BEFORE




 「…今、何か悲鳴が聞こえなかった?」



女部屋のベッドの中で、ロビンがナミに尋ねた。

ベッドに入ってからそんなに時間は経っていない。

ナミがまだ起きているのはわかっていた。



 「……ゾロがサンジくんにヒドイ事してるんじゃない?いつもの事よ…。」



いつもって。



 「…尋常じゃない声だったような気がするけど…。」

 「…気になるなら見てみれば?」

 「…そんなに図々しくないわ。」



ナミは、ロビンの方に向き直り、枕を抱えて仏頂面で言う。



 「…サンジくんも、もういい加減に自分で認めればいいのよ。」

 「………。」



ロビンが困った様に笑う。



 「…男の子ですもの…増して、とても強い心を持っているのですもの…難しいのよ。」

 「…ハタで見ていて、じれったくなるくらいにミエミエの恋愛感情なのに?」

 「…自分でも…きっととても困っているのよ…。

 どうしてこんなに、あいつの事好きになったんだろうって。」

 「……ねェ、ロビン…。」

 「…なぁに?」

 「男って、いろんな意味でバカね。」

 「そうね。」



ロビンが、「ウフフ」と笑った。











さすがに



今のサンジの悲鳴はヤバイ。

咄嗟にゾロはサンジの口を塞いでいた。



その瞬間、ランプの油が切れたらしく、灯りが消えた。



暗がりの中に響く荒い息。

堪えるような嗚咽の声。



再び顔を隠してしまったサンジの腕を掴んだ時



 「…!」



足音。



さすがにあの悲鳴はまずかった。



誰だ?



ナミか?

フランキーか?ウソップか?





 「ゾロ。」





ルフィ…!?





ゾロの心臓が





僅かに跳ねるのがわかった。





 「………。」





涙に濡れたままのサンジの頬。



震える唇。



ルフィの声に、反応することすらできない。







 「…ゾロ、いるんだろ?」



ドアの外から、ルフィは尋ねた。



 「……ああ。」

 「………。」

 「…おれに用か?」

 「………。」



答えはない。



 「………。」



最初に声を聞いた時、ゾロの心臓は一瞬鼓動しただけだった。



その心に、戸惑いも恐れも動揺もない。



 「サンジ。」

 「!!」



大きく、動揺し震えたのはサンジ。



 「……あまりゾロを怒らせるな。」

 「………。」

 「…おれが言うことじゃねェけど…。」

 「ルフィ。」



答えたのはゾロだ。



 「その通りだ。てめェは関係ねェ。」

 「………。」

 「驚かせて悪かった。」



答えはなかった。

ルフィのいつもの足音が遠ざかる。







他の仲間にまでわかっている事。

もう、みんなにとっても当たり前の事。



なのに



いつまでもこだわって、素直になれないのはおれだけ。







戻った静寂、ゾロは静かに言う。



 「…どうすればいい?」

 「………。」

 「…おれがどうすれば…お前は揺らがない?」

 「………。」

 「…だったら…こうするしかねェだろうが…。」



痛い。



心臓が痛い。



息が苦しい。



締め付けられる。



おれの痛みか?

それともゾロのものか?



ゾロの体が、そっとサンジのそれに重なる。

太く締まった固い腕が、サンジを抱きしめる。



 「………。」



感じる。



ゾロの“心”



柔らかで、熱くて、激しくて



海の様に広くて大きくて深い



その全身全霊が



 「…サンジ…。」



おれの名を叫んでいた。





両腕を広げ、サンジはゾロの背中に手を回す。

左手は、抱きしめる事ができないけれど。





黙ったまま、ゾロは、床に散った他のカードを拾い集めた。



バンダナで縛めたサンジの手に口付け、集めた5枚のカードの全てをポケットに入れた。



 「………っ。」



途端に全身を覆う、ゾロの6つの感覚。



 「…つ…あ…っ…。」

 「………。」



長く激しいキス。

熱い愛撫。

燃え立つ焔に流れる汗の匂い。

喘ぎながら、名を呼ぶ声。

網膜に映る、愛しい姿。

理性を失うほどに、愛しいと欲する心。



そのどれも

なにもかも

全て



 「…とっくの昔にてめェのもんだ…。」

 「………。」

 「…クソ…ルフィに言われちまっただろうが…!あの野郎偉そうに…!」



頬を両手で包み、サンジの唇を覆う。



 「…てめェが悪い…思い知りやがれ…!!」

 「………っ!」



カードで繋がった“心”

叫んだゾロが、何を望んだのか瞬時にわかった。

拒むつもりはなかったが、視界に広がった映像に、サンジは思わず



 「…いやだ…っ!」

 「うるせェ!まだ言うか!!」

 「…恥ずかし…マジでハズいんだって…!!」

 「おれはいつもこうして見てんだ!!恥らいなんかいらねェよ!!」



言い放ち、また、サンジのそれを唇で包み



 「んああああっ!!」



艶のある悲鳴に、ゾロの心臓が激しく波打つ。



 ( …ウソ…。 )



