BEFORE




ワイン2本を手に入れた。

予算をはるかにオーバーしたが、背に腹は代えられねェ。

後は、ポールジロ―。

やはり、オークションに参加するしかない。

情報をくれた知人に、オークションの参加証と招待状の手配を頼み、オーストラリアへ行く準備を進めた。



11月10日の朝に到着する便を押さえ、現地の夜出発する、成田行きの便も押さえた。

唯一ありがたいのは殆ど時差が無い事だが、逆に時差があった方が救いのある場合もあった。

今日は、11月4日金曜日、フランキーに来週の話をするなら今日しかない。



 (…どう計算しても…間に合わない…。)



飛んで帰ってきても、放送のエンディングにも届かない。





いつもの時間に、サニーヒルズに入った。

そして



 「わかった。そうだな…明後日、サブスタジオ録音でどうだ?3時から空いてる。」

 「…すまねェ…6日…3時な。」



フランキーは放送スケジュール一覧表の11月11日の欄に、『バー・オール・ブルー:録音』の印をつけた。



 「録音久しぶりだな、ここ4,5年なかったろ?」

 「…そうだな…。」



4年

絶対に、録音を入れなかった。



なのに、よりにもよってのこの日。



 「…フランキー…頼みがあるんだけど。」

 「あ?」













11月4日

昨日は祭日で休みだった。

半端な連休の金曜日、それでも人の出はいつもより多いように見えた。

サンジがスタジオに入ると、普段はいない若い男女がスタジオの前に陣取って、

視界を遮ってしまっていた。

ゾロの姿が見えない。

妙な不安が湧く。



 「いらっしゃいませ。ようこそ、『バー・オールブルー』へ。

 …寒かったでしょう?どうぞ、カウンター奥へ。」



サンジの声がスタジオとヒルズに響く。

FM78.7MHzで、県央から県北、78.2MHzで県南に届く。

夕食の支度をしながら主婦が、帰宅の車の中でサラリーマンが、

これから夜のドライブに出かける男女が、駅の構内で携帯電話の内蔵ラジオのイヤホンから学生が



毎週金曜日のサンジの声に、耳を傾ける時間。



 「『フライデー・アーリータイムバー・オールブルー』」



フランキーのキュー。



今日は曲からスタート。



 「……『枯葉』イブ・モンタンです。この前からみんなで『枯葉』のスタンダードで盛り上がってましたよね。

 あれ、まだ続いてます。こんばんは、マスター・サンジです。」



調整室の中から苦笑いが起こる。



 「そんな訳で、今日はとことん『枯葉』特集…と、思いましたが、フランキーが向こうでぶんぶん首を振ってます。

 …お前はそこで黙ってグラス磨いてりゃいいんだよ。」



ディレクターフランキーは、番組内では「バー・オール・ブルーのバーテン」という設定だ。



 「この前、珍しいワインを手に入れてきました。……ご存じですか?

 ワインの原料ブドウと、バラの花の関係…手入れの行き届いた葡萄園には、必ず美しいバラが咲きます。

バラはデリケートで、虫がついたり病気になりやすい木です。

 そのバラを、美しく咲かせている葡萄園のブドウは手入れが行き届いた素晴らしいブドウで、

 そのブドウから生まれるワインは当然のごとく美味…そんな話。」



ちら、とガラスの向こうを見る。



赤い髪の女の子が、隣の男との会話に夢中になりながらも携帯をいじくりまくっている。



…邪魔だなこいつら…聞く気がねェならそこからどきやがれ…ゾロが見えねェ…。



 「……え?そのワイン飲ませてくれ?……さぁて…どうしましょうか?

 …まずはこちらの曲を聴いてから、ゆっくり考えましょう。

 作詞ジョニー・マーサー、作曲ヘンリー・マンシーニ、歌はペリー・コモで…

 …『酒とバラの日々』1962年…。」



曲がかかった。

息をついて外を見る。

OLっぽい女の子が、「きゃ」と口元を隠してはしゃぐのが見えた。

時々見る女の子だ。



赤い髪が、ど真ん中から離れた。

向こうから来た別の男と一緒に、携帯をいじくりながらさっさと歩いて行った。



 おいおい、その男、あんたのカレシじゃなかったのかよ?

