ペロ ペロ お願いだ お前は生きて、生きて、生きて生き抜いて おれの心を、もう一度、ルフィーナに届けてくれ あの時 あの時返されたおれの心を、もう一度、彼女に渡してやってくれ そして、伝えて欲しい 愛している 心の底から君を愛している 伝えてくれ お願いだ、ペロ おれの心を持って、あの島へ行くんだ、ペロ ペロ ありがとう お前がいたから、おれは今日まで頑張れた ありがとう ご主人様 シャルル様 ワタクシも、あなたに沢山御礼を言わねばなりません アナタとルフィーナ様のお側にいられてよかった みんなの側にいられてよかった 楽しかった うれしかった みんなが ワタクシも立派な海賊だと言ってくださった ペロは世界一勇敢な猫だと褒めてもくださった お前がいるから楽しいと、言ってくださった だから ワタクシは頑張れたんです そして今 こんなワタクシに みんなの思いに 手を貸してくださる人たちがいます 「ルフィーナ様、ペロが今、参ります!!」 腰の短剣を抜き、ペロが叫ぶ。 夜が明けた。 「よし!あいつらぶっ飛ばしに行くぞ!!」 「お―――!!」 夜明けを迎え、ベリエらも移動を開始した。 30年前の噴火で風景が変わっているが、島の形そのものが大きく変動した訳ではない。 ルフィらも、ペロを先頭にダイヤの鉱脈の入り口を目指す。 落ち着きを取り戻したペロは、記憶と合致する場所を見つけては、どんどん先へと歩く速度を速めていく。 「磁石が全然役に立たねェな。」 フランキーが言った。 ロビンが言う。 「磁性溶岩帯なのね。」 「磁石なんか何処に持ってるの?フランキー?」 ナミが尋ねた。 フランキーはこともなげに 「腹の中。」 「そんなものまで体の中に仕込んでるのか?てめェ?」 サンジがあきれて言った。 「すげぇなフランキー!!」 チョッパーが目をキラキラさせて言った。 と、サンジは 「おい、フランキー。マリモの腹にも仕込んでやれよ、迷子になってもいいように。」 「あんだと?クラァ!?」 と、すぐに切り返してくるはずの声がない。 「?」 「あ、ゾロ。すでにいねー。」 ウソップがつぶやいた。 全員、溜め息と共に、がっくりと肩を落としたのは言うまでもない。 「…ったく、どこへ行きやがったんだ?あいつらは。」 それはこっちのセリフだ。 と、仲間がいたらそう叫ぶであろう。 その迷子。 仲間が進む道筋から大きく逸れて、目指す方向から直角の方角へ進んでいた。 ここまでくれば、才能としか言いようがない。 そして、迷いながら、ちゃんと仲間の所に再び辿り着くのも才能といえるだろう。 さらに、迷子になった先で、倒すべき相手に遭遇するのも、だ。 茂みがざわめく。 濁った気配。 ゾロは、腰の和道一文字の柄に手をかけた。 向こうも、ゾロの気を察したのか、動きが止まった。 (…来る!) 瞬間 ゾロは鞘を払った。 そのまま薙ぎ払った太刀を、受け止めた重い感触と共に火花が散った。 「海賊狩りか。」 鍔迫り合いの中で相手が言った。 よく見ると腕がない。 右腕1本で、この剣を振るい、おれの太刀を受け止めているのか!? ゾロは心の中で叫ぶ。 侮れない。 そして気づいた。 この男、猫の話に出て来た、エメロード海賊団の剣士が、腕を切り落とした男だと。 「…ロートルは、いい加減に引っ込んだらどうだ?」 「ぬかせ若造。」 剣を弾き、間合いを取った。 すかさず、ゾロは剣を構え 「三十六煩悩鳳!!」 斬撃が飛ぶ。 だが、かわされた! 隻腕の男シモンは、その年齢に似合わぬ素早さで跳躍する。 「くそっ!」 ゾロは三刀全てを抜き放った。 剣戟が響く。 この男も、かなりの剣士だ。 「…この場所のせいか。30年前の戦いを思い出す。腕を奪われた時のあの戦いをな。」 「…何を気取ったセリフを吐きやがる。