耳の奥が痺れている。

サンジが、短い悲鳴を挙げると同時に、耳の奥で何かが唸っているようだ。



と



 「…ひ…ぁあ…っ!…ああ…っ!」

 「…見えてるよなァ?…何本入ったかわかるだろ?」

 「…く…ひ…ン…ぅ…。」

 「…“手”でも感じるか?」

 「…う…。」

 「コックの敏感な指先なら…わかるよな…?」



自分の秘所に、深々と埋められたゾロの指。



2本のそれが、サンジの内部を探って蠢いている。



 「…んん…ぁああ…ああ…んっ…!」

 「………。」

 「…あ…あ…っ!」



ぐちゅん ぐちゅん ぐちゅ…



淫らな音。



 「ひ…ィ…あ…っ。」



おれのあそこが、こんなに広がるなんて信じられねェ…。



なんだよ…



そんなにヒクついたら…ホラ見ろ…こいつを喜ばせるだけじゃねェか…。



 「…ああっ…!」



指先が濡れている。

自分の内部を、自分で探る感覚。



奥へ奥へと進んで行く指を、自分自身の指に感じる。



その指が



 「!!…ひ…ぁあああああああっ!!」



ビクン、と、大きくサンジの体が仰け反った。



 「…わかるな…?ココが…お前が一番感じる場所だ…。」

 「…や…やぁ…っ。…あ…ああああああああ…っ……!!」

 「どうだ?自分で自分のイイ場所に触んのは?」

 「…う…く…っ…あ…ああっ…!」



サンジの歓喜に、ゾロの心が震えている。



いつの間にか、とんでもなく大きく左右に開いた足。

屹立し、先端から愛液がぷちゅぷちゅと零れる様まではっきりと見える。

零れた蜜は、トロトロとペニスの堅い筋を伝って滑り落ちていく。



右手の指でサンジの中を弄び、左でそれを握って擦り続ける。

指がどんどん深く吸い込まれ、指の根元から、熱い体液が飛沫のように飛び散っていた。



 「…あ…淒…。」

 「…何が…?ああ、てめェの乱れっぷり。凄ェな。」

 「……ア…ホ…ぅ…。」



ゾロの指を咥え込んだ部位が、ピクピクと震えている。

その動きがなんなのか、サンジには既にわかっている。

あんな風にヒクついたら、もうそこで「欲しい」って言ってるのはすぐにわかっちまう。





 「サンジ。」

 「………。」

 「欲しいって言ってくれ。」

 「………。」

 「聞かせてやりてェ。」

 「………。」

 「てめェ自身に。」













 「欲しい。」



 「………。」



 「…来てくれ…ゾロ…。」











サンジは静かに目を閉じた。

網膜に映るのは、ゾロの視覚だけだ。



猛り、滾り、漲ったものを、ゾロはサンジのそこにあてがった。



ぷちゅ、と小さな音がした。



あてがわれると同時に、ヒクンと、襞がゾロを迎え入れるように震えた。



ゾロの口の中



少し乾いてる



心臓がすげェ鳴ってる。



サンジ



サンジ



サンジ





おれの名前しか叫んでいない。





好きだ



愛してる



放さない一生



誰にもやらない



おまえはおれのもんだ



サンジ



お前の全部が欲しい



おれだけを見ろ



他の誰も見るな



ナミもロビンも

ウソップもチョッパーも

フランキーもブルックも



ルフィも!!



お前のその青い目が他の誰かを見るなら、そんな目抉り取ってやる!



おれが食って、お前の目に他の誰も映らない様にしてやる!!



おれの見るものだけを見て生きればいい!



オールブルーも、おれの目で見せてやる!



他のヤツの名前なんか呼ぶな!

他のヤツに触れるな!

他のヤツの声など聞くな!



お前の感覚全部、おれだけのもんだ!!





 「……ゾロォォ!!」



耐え切れず、サンジは叫ぶ。



再びルフィが来てもいい。



このあられもない姿、おれは誰に見られてもいい。



これがおれだ。



お前を愛しているおれだ!!



激しく打ち付けられる熱い楔。

サンジは海老の様に仰け反り腰を揺らす。

腰を持ち上げ、肌に指が食い込むばかりに抱えたサンジの太腿の中心に向けて、ゾロはあらん限りの力を叩きつける。



自分の声に、激しく高まるゾロの全ての感覚。

それを受け止めるサンジもまた、感情と感覚を高まらせていく。



 「……ゾロ…っ!ゾロ…!ゾロ…このまま…このままで…っ!」

 「言われなくても…全部…てめェン中でぶちまけてやる…!!」



脳髄が痺れた。

視界がぼやける。

真っ赤になる。

自分も

ゾロも



 「…あ…あ…あ…っ…あ…ぁあ…ああ…っ!!」

 「――――――っ!!!」

 「あ ―――――……っ!!」



 









(2009/7/20)



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