 やたら親しげだったからそうかと思えば、そっちが本命か?



 「………。」



ゾロ





いた…。







かるくうなずいて、ゾロは不器用に笑った。



おれも、小さくうなずいて返した。



曲の間、いろいろ考えちまった…。











The days of wine and roses laugh and run away like a child at play 

Through a meadow land toward a closing door 

A door marked "nevermore" that wasn't there before 



The lonely night discloses just a passing breeze filled with memories 

Of the golden smile that introduced me to 

The days of wine and roses and you







 「酒とバラの日々、楽しかったあの日はもう戻らない…歌のタイトルは美しいですが、悲しい歌…悲しいラストの映画です…。

 お客様、この映画に出て来たアレキサンダーはいかがですか?…やめておく?…賢明です。

 ……おや、お客様がいらっしゃいました。…○○博物館展示デザイナーのS・K様…

 久しぶりのご来店です。いらっしゃいませ!」







11月4日の放送は、滞りなく終了した。



 「…お疲れ…。」



ゾロの方から、言葉が出た。

サンジも笑ってうなずく。



 「顔色、戻ったろ?ちゃんと寝てるぜ、あれから。」

 「ああ…あっちの仕事…終わったのか?」

 「…うん…まぁ…。」

 「…終わってねェのか?」

 「………。」



サンジは煙草を口に咥えた。

火はつけられない。条例がある。



 「…そんなもんでごまかすな。」

 「…ごめん。はい、終わってません。」

 「茶化すな。」

 「がんばってるけどな。」

 「………。」



サンジは大きく息をついた。



 「…メシ食わねェか?」

 「………。」

 「1週間あるなんて言うなよ…。」

 「………。」

 「牛角行こう!肉が食いてェ!」

 「何、はしゃいでんだ?」

 「!!」



はしゃいでいるんじゃない。

これは



 「…何、誤魔化してんだ?」

 「………。」

 「…来週が来るのがそんなに嫌か?」

 「…違…。」

 「………。」





サンジは顔を手で覆った。



 「怖いだけだ…。」

 「………。」





 「…怖くねェよ。」





ゾロの低い声が言った。





ふわっと、冷えた空気が和らいで





 「………!」





頭を抱えられて、肩に押し付けられた。



 「…これは別で勘定してくれ…。」

 「なんだよ…そりゃ…。」



…暖けぇ…。



 「……ゾロ。」

 「…なんだ…。」

 「…謝らなきゃいけない事がある…。」

 「何をだ?」

 「…来週…。」

 「来週の返事は来週聞く。」

 「…そうじゃねェ…。」

 「………。」

 「…来週…ここでの放送は無ェんだ…。」

 「…え…?」



真正面に、驚き、凍ったゾロの顔。



 「…正確に言えば…番組はある…けど…おれはここに来ない…来られない…。」

 「…サンジ…?」

 「…まだ片付いていない例の仕事だ…ごめん…どうしても…。」

 「………。」



ゾロの目が濁った。



 「けど…録音放送はある…だから…。」

