に行ったから。…明日あたり…教会聖堂を見てみようと思っていたのだけれど。

 そこに、熾天使の天井画があるそうよ。」

 「……そういや…そんなことを言ってたな……。」



ゾロが言う。



 「…大勢の観光客の前で、“天使様”なんて呼ばれ続けて閉口したってよ。」



ナミも、つい先日のやり取りをふと思い出した。

聞いていたかどうか定かではなかったフランキーも



 「…おいおい…スーパーだな…。」



ナミが、声を少し震わせて



 「…ねぇ、嫌な予感がするわ…。教会でビンゴってカンジがしてきた…。」

 「…よし、急ごう!」



ルフィが言い、全員一斉に走り出す。



夜の帳が下りた聖堂前の広場は、昼間の賑やかさとは打って変わって静まり返っている。

が、入り口の扉は左右に大きく開け放たれ、篝火は赤々と燃えて、

訪れるものを招くかのように揺らめいている。

逸る足を留め、8人はゆっくりと聖堂の入り口に近づき、中の様子を見た。



 「…今日は日曜日か?」



ゾロが言う。



 「…いいえ…今日は木曜日…礼拝のある安息日ではないわ。」



ロビンが答える。



 「…日も落ち切った時間なのに…こんなに大勢の人…。」

 「…島の連中だよな…観光客じゃねェ…。」

 「…静かですね…静か過ぎます…コワイくらいです…。」



礼拝堂の全ての椅子が、黒いフードとベールの信者で埋まっている。

だが誰も無駄口を聞かず、ただ黙って、整然と祈りを捧げていた。



 「おい、ロビン…天使ってあれか…?」



ウソップが指差す方を、全員が見上げた。



下の明かりに映し出されて、ほんのりと浮かび上がる天使の姿。



 「……似てる…サンジくんに……。」

 「………。」



その時



 「観光の方ですか?」



8人の後ろに、いきなり現れたのはあの神父だ。

だが、彼等はこの神父を初めて見る。

サンジが会った時と違い、今はかなり重厚な礼装を纏っていた。



 「え、ええ。…ちょっと夜の散歩と思ってみんなで歩いていたら…扉が開いていたから…!」



ナミが言うと、神父は少し困った顔をして



 「…今宵のミサは、街の信者の為のものです。」

 「…あ〜〜〜そうなの…?えっと…。」

 「一緒に、礼拝させていただけないかしら?」



ロビンの言葉に、神父の眼鏡がきらりと光った様に見えた。



 「…みんなでずっと旅をしているものだから、こんな立派な聖堂で祈ることなんて滅多に出来ないの。

 せっかく来たのですもの、一緒にミサに参加させていただけないかしら?」

 「…左様でございますね…。」



全員の顔を、神父は眼鏡の奥から値踏みする様に見た。

どう見ても、殊勝に神様に祈りを捧げるようなタイプの顔ではない。



特に、腰に3本の刀の男が。



神父はゾロをしばらく見ていた。

ゾロも、決して目を逸らさず神父を見る。



やがて



 「わかりました。神の御前で、人は皆兄弟であり姉妹です…どうぞ。」

 「おう!サンキューな!」



軽く言って、ルフィが先頭を切って奥へ入る。

礼拝堂の長椅子の、前列に空いているひとつに腰を下ろし、身構えるように祭壇を見上げた。



 「…だ、大丈夫かな…。」

 「ビビってんじゃねェよ。行くぞ。」



ウソップはフランキーに張り付いたまま、ルフィの後ろに腰を下ろす。

それぞれに、空いている椅子を見つけて座る。

ナミとロビンとチョッパーは、3つ空いている、中ほどの席に腰を下ろした。

最後にゾロも、後方の椅子にブルックと並んで座った。



 「…ミサ…ワタシ初めてです…。」

 「…おれもだ…。」

 「どうすればよいのでしょうか?」

 「知るか。」

 「…ワタシ…一度死んだ身ですが、天国の入り口とやらには辿りつけませんでした。

 ちょっと見学してみたかったのですが。」

 「いいから黙れ。」

 「ヨホホホホ。」

 「黙れつってんだ。斬るぞ。おれは今、最悪に機嫌が悪い。」

 「……ハイ。」



ずっと、頭の中はサンジのことでいっぱいだ。

こんな場所でこんな事をしていて、結果が出るのかどうか疑問だが、

確かに、この島に上陸してから今日までの短い間、サンジが行方不明になる理由がどこかにあるとしたら、

ここにしかないような気がする。



 「………。」



ゾロは、天井を見上げた。

真上に、さっきウソップが指差した天使。



ナミは似ていると言ったが、こんなすすけて薄汚れた絵の天使のどこが、あいつに似てるってんだ?