腕を取られて逆上し、相手を騙し討ちに撃ち殺した野郎が。」 「あれは部下が勝手に行ったことだ。」 「そうかよ!!…百八煩悩鳳ォ!!」 斬撃と共に、周囲のものが薙ぎ払われ吹き飛ぶ。 その中に、手に銃を携えた数人の男たちが混じっていた。 「随分としつけが行き届いてる手下どもだよなァ!!」 「お褒めに預かり光栄だ!」 「まぁ、いいわ!ゾロはゾロで、なんとかなるでしょ!さあ!!お宝に向かって出発!!」 「本音全開だな、ウチの航海士。」 「…あれ?」 チョッパーが、くんくんと鼻を鳴らした。 「どうしたの?チョッパー?」 ロビンが尋ねる。 「ねぇ、ウソップ。火薬星の火薬、こぼれてない?」 「え!?そんなはず……こぼれてねぇぞ?どした?」 「ん〜?さっきから火薬のニオイが…。」 と、ペロが叫ぶ。 「いけない!皆さん、逃げて!!」 「散れ!!」 ルフィが叫んだ。 同時に、全員が四方へ飛び退る。 ルフィはナミを抱え、フランキーはウソップとペロを抱えて。 次の瞬間、今彼らがいた場所で爆裂が起きた。 「きゃあっ!」 「ななななな!!?」 「クソ野郎!何処だ!?」 と、声だけが答える。 「ふははは!よう避けたな、麦わら!!」 2度、3度、また爆発が起こる。 炸裂弾を、次から次に撃ち込んでくる。 「どわああああああああっ!!」 「ちくしょう!!次から次へと!!」 「ゴムゴムの銃(ピストル)!!」 弾かれたルフィの拳が、巨木をへし折った。 大音響を立てて木が倒れ、鳥がぎゃあぎゃあと鳴きながら飛び立った。 「ウソップ!てめェも何か無ェのか!?」 サンジの声に、ウソップが叫ぶ。 「そうしてぇのは山々だが、敵が見えなきゃどうにもなんねぇよ!」 「じゃあ、こうすりゃいいだろ!?ウェポンズ左(レフト)!!」 続いて 「フレッシュファイア!!」 フランキーの火炎放射。 と、焼け出されて、男が飛び出してきた。 「うわっちっちっち!!」 すかさず 「“カブト”の威力とくと見よ!!“火の鳥星(ファイヤーバードスター)”!!」 「ぎゃああああああっ!!」 男が、火に包まれてのた打ち回る。 「今のうちだ!!麦わら!マユゲ!!先に行け!!ここは引き受けた!!」 「おう!任せた!!」 フランキーとウソップは、男の前に身構える。 「よくもやりやがったな!!」 立ち上がった男を、フランキーは“見下ろし”た。 小さい。 並んで立ったら、フランキーの『大事な部分』より、ちょっと下くらいの背の低さ。 「えれぇチビだな。」 「ホントだ、ちっちぇー。」 「チビ言うなァ!!」 男が叫んだ。 「チビ言うたな!?チビ、言いよったな!?言うてはアカン言葉を言いよったなァああ!!?」 「だってチビじゃん。」 「チビやない!!ちょこっと身長が控えめなんや!!」 池乃め○かか。 「怒らせよったな、ワイを…ふふふふふふふふふふふふふ…硝煙のバルトロマイ様を怒らせよったな… ふほほほほほほほほほほ…ナメたらアカンぜよ!!」 古ぼけ擦り切れた海軍のコートの前を、がばっと開いたそこに、無数のダイナマイト、手榴弾、小型の銃、薬莢。 「おわああああああ!!何物騒なもん仕込んでんだこいつ!!」 「往生せいやぁぁああああ!!」 途端に襲ってくる、様々な爆弾の嵐。 「うぎゃあああああああああああああ!!」 「おわったったった!!危ねー!!」 「フランキー!お前ェ、今、おれを盾にしやがったなあああ!!」 「ああ、悪ィ悪ィ。ついトッサに。」 「おれは生身の人間だぞぉぉ!!お前がオレ様の盾になれェェ!!」 「なるか!ぶわ〜か!!」 「お前ェら、仲間やないのんか?」 敵からツッコミ。 「なぁ、ウソップたち大丈夫かな?さっきからすごい爆発音がしてるけど…。」 チョッパーの言葉にサンジが答える。 