 「逃げるのか…?」

 「!…違う!!」

 「どこが違う!!?」

 「逃げねェよ!!話は最後まで聞け!!」

 「…っ!!」

 「…来週…いつもの様にここに来てくれ…おれはここに居ないけど…いつもみたいに…来て欲しい…。」

 「…お前の店で…酒を飲ませるって言ってくれただろう…。」

 「………。」



サンジは、ゾロの目を真っ直ぐに見つめ



 「来てくれ。」

 「………。」







 「来れば…答えをくれるのか?」



サンジはうなずいた。



 「わかった。」



















4年という月日

人を変えるには十分すぎる年月だと思う。



事実



22歳で大金を手に入れたサンジが、ゾロと出会うまでの4年間を、振り返るのは今でも嫌だ。



それなのに、この4年間のゾロは微塵も揺らがず、決して信念を曲げず、

頭が緑色だから言う訳ではないが、まるで深い森の奥の巨木の様だと思った。









ゾロに会わないまま、成田を発った。

到着したオーストラリア・ケアンズは、初夏の日差しだった。

酒は手に入れる、何としても手に入れる。

そうでなければ、ここまで来たかいが無い。

自腹を切ってでも手に入れる。







11月11日

金曜日



ゾロは、いつものようにサニーヒルズへ向かった。

20歳の誕生日。

大人になったという感慨など無い。

ただ、今日という日を、4年間ずっと待ちわびていた。



高校1年生の春だった。

特待生として入学した学校に、ようやく慣れ始めた頃だった。

その習慣は、小学校の頃から続いていた。

下校後、まっすぐ家に帰りたくない。

帰ったところで、父親が飲んだくれているか、女を引っ張り込んでいるかのどちらかだ。



それは、アルコール中毒で、無理矢理入院させたその時も同じだった。



18歳未満のゾロは、それまで何度も児童相談所の世話になった。

15歳であったから、相談所の職員が、他の機関の役人と話をつけて、どうにもならない父親を病院に入れた。

家に帰っても誰もいない。いや、帰るのは相談所に連れて行かれた、郊外の養護施設。

そこまでのバスの時間まで、まだ少しある。

たまたま通りかかったサニーヒルズスタジオ。



声が聞こえて来た。



 「『DAYS OF WINE AND ROSES』…邦題『酒とバラの日々』…

 …優雅なタイトルに騙されてしまいそうですが…ご存じ…アル中患者を主人公にしたお話です…。」



ぴくん



耳が反応してしまった。



 「決してハッピーエンドではありません…悲しいエンディングです…それでもこの映画が愛されるのは…

 ひとえにこの曲と…泥沼から抜け出せない人間の性に、共感するからではないでしょうか…。

 お聞きになりますか?……少しアップテンポな方がよろしいですか?では、フランク・シナトラで行きましょう。」



喋っていたのは、金の髪の男だった。

綺麗で、どこか寂しげで



そして



自分じゃ覚えちゃいないだろうな、お前。



あの曲の間



お前、ずっと泣いてたんだ。







実際に、涙を流して泣いてたわけじゃねェ。

けど泣いていたんだ。

苦しそうな顔で、助けてくれって今にも叫びだしそうな顔で。







一瞬、目が合った。



その時、お前は笑った。



笑いやがった。



本当は、辛くてしかたがねェって目で。







抱き締めたかった。



あのガラスぶち破って、思いっきり抱き締めたかった。



あの時、あのガラスを割りたかったのはおれも同じだったかもしれねェ。