天井の熾天使は6枚の翼を大きく広げ、遥か天空を見すえながら携えた槍を大地に突き立てている。

片方の手には燃える炎を携え、足の下には山羊の角を生やした悪魔が平伏(ひれふ)していた。



顔を下ろし、正面を見ると、たくさんの蝋燭が燈された祭壇。

青銅の十字架。

その中心に、金をふんだんに使った椅子が置かれてある。

その椅子に、黒い薄布がかけられている。

神父が、その椅子の前に立ち、両手を軽く挙げて



 「…皆様…今宵、この日に、ここに集いし幸福を慶び祝いましょう。

 では…聖歌529番『ゆきてつげよ あまねく』…。」



オルガンの音と共に聖歌が始まる。





ゆきてつげよ あまねく いずこの民にも

心をば変えて 新たにせよと

新たにせよと

暗き闇もしばし 義の日なるイエスの

輝き夜を照らす あしたは近し







語れ人を罪より 滅びの中より

救わんが為に くだりしイエスを

くだりしイエスを

暗き闇もしばし 義の日なるイエスの

輝き夜を照らす あしたは近し









「アーメン」と唱えて聖歌が終わる。



ウソップは大きく息をついた。

隣でフランキーが、肩を大きく揺する。

ナミの隣でチョッパーが



 「綺麗な歌だな。」



と、つぶやいた。



神父が壇上に立ち、一礼して聖書を開く



 「…では今宵はヨハネの福音書、第3章31節から36節…天からこられる方…。」



 「………。」



信者が、一斉に聖書を繰る音がする。



その紙の音に、チョッパーはびくりと身をふるわせた。

ゾロは微動だにせず、腕を組んだままの姿勢でずっと神父を睨んでいる。

その目、に気づいているのかいないのか、神父は静かに語りだす。

ルフィが、顎を乗せた腕を組みかえる。



 「…“天から来られる方は、すべてのものの上におられる。

 地から出る者は地に属し、地に属する者として語る。天から来られる方は、すべてのものの上におられる。”

 また、34節35節…“神がお遣わしになった方は、神の言葉を話される。

 神が“霊”を限りなくお与えになるからである。 御父は御子を愛して、その手にすべてをゆだねられた。”