「大丈夫だ、やられやしねぇよ。」 「そうよ、このスキに、やつらより少しでも早く、お宝の在り処に辿り着かなきゃ!!」 「…そっちが大事なのね…。」 “悪魔の子”の二つ名は、彼女の方が相応しいかもしれないわ。 と、ロビンは心の中でつぶやく。 ルフィがペロに尋ねる。 「まだか?」 「もう少しです…多分、あの畝を越えれば隠し入り江が…!」 ペロが走り出す。 堪えきれないのか、4本足で駆け出した。 ナミもつられて、ルフィの先にたって走り出した。 「お宝〜〜〜!」 2人の姿が、見えなくなった一瞬だった。 「きゃああああああああああああ!!!」 「ナミさん!!?」 サンジが走り出す。 ルフィも、ロビンも、チョッパーも追う。 そこに 「ナミさん!!」 ベリエの手下、マルコ。 そのマルコの右腕にナミ、左手にペロ。 ペロが叫ぶ。 「マルコ!!」 「やあっと捕まえたぜ、いたずらの過ぎるドラ猫!!」 「放して!!放しなさいってば!!」 「テンメェェェェェっっ!!薄汚ェ手で、ナミさんのキヨラカな体に触るんじゃねェェェェ!!」 逆上したサンジが飛び出す。 「バースコォォォォード!!」 「うぉおっと!」 「きゃああ!!」 と、マルコは事もあろうに、ナミの体を盾にした。 「うおっ!!?」 ナミを避けようと体勢を崩し、サンジは地面に叩きつけられた。 その瞬間に、マルコの踵がサンジの腹に入る。 「ぐはぁっ!!」 「サンジくん!!」 「おお、あぶねーあぶねー。」 「サンジ!!」 ルフィが飛び出す。 その瞬間に、ロビンが花を咲かせた。 「八輪咲き(オチェンタフルール)!!」 「うおっ!?」 マルコの体を押さえ込み、咲かせた腕でナミとペロを奪い取る。 投げ出されたナミを、チョッパーが人型に変形してキャッチした。 ペロは、自分で華麗に着地する 「その足を退けろ!!」 叫んで、ルフィはマルコの顔面に拳を叩きつけた。 吹っ飛び、マルコは巨木のひとつに叩きつけられて地に落ちる。 だが、すぐに半身を起こし 「かっはっは!!効いた効いた!噂どおりだな、麦わら!!」 「来い!!」 「待てルフィ!!」 サンジが立ち上がった。 タバコの煙をひとつ吐き 「…こいつはおれがぶっ殺す。」 「ほうぉおお?」 マルコは、自分の半分の体重もないようなサンジを見下ろした。 筋肉に覆われ、まるで鋼鉄のような体のマルコに対し、サンジは華奢で、腕の太さも足の太さもマルコの半分もない。 あからさまに、サンジをなめきった目。 「レディを盾にしようとするヤツなんざ、男の風上にも置けねぇ!!」 「ほほう〜?なんだ、あの女、お前ェの女か?」 一瞬、サンジの目が見開かれた。 「下品ね。」 ロビンが言った。 「最低。」 ナミも言った。 が 「…お前の女…お前の女…お前の女…お前の…。」 何かのスイッチが入ったらしい。 メロリンハートに鼻血のオマケつき。 「最っっっっっ低!!こんなトコうっちゃって、行くわよルフィ!!」 「あああ!ナミさん、ごめんなさい!!おれのバカ――ッ!!」 「おう、サンジ!先に行くからな!頼むぞ!!」 「任された!!ルフィ、チョッパー!しっかりナミさんとロビンちゃんを守れよ!!」 振り返りながら、チョッパーが言う。 「サンジ、セリフだけ読んでるとかっこいいけど、鼻血、拭いた方がいいよ。」 「ホント、男って最低。」 「てめぇ!どうしてくれる!?ナミさんに嫌われちまったじゃねぇかァ!!?」 「それって逆恨みって言わねぇか?てか、最初から好かれてもいねェんじゃねぇの?」 「やかましい!!ギッタギッタのボッコボッコにしてミンチにしてやるぁああ!!」 「鼻血拭けって。」 黒鉄ヒロシって知ってる? NEXT BEFORE 長靴をはいた猫TOP NOVELS-TOP TOP