ありがとうと言われた



15歳だったと知って笑われた



すぐに大人になりたかった。



お前を守れるほど、お前を本当に微笑ませられるほど、大人に。





そしておれも



お前の微笑みに、包まれていたいと思った。









 「…なぁんだ!今日、録音なの!?」

 「珍しいわね〜!マスター、休んだこと無いのに!」

 「マスターが見られないんじゃつまんないね、どうする?」

 「寒いし…車で走りながら聞こうか?」

 「そだね〜〜。あ、マックで何か買ってこ!」





時々スタジオを覗きに来る女子大生達。

サンジのファンだ。



同じように、マスター・サンジの不在を知って、中を覗いて行ってしまう者もあった。



マロニエの木の下、シンボルロード沿いのサニーヒルズスタジオ前に居るのは、ゾロだけだった。

と、中からフランキーが出て来た。



 「よぉ!久しぶり!…つっても、毎週お前さんがここに居るのは知ってるけどよ。」

 「………。」

 「…サンジからさっき、電話があった。無事成田に着いたってよ。仕事もうまくいったそうだ。」



ゾロが、小さくうなずく。



 「中入れ…っつっても、ここで聞いてるつもりだろ?」

 「…ああ。」

 「…最後まで、聞いててくれ。」

 「………。」





番組前、5時の時報

そして



 『いらっしゃいませ。ようこそ、『バー・オールブルー』へ。……どうぞ、カウンター奥へ。』



暗いスタジオに、声だけが響く。



サックスの旋律。

『フライデー・アーリータイムバー・オールブルー』

テーマミュージック



 『11月11日……ゾロ目の金曜日です…ようこそおいでくださいました。マスター・サンジです。

 え〜…実は本日バー・オールブルー…臨時休業でございます…と言っても、こうして放送はしております…

 ごめんなさいの録音です…。お客様のお顔が拝見できない…寂しいです。

 ホントにごめんなさい。…ですが、今夜も次のお約束までの40分ほど…美味し酒と、

 楽しジャズに酔いしれていただければ嬉しいです…では、本日の1曲目…“If I love again”

 …もし、君が帰るなら…アンディ・ウィリアムズで。……手酌で芋焼酎でも飲んでください(笑)』





 『…メールをいただきました。△市のラジオネーム、コデマリコマリさん…早口言葉?…

 “何年か前、マスターの話を聞いてから、大橋巨泉の『枯葉』が気になって仕方がありません。

 マスター、どんな『枯葉』なのでしょうか、探してみたけれど見つかりません…かっこ涙…お願い、聞かせてください。

 追伸・フランキーはお使いにでも出しちゃってね”…かしこまりました、レディ

 …フランキーはキノクニマーケットにトコロテン買いに行かせます。では、いっちゃいましょう!

 大橋巨泉編曲、歌は巨ちゃんの娘、美加さんで、『枯葉』……聞いても後悔なさいませんように。』





いつもの様な時間が続く。



サンジはいつになくテンションが高い。



 『……先日……“酒とバラの日々”の話をしました……だけど実は…あの映画も歌も……おれは大嫌いです…。』



ゾロは、ふと顔をあげた。

そこにサンジはいないのに、スタジオの中を見た。



サンジが、「嫌い」という言葉を口にしたのは初めてだ。



 『……笑顔の日々は二度と戻らない……毎日飲んだくれて自分に負けた奴が、

 何を気取って言いやがる……それが本音でした…。』



 「………。」



 『……歌詞の中にあります…扉に書かれていた文字は“Never more”…“これっきり”