 ……さて…神は…御子を遣わされるより以前に、この世に天啓をもたらすものをこの島に遣わされました…

 それこそが“熾天使−セラフィム−”であり…大天使でもあり、ミカエル、またはウリエルであるといいます。」



ナミが身を乗り出した。

ルフィが、大きくアクビをしたのがゾロの場所からもわかった。

神父は穏やかな口調で、滔々と説教を続ける。



 「このサン・ジミニャーノ島に、遣わされた熾天使は、

 この島にあまねく光を与え、全ての敵を退けて栄華をもたらしました……。

 ですが、それより数百年を経て、人心は荒れ、人々がその英を忘れてより後、この地に光は失われ、

 黒死の病に冒され、異教の民に蹂躙され…あまつさえ、創造主を名乗る異端の治める国に支配されてしまった…

 …ですが…信心深き皆様…お慶びください…今宵お集まりいただいたのは他でもありません…

 我々が何百年もの間待ち焦がれたその熾天使が、再びこの地に降られたのです…!!」



どよめきと共に、一斉に賛美歌が始まる。



光の主 共にいませば

など恐れん など恐れん

きみはわがいのちの力にましませば

恐るることあらじ

たとえ敵はせむるとも

わがこころ恐れじ



光の主 共にいませば

恐るることあらじ

恐るることあらじ





「ハレルヤ」「グローリア」の合唱が高まっていく。

すると、神父が金の椅子にかけられていた薄布を取り払った。

さっきまで、誰も座っていなかった椅子。

そこに



 「サンジ!!?」



叫んだのはゾロではなくルフィだった。

叫ぶより早く、ゾロは跳ねた。

ハレルヤの声を裂いて、ゾロの声が響く。



 「コック!!」



ルフィも、ゾロと同時に飛び出していた。

金の椅子に深く腰掛け、黒いレースのベールをかけられたサンジは、虚ろな目で宙を見ている。



 「サンジ!!」

 「サンジくん!!」

 「おい、サンジ!!」



祭壇の下に踊りこんだルフィが、サンジの両肩を掴んで激しく揺さぶった。



 「サンジ!おい!何やってんだよ!!?」



答えはない。



ゾロも、ルフィの手の上に自分の手を重ねる様にサンジの肩を掴むと



 「このバカコック!!何やってんだ!?おい!?」



堂内の声がざわめきになる。

椅子から立ち上がり、サンジの元へ行きかけたナミは、周りの信者たちの異様な気に

背筋を震わせ立ち止まってしまった。

ロビンは腰すら浮かせず、じっと正面を見つめている。



神父が、ゆっくりとルフィとゾロに近づいて、静かに、厳かに、だが、どこか怒りと傲慢を含んで言った。



 「…お控えなさい…この方は天がこの島に遣わした“熾天使”なのですから。」

 「……っ!!」

 「……何……?」



フランキーの背中から、ウソップが叫ぶ。



 「お前こそ何言ってんだ!?そいつはサンジ!おれ達の仲間だ!!」

 「そうだ!おい、お前!サンジに何をしたんだ!?」



チョッパーも叫ぶ。

だが神父は少しも臆さず微笑んだ。



 「おわかりにならないのですか?この方は確かに、あなた方の仲間であったかもしれない。

 ですが、この方があなた方の仲間として、この島へ辿り着いたことは。神が定めた運命。」

 「運命…?」



ゾロが低くつぶやく。



 「そうです。この方は、この島へ降臨するべく、一時、身をやつしてあなた方の仲間になったに過ぎない。」

 「…ふざけんな!!」



ルフィが叫ぶ。



 「サンジはな!おれが探しておれが見つけたおれのコックだ!!」



神父が困った様に首を振る。



 「どうやら、おわかりにならないようだ……まぁ、よろしいでしょう。

 …ならば、その目で奇跡を御覧になられるといい……そうすれば…おわかりになるはず。」

 「奇跡?」



フランキーが言った瞬間だった。



それまで虚ろだったサンジの目が、かっと大きく見開いた。



 「サンジ!」

 「…コック!」



同時に名を呼ばれて、サンジは顔を上げ、2人を見る。



だが



自分の肩を掴むルフィとゾロの手を、サンジは冷たく払い除けた。



 「!!?」

 「サンジ!?」



仲間の誰もが息を飲んだ瞬間、サンジの唇が言葉を紡いだ。



 『…吾に触れるな。』

 「サン…!」

 『触れるな!!』



『手』で、サンジは2人の手を打った。



 「!!?」

 「サンジ…!」



ゆっくりと、サンジが立ち上がる。

着替えさせられたのだろう、首まで覆う、黒い司祭の祭礼服。

ドレープが流れるように揺れた。



その時だ。



 「!!」

 「!!?」

 「え!?」



サンジが、大きく天を仰いだ。

信者達は、何かに酔ったように賛美歌を歌い続けている。







ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ

光は いま 舞い降りた







何かが、サンジの背中から出てくる。



ゆっくりと



ゆっくりと



ねっとりと粘着質な糸を引き、めりめりと不気味な音をさせながら、サンジの背中を突き破るように。







 「うお…っ!!」

 「ああああああ!!!」

 「…ウソ…!!」

 「ヨホホホホホホホーッ!!?」

 「………っ!!」



目の前で、信じられない光景を見せつけられているルフィとゾロは、驚愕に、ただ黙って見ているしかない。



ひとつ



ふたつ



みっつ



よっつ





左右に2枚



一対ずつ



それは、生き物の様に蠢いて、サンジの背中から現れた。



いつつ



むっつ



 「うわあああああああっ!!!」



チョッパーが悲鳴を挙げた。

ナミはがたがたと震える体を抑えきれず、へなへなとその場にへたりこんだ。



蠢く6つのそれは、やがて大きく震えて左右に広がる。

それはまさしく



 「御覧なさい!!“熾天使”が!今!ここに!!降臨された!!」







(2008/12/18)



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