 …映画の主人公達に…その扉の先には絶望しかない…当たり前だ…てめェに負けたんだ…誰も助けてなんかくれやしねェ…

 後は、扉を開けて真っ逆さまに奈落に堕ちるだけだ……そう…思っていた……“あの時”までは…。』





『…絶望の扉を叩き壊されて…その先へ突き飛ばされた時…

 その絶望の前に立ちはだかってくれた人がいました…。』





『……でもおれは……その手を取る事が怖かった……今でも怖い……。』





『これからもきっと……同じだと思う…。』





『……ごめんなさい。変な話をしてしまいました…さっきの巨泉さんの『枯葉』で、妙なテンションになってしまいました。

 ここはひとつ気分を変えて……クリフ・エドワーズ…ディズニー映画ピノキオの名曲……『星に願いを』。』



星が生まれる時



僕らにひとつかふたつ 贈り物をくれる



そのひとつが力となって



ボクに勇気をくれるんだ







 『……もうすぐ6時ですね……今日はどうもありがとう……来週はちゃんと店を開けてお待ちしています。

 バー・オールブルー…マスター・サンジでした………ハッピー・バースディ……。』



最後の一言にゾロは目を見開いた。





そして、違和感を感じた。

その違和感――。



 「…いつもよりエンディングが早ェ…?」



時計を見ようとした、その時



 「おい!ロロノア!!」



いきなり呼ばれた。

スタジオの外で、フランキーが呼んでいる。



 「ちょっと来い!やってほしい事がある!!」

 「え?…何を…?」

 「来い!時間がねェ!!」



腕を引っ張られ、中へ連れて行かれ、そして



 「おい!!何をさせる気だ!?」



フランキーは、ゾロをいつもサンジが座っている椅子に座らせ、ヘッドフォンを耳につけさせ、自分はさっさと調整室へ戻った。



 「…いいか、ロロノア。この後の交通情報コール、おまえがやれ。」

 「はぁああ!!?」

 「すぐ入るぞ!」

 「ちょ…待て!!何させようってんだ!?」

 「…5・4・3…。」

 「おいぃ!!」

 「…1、キュー!」

 「!!」



 『レィディオ・ヒルズ・ニュース!トラフィック!…ロード・トゥ・フューチャー、ニッタ自動車の提供でお送りします。』



 「そこに書いてある通りに読みゃあいい。」



事も無げにフランキーは言った。



 「知らねェぞ!!どうなっても!!」

 「入るぞ!」

 「……っ!!…こ、交通管制センター…さ、佐々木さん!」



 『はい!交通管制センター佐々木がお伝えいたします。

 県内主要各線、国道○号線、××市平田交差点付近、流れが悪くなっています。

 …市内環状線、国道□号線中井陸橋下り線、およそ3キロの渋滞…。』



フランキー!!この野郎!!



と、調整室に向かって口だけで叫ぶ。



 『週末、高速道路下り線が所々渋滞しているようです。

 状況をお知らせいたします。●●道下り線、エアポートライナーよりお伝えします。

 …サンジさん、お願いします。』



 「!!?」



何!!?



 『はい。こちら、エアポートライナーよりお届けいたします。

 …驚かせてすみません、バー・オール・ブルー・マスター、サンジです。』



 「…サンジ…!?」



思わず叫んでしまった。



 『突然の乱入ごめんなさい。え〜…こういう事で、今日はそちらに行けませんでした。

 では、トラフィック参ります…●●道下り線…矢尾IC付近でトレーラーの横転事故があり、

 2車線通行の為、流れが悪くなっています。これからお出かけの方はご注意ください。

 上り車線、流れはいいようです。…スタジオのロロノア・ゾロさん。』

 『!!…は、はい!』





少し、沈黙があった。





 『誕生日おめでとう、ゾロ。』

 「………。」

 『これだけは…生で言いたかった。』

 「………。」





 『…ありがとう…。』



 「!!」





 『…交通管制センター佐々木さん、お返しします。ありがとうございました。』

 『はい!こちらこそ、生の情報ありがとうございます!…素敵なサプライズでしたね〜。』



フランキーが、次を読めとフリップに書いて合図を出した。



 「……お帰りの車の方…お気をつけてお帰りください……次の交通情報は…19時55分から……。」







CMまで10秒の合図。









 「おい、サンジィ!!」







ゾロの雄叫びは、78・7MHzで響き渡った。







調整室で、フランキーがつぶやく。



 「…始末書ものかなァ…。」



ゾロは、マイクに向かって叫んだ。



 「馬鹿野郎!!おれだってなァ!!生で言いてェんだよ!!」



エアポートライナー、高速バスの中。

サンジは携帯電話で声を送っていた。

電話はまだつながっている。





 「…慌てさせやがって!こんちくしょう!!」





 「好きだ――!!」





 「今までも!これからも!」





 「早く帰ってこい、この野郎!!ちくしょー!!

 4年も待たせやがって、肝心の日にコレか!?ふざけんなァ!!」





 『レィディオ・ヒルズ・ニュース!トラフィック!

 …ロード・トゥ・フューチャー、ニッタ自動車の提供でお送りしました。』



スイッチを切り、女性スタッフが、フランキーに囁く。



 「…専務が、ちょっと来いですって。」

 「あっはっは!!スーパーだな!!」



FMサウザンド・サニー、78.7MHz

コールサインJOSS-FM

系列JFN



「公共の電波を使って何をしやがる。」

「すごい!ドラマみたい!」

「感動しました!」

「ロロノアさん素敵な声です!!また出演してください!」

「おめでとう、マスター!」

「ふざけんな!」

「お幸せに!!」



サニーヒルズの電話とFAXとEメールが、ようやく落ち着きを見せたのは、その日の深夜の事だった。







(2010/1/6)



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